なぜ若手エンジニアは「ホワイトすぎる会社」を辞めるのか? AI時代に加速する「ホワハラ脱出」の真実(1/4 ページ)
最近「ホワイトハラスメント」(ホワハラ)という言葉が注目されています。本稿では若手が「ホワハラ企業」から脱出し始めている真の理由、またこうした若手に企業はどう働きかけていくべきかを解説します。
著者:芦野成則
レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー
一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施
「今の会社に大きな不満があるわけではないんです」
ITエンジニアの転職・採用支援に携わる中で、20代の候補者からこんな話を聞くことがあります。給与が極端に低いわけではない。人間関係が悪いわけでもない。長時間労働に苦しんでいるわけでもない。それでも転職を考えている理由を聞くと「このまま今できることを繰り返していて良いのか」「もっと技術の幅を広げたい」「若いうちに裁量を持ちたい」といった言葉が出てくるのです。
ある25歳のエンジニアも、現職に大きな不満を持っているわけではありませんでした。それでも「自分の市場価値を知りたい」「より成長できる環境に行きたい」と転職活動を開始。転職先には、若手でも裁量を持てることや開発とマネジメントの双方に関われることを求めていました。残業時間やリモートワーク、フレックス制度については「別に重要視はしていない」と話します。
最近、こうした現象との関連で「ホワイトハラスメント」(ホワハラ)という言葉が注目されています。
残業をさせない。無理な仕事は振らない。厳しいことも言わない。一見すると社員思いの対応です。しかしそれが行き過ぎ、本人の意思とは関係なく仕事や責任、挑戦する機会まで奪ってしまえば、かえって不満につながることがあります。
では、本当に若手は「ホワイトすぎる会社」に嫌気が差し、もっと厳しい会社を求めるようになったのでしょうか。データを見ると、実態はもう少し複雑です。
本稿では若手が「ホワハラ企業」から脱出し始めている真の理由、またこうした若手に企業はどう働きかけていくべきかを解説します。
若手が「ホワハラ企業」から脱出し始めている本当の理由
マイナビキャリアリサーチLabが、2025年に転職した中途入社1年以内の正社員1446人に実施した調査によると、13.6%が「現在の職場でホワイトハラスメントだと感じる経験がある」と回答しています。具体例として挙がったのは「先輩が先回りして仕事を全て行ってしまった」「責任ある仕事を任せてもらえない」「仕事が途中でも定時だから帰るよう言われた」といったケースでした。
さらに、ホワハラ経験者の71.4%が「今後1年以内に転職活動をしたい」と回答。ホワハラ未経験者(48.1%)より23.3ポイント高くなっています。
一方で、この結果だけを見て「ホワイト企業だから若手が辞める」と結論付けるのは適切ではありません。レバテックのIT人材白書(2026年版)では、ITエンジニアのキャリア志向性として「技術志向:技術的な専門性を磨きたい」が51.5%を占めました。
実際の転職相談でも、それを象徴するようなケースがあります。
あるクラウドエンジニアは、転職先に求める条件として「モダンな技術にチャレンジできること」を最優先に挙げ、収入アップはその次でした。「年収が下がっても身に付く技術が増えるのであればキャリアを取る」という考えでした。
印象的だったのはその背景です。周囲の年上のエンジニアを見ながら、自分が40〜50代になったときに、後輩から「勉強していない」と思われるようなエンジニアにはなりたくない。そんな将来への危機感を語っていました。技術変化の速いIT業界だからこそ「この会社で何を経験できるか」が、目先の待遇以上に重要な意味を持っているのです。
ALL DIFFERENTが情報通信業の新卒社員に実施した調査でも「専門性を極め、スペシャリストとして進みたい」と回答した割合は36.8%で、他業種より7.7ポイント高くなりました。また、35.6%が「学ぶことや自己成長、スキルアップを支援する文化がある会社で長く働きたい」と回答し、こちらも他業種を14.1ポイント上回りました。
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