マイクロソフト、無償提供「Web Matrix」でOSSに対抗(2/2 ページ)

» 2004年06月03日 15時05分 公開
[嶋川祐馬,ITmedia]
前のページへ 1|2       

VBからWebアプリケーションへ

 マイクロソフトにとって驚異なのはそれだけではない。パーソナルコンピュータ、および、Windowsなどマイクロソフト製品は今や企業には無くてはならない存在である。その普及には、Windows自体の機能性やOfficeの存在も大きいが、それと同様に重要であったのがVisual Basicの存在だ。パッケージソフトウェアだけで、企業として必要なアプリケーションがすべて揃うわけではない。

 どのような企業においてもカスタムアプリケーションは存在するはずだ。それまでカスタムアプリケーションといえば、COBOLで開発するものであった。そこに颯爽と登場したVisual Basicは、カスタムアプリケーション開発コストを大幅に下げ、ダウンサイジングという言葉で語られ、急速に普及した。

 しかし、規模が大きくなるにつれVisual Basicの問題も明らかになった。インストールコストの高さだ。Visual Basicアプリケーションは、インストール作業を要求するため、アプリケーションの機能追加や不具合修正の度に、ITマネージャは、インストール作業に翻弄されてきたのだ。その背景も、Webアプリケーション普及の大きな原動力となり、WWW登場以前であればVisual Basicで構築されたアプリケーションが、次第にWebアプリケーションとして実装されるようになった。

 マイクロソフトにとって重要だったのは、VBベースのアプリケーションという資産以上に開発者であった。Webアプリケーションへのソリューションとしてマイクロソフトが何もしなかったわけではない。VB開発者の存在も考慮にいれ、VBScriptで開発可能なASPを登場させたし、統合開発環境としてVisual InterDevもリリースした。VB開発者の一部は、Windowsアプリケーション開発はVBで、WebはVBScriptによるASPでという使い分けを行っていたが、微妙な言語やプログラミングモデルの違いから、多くのVB開発者は引き続きWindowsアプリケーションの開発に従事した。VB開発者は引き続きWindowsアプリケーションを開発していたのだ。

 Webアプリケーションが衰えるという事が予想できない現状において、VB開発者が(マイクロソフトプラットフォーム上で)Webアプリケーション開発に携われるようにしていくことは、今後のマイクロソフトにとって極めて重要なのである。そのための戦略がASP.NETであり、VS.NETであり、Web Matrixと考えるべきだろう。

Webアプリケーションを足がかりとしたサーバ攻略

 Windows NT 4.0の普及により、マイクロソフト製品は企業に浸透した。しかし、そのWindows NT 4.0 Serverのサポート期間の最終は、どんな手段を使っても2004年末までであり、多くの企業はWindows NT 4.0 Serverの移行先を模索中だろう。候補には、Windows Server製品だけでなく、Linuxも含まれている。LinuxによるWindowsクライアントサポートも強化され、Windows NT並とい言える状況にまで成熟してきている。この状況において、Windowsを選択させる足掛かりのひとつは、Webアプリケーション実行環境であり、それを作成する開発者の存在である。つまり、マイクロソフトは、VB開発者をASP.NET/VS.NET/Web MatrixによりWebアプリケーションもターゲットにできる開発者に進化させ、Windows Serverおよび、その上で動作するSQL Serverを始めとしたサーバ製品を浸透させる目論みであろう。これが、Web Matrixリリースの3つ目の理由だ。

Web Matrixを使わない手はない

 これだけ重要なポジションでリリースされたWeb Matrixは利用価値の高い開発環境であることは当然である。背景には様々な思惑が渦巻いているともいえるが、ASP.NETがWebアプリケーション開発において一定のポジションを獲得するのは間違いなく、ASP.NETの評価は今後のWebアプリケーション開発において確実に必要であり、その評価の手段としてWeb Matrixほど最適な手段はないだろう。

 .NET Frameworkランタイムが必要という条件はあるが、ダウンロードサイズは2Mバイト以下、インストールも1分以下ですぐに体験できるWebアプリケーション開発環境Web Matrixを体験してみよう。

(※1)Web Matrixにのみ実装されている機能のほとんどは、Visual Studio 2005に実装予定。

(※2)マイクロソフトは、メンテナンスコストやカスタムアプリケーション開発コストなどを含めたトータル的なコストでの比較を望んでいるが、レガシーなWebサーバを構築するという場面では、Linux+Apacheが絶対的に有利である。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ