なぜ上場を捨ててまでAIに賭けたのか? カオナビが非公開化して進める「脱・勘と経験の人事」(5/6 ページ)
人事データを可視化しても「勘と経験と社内政治」で決まる日本の人事。タレントマネジメント大手カオナビはこの課題に終止符を打つべく、株式非公開化という重い決断を下した。四半期決算の呪縛を断ち、5年間をAIと人事データの融合にあてる。同社が掲げる「タレントインテリジェンス」構想の全貌とは。2030年の再上場を見据えた佐藤寛之CEOの背水の変革戦略に迫る。
個人の意思決定を解き放つ「カオパス」構想
タレントインテリジェンスの先に、佐藤氏が描くのは「HR領域の意思決定の民主化」だ。企業に所属していると、自分のキャリアについて見える範囲にはどうしても限りがある。身近な上司や先輩のキャリアを参考にすることはできても、自分と似た経験や能力を持つ人が、ほかの企業でどんな仕事をしているのかまでは分かりにくい。
AIが企業内の人材データと個人の情報を組み合わせれば、キャリアについてより多くの選択肢を示せる。
「個人は自分で考えないといけませんが、これまではそのためのツールがありませんでした。企業側はそれを提供しないと、その人に残ってもらえません」(佐藤氏)
AIが「転職したほうがいい」と提案することもあり得る。それでも、別の会社の話を聞いた結果「やはり今の会社で頑張ろう」と考えることもある。企業に残ることだけを目的にするのではなく、本人が納得して働くための選択肢を増やすという発想だ。
その先に見据えるのが、個人のポータブルなキャリア基盤「カオパス」構想だ。社員のデータを、会社が一方的に囲い込む時代は終わった。個人が自らの適性や実績ログを自律的に管理し、社内の異動だけでなく、社外の機会とも直接接続できるようにする。
「人材流出を恐れて情報を隠す会社」ではなく「個人のキャリア選択を支援する会社」にこそ優秀な人材が集まる。カオナビは、主権を企業から個人へ返還することで、雇用関係そのものを再定義しようとしている。
企業側が持つ人材データや、個人の適性検査、評価などを組み合わせれば、より本人に合った出会いにつながる可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
好業績なのに“上場廃止” なぜネットワンはSCSKとの「攻めの統合」に賭けたのか
業績絶好調の独立系インフラベンダー・ネットワンシステムズが、自ら上場を廃止しSCSK傘下に入る「攻めの統合」を決断した。身売りではなく、自らの手で次世代IT企業へと進化するための戦略的ディールだ。インフラ(NI)とアプリ(SI)の壁を壊しワンストップ化を目指す両社。文化の異なる大企業同士がいかに融合し事業領域を拡大するのか。最先端拠点「netone valley」で田中拓也COOに直撃した。
日立が「1兆円買収」した米ITトップを直撃 日本企業の“根本的課題”とは?
日立の執行役常務と、デジタルエンジニアリングビジネスユニット(BU)のCEOも務めるGlobalLogic社長兼CEOのニテッシュ・バンガ氏に、日立との統合がシナジーをもたらした要因や、日本市場の展望について聞いた。
日立、米IT「1兆円買収」でどう変身? 文化の違いを“シナジー”に変えた手腕
「シリーズ 企業革新」日立編の4回目は、Lumada事業をさらに成長させている取り組みとして、2021年に約1兆円を投じて話題になった米GlobalLogic買収のその後に迫る。
日立の好業績を牽引する“巨大事業”の正体 日立デジタルCEOに聞く
日立は2009年当時、日本の製造業で過去最大の赤字だった状況から再成長を果たした。復活のカギとなった巨大事業、Lumadaのビジネスモデルとは――。日立デジタルの谷口潤CEOにインタビューした。
27万人の巨艦・日立はいかにしてDXを成功させたのか “知られざる変革劇”に迫る
日立のV字回復を支えたコスト構造改革とDXは、いかにして進められたのか。その裏側を、スマトラプロジェクトで中心的な役割を担った冨田幸宏・DX戦略推進部部長に聞く。
Lumadaは日立のビジネスをどう変えたのか 「部門間の連携」を生み出した変革の意味
Lumadaによって日立のビジネスはどう変わったのか。その変遷と現状について、日立製作所マネージド&プラットフォームサービス事業部の広瀬肇事業主管に聞いた。
“日立流”生成AI時代の組織再編 「ルマーダ売上2.65兆円」につなげる狙い
日立製作所が組織再編を進めている。米シリコンバレーに本社を置く「Hitachi Vantara」のデジタルソリューション事業を分社化し、新たに「Hitachi Digital Services」を設立する。その狙いは?
日立の責任者に聞く生成AIの“勢力予想図” 「来年、かなりの差がつく」
日立はどのように生成AIを利活用しようとしているのか。Generative AIセンターの吉田順センター長に話を聞いた。
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。
