日本の貴重なデジタル化資料を公開している国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)。本連載では、デジコレで見ることができるデジタル化資料の中からコレは! というものを探し出し、紹介していきます。
日本には、夢野久作の『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、中井英夫の『虚無への供物』という、いわゆる“三大奇書”と呼ばれる本があります。いずれも青空文庫や書店などで買って読むことができるので、ここではお宝とは言えませんがとても興味深い本です。
そこで考えたのですが、それらの本が三大奇書と呼ばれるならば、三大奇人は誰になるのでしょうか。江戸時代には、林子平、高山彦九郎、蒲生君平の三人を“寛政の三奇人”と呼んだそうですが、ここでいう奇人は特に優れた人という意味で、変わった人のことではないそうです。
以前取り上げた、エログロナンセンスの火付け役だった酒井潔もかなりの奇人だとは思いますが、今回はさらにその上を行くと思われる人物を取り上げます。
今日はやけにしゃべってるけど、私もいることを忘れないでよね。
いたんですか。
えぇ、ずっと……。それで、誰なの、あんたが考えるその奇人っていうのは。
江戸から昭和にかけて生きたジャーナリスト、風俗研究家などで知られる宮武外骨です。
名前からして変な人ね。
ちなみにこの名前、ペンネームではなく本名なんです。幼名は亀四郎というのですが、17歳のときに改名したんだとか。由来は幼名の亀という字にちなみ、古代中国の書物にある「亀外骨内肉者也」という一文から取ったそうです。
物事をパロディ化するのが大好きで、大日本帝国憲法発布をパロディにて禁固罪に処されるなど、幾度となく投獄されています。
あ、今回も頭が付いて行かなくなりそうな感じね。
真面目なこともやっていたのでそちらも紹介もしましょうか。パロディで反感を買っていた外骨ですが、その対象は官僚や政府権力などの力を持った存在だったようです。地位を利用して悪事を働く記者たちのことを「ユスリ記者」と読んで批判したこともあったのだとか。
自分の考える正しさを貫く人だったのね。
それでは、そんな外骨が書いた本を紹介しましょう。
こちらは外骨の奇問に対して、心理学者の高島平三郎が解答していくといった内容の本です。果たして外骨はどのような質問を投げかけているのか、そして平三郎はそれに答えることができたのか、中を読んでいきましょう。
現代の視点から見ても面白い内容じゃあないですか。こういう疑問をたくさん持っているというのは、いかにもジャーナリストらしいですよね。
お互いの知識をぶつけ合って戦っているように見えるのも面白かったわ。けん制し合っているけど、実はかなり仲がいいんじゃないかしら。
まだまだ興味深い本があるので、今回は前編扱いにして、また次回に持ち越そうかなと考えています。来週までに『通俗心理奇問正答』を読んでみてくださいね!
『通俗心理奇問正答』http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/959211
(出典=国立国会図書館)
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