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プロカメラマンを満足させたかった――サンディスクの最新CFカードインタビュー

» 2009年09月28日 11時10分 公開
[上島康夫,ITmedia]
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 サンディスクはCF(コンパクトフラッシュ)カードのフラッグシップモデル「サンディスク・エクストリーム・プロ」(以下、エクストリーム・プロ)を9月19日に販売開始した(→サンディスク、600倍速「世界最速」CFカードを発売)。読み取り/書き込み速度が最大90Mバイト/秒(UDMA 6)というハイスペックモデルにかける同社の意気込みについて、来日中のバイスプレジデント(リテール・プロダクト・マーケティング担当)、エリック・ボーン(Eric Bone)氏にお話を伺った。

妥協を許さないプロカメラマン仕様のコンセプト

―― 世界的な景気後退でユーザーの低価格志向が強まっているこの時期に、価格も性能もトップクラスの製品を投入した狙いは何でしょうか。

photo サンディスク バイスプレジデントのエリック・ボーン氏

ボーン氏: この製品の開発を開始したのは1年半前のことで、その間に経済環境はすっかり変わってしまいました(笑)。しかし消費者の低価格志向が強まったからといって、エクストリーム・プロがターゲットに想定したユーザーは変わっていません。一貫してプロのカメラマンを意識して開発してきました。低価格志向の消費者にマッチさせることよりも、世界で最高のCFカードを開発することが重要だったのです。

 開発に当たって、3つの重要な特徴を前面に押し出しました。「スピード」「容量」「信頼性・耐久性」です。これらは開発時に協力を仰いだプロカメラマンから寄せられた要望のうち、最も強かったものです。彼らの要望は、それぞれが基盤としている業務分野によってさまざまでした。例えば、スポーツカメラマンであれば何よりもスピードを重視します。一方、ネイチャー系の撮影で何日も屋外で過ごすカメラマンは、耐久性を重視します。さまざまな分野のカメラマンから要望を聞き入れ、最終的に上記の3つにたどり着きました。どれか1つの分野だけに絞り込まなかったのは、総合力を高めてあらゆるプロカメラマンに使ってもらいたいと考えたからです。メモリ関連商品は一般的にコモディティ化していますが、今回の製品はプレミアム性を持った商品なのだということをアピールしていきたいです。

 日本市場の視点でいえば、アマチュア写真愛好家の間で、より高画質な写真を求めて高級一眼レフカメラにステップアップし、作品を高画質で長期間保存するためにRAW+JPEGで撮影するといった使い方が浸透しつつあります。また、最近のデジタルカメラは多くの機種にHDムービー撮影機能が搭載されています。一眼レフカメラの大口径レンズを使って、ボケを効かせたHDムービーを撮影したいというニーズも出てきました。こうしたユーザーに高速で大容量のCFカードを提供するのが本製品の目的です。

 エクストリーム・プロはUDMA 6という標準化されたインタフェースに対応し、当社独自のパワー・コア・コントローラを組み合わせることで最大90Mバイト/秒という高速転送を実現しています。このカードの能力を最大限に発揮するには、カメラ側がUDMA 6に対応している必要があります。キヤノンはEOS 5D Mark IIと発売間近のEOS 7Dについて、明確にUDMA 6対応と発表しています。単にUDMA対応として、どのバージョンに対応しているかを明示していないメーカーでも、UDMA 6に対応している製品はあります。各メーカーは厳しいスペック競争をしていますから、今後のモデルチェンジによって順次UDMA 6に対応していくでしょう。

―― エクストリーム・プロの特徴をどうやってユーザーに訴求していくつもりですか。

ボーン氏: CFカードを使用するカメラは中〜上級機に限られます。キヤノンならEOS 50D以上、ニコンならD300S以上です。そういったハイスペックなカメラを使うのであれば、それに見合った性能のCFカードを使っていただきたいと思っています。

 ただ、プロカメラマンの中にも、あまりCFカードの性能を気にする必要のない領域で仕事をされている方もいます。先ほどお話ししたように、すべてのカメラはUDMA 6対応ではないですから、エクストリーム・プロの高速性を完全に発揮できないこともあるでしょう。

 しかし撮影後の編集処理における転送速度の重要性は、あまり多くの方に認識されていません。何十Gバイトもの写真を撮影するプロカメラマンにとって、カメラからPCへ画像を転送する速度はとても重要です。オンラインメディアなど、一刻を争う領域で仕事をしているプロはもちろんのこと、アマチュアの方でもストレスなくPCへ画像を転送できるのは大変ありがたいものです。また、容量が大きいことはすべてのカメラマンにとってプラスの要因に違いありません。頻繁にカードを交換しなくて済むのは有利ですから。

 こういった製品の特徴をユーザーに理解してもらうには、家電量販店やカメラショップで店員さんに説明してもらうのが大切だと思っています。高性能なカメラを購入する際に、相応のハイスペックなCFカードが必要性ですよとアピールすることで、納得してもらえると考えています。

photophoto エクストリーム・プロ(最大90MB/秒、写真右)とUltra II(最大15MB/秒)の比較デモを披露するボーン氏。RAW+JPEG(合計約32Mバイト)で15ショット連写したところ、前者は11秒に対して後者は書き込み遅延によりシャッター間隔が延び34秒かかった。カメラはEOS 7D(発売前のベータ機)。

―― メモリメーカーには低価格戦略をとる企業もあります。サンディスクという会社はこの業界でどのようなポジションにありたいと考えていますか。

ボーン氏: 低価格戦略の企業は、メーカーというよりはマーケティング企業だと考えています。彼らは他社からフラッシュ本体やコントローラを調達して、市場ニーズにマッチするような組み合わせを考えるビジネスに特化しています。われわれは“メーカー”として、コントローラの設計開発からフラッシュ本体の製造まで自社で行い、多くのハードウェアメーカーと連携して、互換性の検証などの情報交換を行っています。またCFカードをはじめ、さまざまなメモリストレージの規格策定に参加してきました。こういった活動を通して、この分野でイノベーションを起こしていく企業でありたいと思っています。

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