本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。何やら真剣な顔をして総メイド長・エリスがやって来ましたよ。
少しずつ寒さも和らいできたこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って書架にメイドがやってきます。
ミソノさん、そろそろわたくしも昇ろうと思うのです。大人の階段を……!
エリスさん、無理は体によくないですよ〜。
うわーん! すごく自然に無理って言われた!
腐っても総メイド長ですから! メイドたちに清く正しい道を歩んでもらいたいと常々思っているのです。
わたくし自身、「清く正しく」生きなさいと、そう教えられてきましたから。
まあ……!
こほん。でも最近悩んでおりました……。「清く正しく」とは、どういう人間を目指すことなのか? もっと具体的にイメージしなければいけないのではないか……と。
そんな時に出会ったのがこの本です。
自己啓発というよりはエッセイのような本ですね。
はい。具体的な手順と結論が書いてあるようなものではなく、御年82才となる著者の方のご経験やお考えが書かれています。
読んでいく中で、こういう生き方に憧れる……! とじわじわ感じる本です。共感できる方とできない方、分かれると思いますが、わたくしは個人的にとてもツボでした。
と言いますのも「身の程を知る」という言葉がここ数年マイブームワードでして。
まぁ……マイブームワード……ですか?
心にぴったりくるこの言葉をマイブームワードとして定めていたんです! 「身の程を知る」という語が、何だかとっても今の自分に必要な言葉な気がして。
それなのに、自分がなぜ今そう感じるのか、本当に大事なことなのか……ピンときて心に決めたものの、肝心の理由については自分自身がよく分かっていなかったのです。
そんなときに読んだからこそ、ツボにきたのかもしれません。本にはこうありました。
世界を意識した地理的、時間的空間の中に自分を置き、それ以上でもそれ以下でもない小さな自分を正当に認識できることが、実はほんとうの成熟した大人の反応なのだと思う。
それはまさに漠然と感じていた「身の程を知る」の意味をストンと理解させてくれる一文でした。
あわせて「身の程を高く据え過ぎた時の不幸」「低くし過ぎた時の不幸」が書かれているのですが、まさに最近感じていた心の空虚感と一致してしまって。当たり前のことのはずなのに、自分はこんなにも身の程を知る事の大切さを見失っていたのかと気づかされました。
そのほかにも「品を保つということは」など、人間が成熟するとはどういうことなのか、著者のお考えが書かれています。お話は18に分かれているのですが、そのうちの半分は「こうなりたい」と強く憧れるものでした。
あら、もう半分は?
著者の曽野さまは戦争を経験され、貧しさに苦しむ方たちの支援活動をされていることもあり「極限の状態」や「本当の貧しさ」を目の当たりにされてきたことと思います。
お金に困ったといっても、今夜食べるもの・住む場所が一切ない、という経験をしたことのないわたくしにとっては、そのご経験は計り知れないものです。
そういった経験の違いもあってか、昨今のエンターテイメントや人々の不平不満について述べられた曽野さまからのご意見に対して、わたくしはかなり厳しいと感じました。
「幼稚だ!」「甘えるな!」と書かれているのに対し、「極論だ!」「お小言だ!」と思われる方も多いと思います。
実名や実際の出来事の名前を挙げてご意見を述べていらっしゃるのですね。確かになかなか厳しい……!
正直申し上げますと、わたくしも本の半分ほどは納得できませんでした。
でもネガティブな思いはなく「今はまだ納得できない」「経験を積んだら今とは違う受け止め方をするかもしれない」という楽しみを残すものでした。
年を重ねてからまたこの本を開いたら、今は「うーん……」と思うお話にも共感できるようになっているかもしれませんね。
と言いつつ、80才になっても「やっぱりこの意見には賛同できないわい!」と言っているかもしれませんけれど(笑)。
年を重ねていくとき、そばに置いておきたい1冊です。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:19% レイラ:35% サヤ:48%
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