「食」をめぐるさまざまな問題がクローズアップされている中、“都市における食”を取り巻く問題に取り組む「大人の食育プロジェクト」が東京・丸の内で始まっている。プロジェクトのコンセプトは「“食”は生産者/シェフ/消費者の意識によって支えられており、健康で楽しい生き方の基礎」。このプロジェクトの推進企画第1弾として、丸の内周辺で店舗を展開するシェフが集う「丸の内シェフズクラブ」が発足。2月7日に発足発表会が行われた。
食育活動を推進したいと考えるシェフたちが、料理のジャンルを超えて活動を行うというこの「丸の内シェフズクラブ」。発足式には、同クラブの会長に就任した服部栄養専門学校校長の服部幸應氏をはじめ、フレンチレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三氏、「銀座寿司幸本店」の杉山衛氏、イタリアンレストラン「イル ギオットーネ」の笹島保弘氏、中華料理レストラン「福臨門酒家」の張漢華氏ら主要メンバーが参加。クッキングデモンストレーションを行った。
今回のデモンストレーションのテーマは大根。寒さが増し、霜が降りることで糖質が増える大根は、今の時期が旬で栄養素も高い。身近な野菜を使ってのデモンストレーションだが、ジャンルの違う4人のシェフが作るメニューは多種多様。笹島氏は「大根と鶏ミンチの簡単リゾット、柚子の香り」を、張氏は「猪肉の五色炒め」を、杉山氏は「ねぎま大根汁」を、三國氏は「天然青のりのリゾットと鮪のづけ、辛み大根のおろし和え、香草と黒胡麻風味」とそれぞれの個性を生かしたメニューをその場で調理。ただよう料理の香りに丸ビルを訪れた人たちがふと足を止めていた。以下でそれぞれのメニューを詳しく紹介しよう。
普段からイタリアンに昆布だしを取り入れている笹島氏。今回のメニューでもだしには昆布を使っている。「大根の皮はうまみがある。昆布との相乗効果が生まれます」(笹島さん)と、大根の皮も利用した。パルメザンチーズとオリーブオイルで仕上げ、おろしたゆずを加えてフレッシュな風味を演出。かみ応えのある鶏肉とネギのシャキシャキとした食感が絶妙。
冬の食材イノシシ肉と、パプリカやアスパラ、ニンジンを利用した色鮮やかなメニュー。中国のたくわん、チョイポウの代わりに日本のたくわんを取り入れた。「イノシシ肉がない場合には、鶏肉や豚肉での代用もできる」(張氏)とのことで、オイスターソース、塩、酒を調味料として使用ている。たくわんのこりこりした食感がアクセントになっている。
昆布とかつお節でとっただしに、切ったマグロと大根、ネギをたっぷり入れたシンプルなねぎま汁。塩、しょうゆで味付けを行い、酢で味を調える。「酢を加えることでまぐろ特有の香りをおさえ、味がしまる」とのこと。今回隠し味として、赤酢で作った酢飯や、サンショウ、一味も加えた。マグロのうまみやと同時に、ネギや大根の甘み、酢の酸味も味わえる。
整えられた見た目も美しい、リゾットの前菜。天然青のりを加えたリゾットにづけマグロのスライスと、ハーブを混ぜた大根おろしを載せ、いためた大根の茎をあしらった。ドレッシングはアボカドオイルをべースに作られている。「(味が付きすぎて)しょっぱくなってしまうので、づけに浸したマグロは30秒であげること」(三國氏)がコツだとか。三船さんが思わず「世界旅行に行ったみたい! 和もあるし、外国の味もするし。マグロは冷たいのに、リゾットは温かい。辛いのに甘くて、うまみがすごい」と興奮の声を上げたほど複雑で繊細な味わいのメニュー。
デモンストレーションに参加した高橋・三船夫妻は「栄養価ばかりでなく、食には楽しさ、おいしさが必要」(高橋さん)、「大根というひとつの素材だけで、いろいろなレシピがある。自分も勉強していきたい」(三船さん)とそれぞれが食に関して新たな認識を持った様子。「子だけではなく、親が学んで子供に教えていけるよう食のあり方を知ってもらいたい。大人がおいしく楽しく元気になる食をテーマに大人の食育を行っていきたい」(服部氏)と、同クラブは今後、シェフ同士の情報交換などのコミュニティー作りから始め、新しいレストランのあり方や、食育推進活動を進めていく。
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