Eclipseの先にクライアントEJBを描くIBM

来日会見を行ったドン・ファーガソン氏。米IBM技術者の中で数少ないフェローの称号を持つ同氏にインタビューを行い、WebSphereとEclipseの関わり、そしてIBMの狙いを聞いた。

» 2004年08月07日 00時47分 公開
[聞き手:木田佳克,ITmedia]

 EJBやIBMのJavaアプリケーションプラットフォーム「WebSphere」の生みの親として知られている米IBM、チーフ・アーキテクトのドン・ファーガソン氏。来日会見後のインタビューで、WebSphereとEclipseの関わり、その先にある狙いを聞いた。

 テーマは、比較的IBMでは聞かれない比較的小規模なアプリケーション開発について。

ITmedia 比較的中小規模なアプリケーション開発の現場では、SOAと言われても描きづらい面があります。IBMはどのようなメッセージを送りますか。

ファーガソン 日夜努力している点です。たとえばWebSphereや.NETの相互運用性もSOAのユースケースであるわけですが、それほどの用途を望まない向きもあるでしょう。中小規模ということで幅広く捉えれば、今までにiシリーズ、ロータスプロダクトなどで開拓をしてきました。WebSphere Expressシリーズもそうです。そして、新しいところではWorkplace Technologyでしょう。サーバとWorkplaceのやり取りはSOAです。

EJBは決してサーバサイドのテクノロジーだけというわけではない、とファーガソン氏

 たとえ中小規模であっても大規模なシステムとの接続性を考慮した場合、大きく関わります。このような事例は欧米、アジアなどで数多く聞いています。たとえ目の前の開発では現実味が無くても、大規模な基幹で採用されていれば、相互接続を必然的に意識せざるを得なくなるでしょう。

ITmedia WSDLやBPEL、BPELJなどと相互運用性規格が進むほど、ベンダーとしての個性が出しづらくなることはないのでしょうか。

ファーガソン 一方で業界標準、一方でIBMの特色をどう見せていけばよいのか、仲間と相談しながら葛とうすることがあります。しかし、当初はIBM色をどう出したらよいのか分からないという意見もあったのですが、箱を空けてみればそうでもありませんでした。

 現段階でも、統合化推進、標準化への取り組みと網羅性がIBMの強みです。そして、相互運用性を歓迎するユーザーはとても多いのです。特定ベンダーにロックインしないことは、大きなメッセージとなっています。

 IBMは昔、キャッシュレジスタや秤、チーズスライサーなどを販売していた時代があります。IBMがコンピュータベンダーとなっても、中小企業との付き合いが20年以上というケースが多いです。そのような信頼もIBMの強みです。

ITmedia EJBなどを必要としない比較的中小規模のアプリケーション開発では、Eclipseで十分という声を聞きます。業界への貢献は大きいですが、IBMとしての狙いはどこにあるのでしょうか。

ファーガソン J2EEのアプリケーションにおいて、MVCモデル実現はやはりEJBです。Eclipseはあくまでもフレームワークです。そして、EJBはクライアントサーバ、Webサービスは2つの側面から見る必要があると考えています。

 今後、この中間層のインテグレーションサーバを構築する場合もあるでしょう。複数のクライアントに対して有効性を問うアプローチもあります。モデルオブジェクトがPC間でやり取りする場合や、モデルオブジェクトとビジネスファンクション(各種の必要な機能)の関わりでも、PC相互間で共有しなければなりません。そうするとやはり、モデルレイヤーをサーバ上に配置する必要性が出てきます。Eclipseの延長線上としても、ある程度EJBコンテナを選択して使わなくてはならなくなります。

 IBMは、クライアント上で動作するビジネスロジックに注目しています。Workplace Technologyは、Eclipseを使いGUI構築に活用しています。つまり、クライアント側でEJBを使うというアプローチです。これまでにオープンソースのモデルとして、Eclipseのプラグインをバンドルして提供するという試みもしました。クライアント側から送信モデルを実証化するものです。

ITmedia CloudScapeをApache Foundationに寄与した目的を聞かせてください(関連記事)。DB2との関わり、そしてMySQLやPostgreSQLなどの現状を意識しているのでしょうか。

ファーガソン CloudScapeはSQL、JDBCサポートという点ではDB2と同じです。しかし、XMLやストアドプロシージャサポートの点ではDB2の方が優れています。パフォーマンスやスケーラビリティの点でも異なります。

 Javaとリレーショナルデータベースは深く関わり、いっそう成長するためには重要だと考えています。Webサービスの側面でも、C#、ODBCとの関わりがあります。健全的によい方向性が見込めるとして、コミュニティへ寄与したのです。特に、MySQLやPostgreSQLの状況が作用しているわけでもありません。また、公開に至る過程で影響したわけでもありません。

ITmedia IBMはこれまでにも数々の標準化を放出しています。アプリケーション開発の現場では、OSS利用やオープンスタンダードを採り入れるだけで満足しないのでしょうか。

ファーガソン SOA実現であってもOSS利用だけで十分だというユーザーもいます。しかし、JavaとBPEL、Tomcat、CloudScapeを利用していれば、IBMのユーザーになるかもしれません。そして、Tomcatベースのアプリケーション構築ユーザーの中では、WebSphere Studioの使い勝手が定評です。より拡張性を求めれば、IBMの顧客となる可能性が多いにあると考えているのです。

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