ニコンのフルサイズ(FXフォーマット)機「D610」(レビューまとめはこちら)は、2012年9月に発表された「D600」の後継製品だ。フルサイズセンサーや画像処理エンジン、AFセンサーなど主要部品はD600と同様というマイナーチェンジ版であり、D600ユーザーはほっと胸をなで下ろしているかもしれない。
D610に搭載されている撮像素子はD600と同じフルサイズ(35.9×24ミリ)の2426万画素で、主な変更点としては連写速度の向上(最高約5.5コマ/秒から最高約6コマ/秒)、連写が可能となった静音撮影モードの搭載、そしてオートホワイトバランス精度の向上が挙げられる。
背面から見て左肩部分には、D600と同様にドライブモードダイヤルを兼ねた撮影モードダイヤルある。右肩には測光モード、露出補正といった設定ボタンが用意されており、頻繁に使用する物を右肩に、確認して操作する物が左肩にまとめられていることがわかる。
背面にはISO感度やホワイトバランス、画像形式を選ぶボタンがあり、ダイレクトに設定変更が可能で使いやすい。D700ユーザーとしてはこの背面のボタンを押して上面の液晶画面で設定変更する点に少し戸惑いを感じたのが(ちなみにD700は上面液晶で設定する項目のボタンは上面に集められており、操作と確認は1カ所に統一されている。また、ドライブモードも上面から確認・設定する)、背面ディスプレイに「info」ボタンでカメラの設定情報を表示していれば、現在の設定を俯瞰で確認しつつ細かい設定変更ができるため、ミスが少ないというメリットがある。
D610のボディはD700より縦横ともに小さいが、グリップの形状が良く、包み込むようにしてホールディングできる。撮像素子や画像処理エンジンといった電子デバイスだけではなく、ボディ形状といったアナログな部分も使いやすさを求めて日々進化していることを改めて認識させられたのだった。
本体重量はD610がバッテリー込みで861グラム、D700が1101グラムと240グラムも差がある。D700が1キログラムを超えていたことに改めて驚くとともに、D610の軽さが実感できる結果となった。ちなみに普段、筆者はD700にバッテリー容量確保のため、バッテリーグリップ(MB-D10)をつけて使用している。そうなると重さは約1470グラムとなるのだ……。
実際にD610で撮影してみると軽快なシャッター音が良く、秒間6コマで気持ちよく連写ができた。D700は本体だけでは秒間5コマで、さらにバッテリーグリップがないとシャッター音にキレがない。ファインダー視野率は100%を確保しており、95%のD700の上を行く。撮影の根幹となる部分ではD610のボディ単体でのスペックの高さを評価したい。
ISO感度設定は基本ISO感度が100から始まり、上限はISO6400さらに2段分の拡張ISO感度設定(最大ISO25600相当)が設けられている。ISOオート設定にはシャッタースピード下限設定にオートが加えられており、使用するレンズにあわせて自動的にシャッタースピード下限が設定される。
これはD700には無かった機能で、ISOオート使用時もシャッタースピードの下限はレンズにあわせて変える必要があった。そしてこの設定を忘れて望遠撮影時にブレを誘発したり、広角レンズでシャッタースピード下限設定が速すぎて無駄に高感度で撮ってしまうこともしばしばあった。そういった意味ではD610のISOオート機能は魅力的である。
さて、秒間6コマの連写撮影が可能なD610で気になるところは連続撮影可能枚数だ。メディアを入れてRAWに設定して、ファインダーを覗きシャッターボタンを半押ししてみると「r10」の表示が出た。これは10枚まで撮影可能という事なのだが、思ったよりも少ない。念のためJPEGのL-Fineにしても表示はr10のまま。
D600ユーザーならご存じかと思うがISOオート時は撮影可能枚数が減るようで、ISOオートをオフにしたところ、ファインダー内表示がRAWでr22、JPEG L-Fineでr46となった。
D700よりも画素数が多いにもかかわらず連続撮影可能枚数がRAWで22枚な点は実用的。RAWのファイルサイズは1枚あたり25MBを軽く超え、さらにより快適に連続撮影を行うためには、いかに高速タイプのメディアを使用できるのかという、こちら側の懐具合次第という課題も突きつけられた。
とはいえ、せっかくのISOオートなのだがバッファサイズが大幅に減ってしまうのが惜しい。用途に合わせて使いわげの必要ありそうだ。
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