モルトの腐食が始まっているDial35の中身-コデラ的-Slow-Life-

» 2009年06月23日 08時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 ライター仲間から修理を請け負った、キヤノンのハーフカメラ「Canon Dial35」と、そのOEM製品であるBell&Howell版のDial35(参照記事)。まずは比較的軽傷と思われるBell & HowellのDial35から手を付けていくことにした。基本的にはファインダー内を掃除するだけで十分なはずである。しかしデザインが綺麗なカメラは、中身を開けるのが大変だ。外装部品を全部外さないと、ネジも見えない。

 まずは正面のパーツを慎重に取り外す。シャッター周りのパーツはネジになっているが、周囲にギザギザがないので、手では回らない。傷つけないようラジオペンチにティッシュを挟んで、回していく。

ティッシュで挟んで飾りネジを外す(左)。ダイヤルの裏側はこんな感じ(右)

 ゼンマイ部分は、カメラ内にあるイモネジを外せばいいと様々な資料には書いてある。このイモネジが変わっていて、小さな2つのネジが連結して入っている。1つ外した奥に、もう1つネジがある格好だ。おそらくそんなに長いイモネジは特注品になってしまうこと、強固なズレ防止のためなど、いろいろ理由があったのだろう。

 肝心のゼンマイユニットは、日本の資料に書いてあるように簡単には外れなかった。というのも、ボディとの間に大きな六角のナットがはまっているのである。国内バージョンはそんな構造にはなっていないが、米国向けは、ゼンマイユニットの発注先が違うのかもしれない。急きょ大きめの板レンチを買ってきて、ようやく外れた。

六角ナットがはまっているゼンマイユニット

 側面を覆っているゴムも、全部外さないとネジが見えない。ジッポオイルをすき間に注入しながら、綺麗にはがしていく。表面のカバーは、4カ所ほどのネジで留まっているだけだった。国内モデルよりも、ネジが1つ多い。基本設計は同じでも、製造場所が全然違っていて、現場の判断でいろいろやっているのかもしれない。

ゴムを外すと、露出計の調整用抵抗があった

内部のゴミとの戦い

 この時期のキヤノンのハーフカメラは、内部にカメラボディがあり、その前後を表皮とも言えるカバーをかぶせる構造になっている。裏側はそのままフィルム装填時に開ける裏ぶたとなるわけである。通称「もなか構造」と呼ぶようだ。あんこの部分がカメラボディというわけである。

ようやくフロントパネルが外れる

 内部には想像以上に大量のモルトが使われていた。モルトとは遮光のために利用されるスポンジ状のものだが、Dial35は遮光だけでなく、隙間のガタツキ防止やホコリの進入防止のために、随所にモルトが張られている。しかしこのモルトがことごとく腐食し、かえって内部をゴミだらけにしているわけである。

内部のモルトはカビが生えている

 問題のファインダーの曇りは、おそらくこの腐食して微粉末状になったモルトの粉が、ファインダー内に進入して内部でカビたものだろう。最初は結露で曇っているのかと思っていたが、思いのほか重傷のようだ。

ファインダーの状態は、表から想像した以上に深刻だった

 表面をクリーニングすればいいと思っていたのだが、実は2つ重なったレンズの内側でカビている。レンズを1枚ずつ外して、クリーニングした。だいぶ曇りは軽減されたものの、さすがにカビによる曇りは完全には取り切れなかった。しかし幸運なことに、左側だけである。ゾーンフォーカスの表示がファインダー内左側に出るので、レンズを上下ひっくり返して装着した。こうすれば曇った部分は右側になるので、表示部はクリアに見えるわけである。

重なったレンズを1枚ずつ外してクリーニング

 あとはひたすらモルトの交換である。モルトはいったんジッポオイルを吸わせて湿らせてから削った方が、粉末状のゴミが飛び散らない。自分のものならドライバの先でごりごり削るのだが、さすがに人のものなので、割り箸の先を削ってへら状にし、丁寧に削っていく。しかし割り箸の木が柔らかすぎて、先がすぐ曲がってしまう。竹製の割り箸があれば、その方が強度が高いのではないかと思われる。

割り箸の先端でモルトを削り取る

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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