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過去と未来への仕掛けを備えたカメラ――ペンタックス「K-5」(1)矢野渉の「金属魂」的、デジカメ試用記(2/2 ページ)

» 2010年11月24日 17時00分 公開
[矢野渉,ITmedia]
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未来をつかむためのISO 51200

 次に、K-5のキャッチコピーにもなっている「ISO 51200」だ。正直言ってこの高感度が何に使えるのか僕には想像もつかない。「高感度でも使える画質」が叫ばれて久しいが、ちょっと前までは「ISO 1600でもきれい」だったものがISO 6400ぐらいまではいけそうなぐらいに技術は進歩している。そのなかでのISO 51200である。

 未来を予想すれば、この超高感度はPENTAXの提唱する撮影モードには必要なのだ。それが「TAvモード」だ。この撮影モードでは、撮影者がシャッタースピードと絞りを設定すると、カメラがそれに合わせてISO感度を動かす。だから例えば薄暗い場所で動きの速い被写体をとらえようとして高速シャッターを指定すれば、ISO感度はいくらあっても足りないぐらい必要になるだろう。

photophoto ほとんど真っ暗の状態で、朝日が見え始めた景色。左は標準出力感度最高のISO 12800。右は拡張設定のISO 51200。12800は写真として実用レベルだが51200は画面のノイズがちょっとキツイ。AWBで撮影したが、色温度も微妙に変化するようだ

 おそらく数年後にはISO 51200の画像も、かなりのレベルになって行くのだろう。そのときPENTAXの「TAVモード」は完成に近づくのだ。いや、どんな状態でもそれなりに写るならば、「感度」という概念さえなくなっているかもしれない。とにかく、「ISO 51200」をぶちあげてずっと先の目標を掲げたPENTAXに拍手したいと思う。今はこのレベルでも、いずれ技術が解決するだろう。

 そして一番便利だと感じたのが「バッファRAW保存」だ。例えばJPEGで撮影した画像を再生中にAE-Lボタンを押すとバッファメモリー上のRAWデータが追加保存される。この機能は撮影者の心理をよく理解している。

 僕は基本的にスナップをJPEGで撮るほうだが、時々、これは帰ってから色をいじりたいな、と思うことがある。それを撮影したあとでRAWで保存できたら最高だ。帰ってからさらに良い写真に仕上げることができる。

多重露光の愉悦

 ライブビューで合成を確認しながら撮影できる多重露光の機能は、K-7の時代からすでにあったものだが、今回、画素数が1628万画素に上がったということで作例を作ってみる気になった。

 多重露光は、一般ユーザーにとって最も使用頻度の低い機能かもしれない。理由は、出来上がった写真が、思ったほど良くないからだ。大体が白っぽい写真になる。動いている被写体をコマ送りのように撮影すると、背景の動かない部分がシャッターを押したぶんだけ多く露光されるから、オーバー気味になってしまうのだ。露出をうまく調整できたとしても、被写体が半透明になってしまっているので写真としていまいち弱い。

 また、デジタル写真を撮影後に画像処理ソフトで合成するのはそれほど難しいことではないから、技術がある人は、わざわざ多重露光撮影をすることはないだろう。

 しかし、多重露光時に自動露出調整ができたり、ライブビューで合成状態を見ながら次のコマの撮影ができたりと、本来は難しい撮影を可能なかぎり簡単にできるようにして、K-5はユーザーを飽きさせない。「PCレス」の思想がつらぬかれているのだ。できるだけ長い時間K-5に接してほしい、K-5と会話してほしい、楽しんでほしい、というPENTAXの開発陣の願いがよくわかる。

 本来、多重露光撮影はとても楽しいものだ。まず頭の中で絵を作って、それを具現化していく作業は、普段の撮影よりも緻密な計算が必要で、だからこそ上手く写真ができた時の喜びは大きい。

photo ライブビューでの多重露光。直前までの合成結果がモノクロ、半透明で表示される。これから撮影する被写体の位置決めがとても楽だ
photo 007が銃を突きつける悪者をボンドカーの屋根から放り投げるシーン。もっとコマ数を増やしても面白かったかもしれない

 多重露光のコツは、背景が暗く、逆に被写体には光が当たっている状態で撮影することだ。背景が明るいと、被写体に被ってしまい、うるさい写真になってしまう。夜景などは比較的楽に、キレイな多重露光の写真が撮れるのでおすすめだ。

 とりとめもなくK-5のインプレッションを述べてきたが、後編では新採用の1628万画素CMOSの「写り」を中心にリポートしたいと思う。

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