SECからIPOの承認を得たGoogleだが、同社がYahoo!のように成功するか、Netscapeのように崩壊するかはIPO調達資金の使い道で決まるだろう。あるアナリストは、同社がNetscapeのように行動していると懸念する。(IDG)
米証券取引委員会(SEC)は8月18日、GoogleのIPO(株式公開)を承認した。
「承認をすぐに有効にするようにとのGoogleの要求が認められた」とSECの広報官アミー・ベスト氏。
予想より1日遅れではあったが、Googleの登録が有効となったことで、同社は投資家候補からの株式への入札を締め切り、引受会社に入札の引き受け、株取引の開始を許可できる。
Googleからのコメントは現時点では得られていない。
同社は18日早く、IPO Webサイトに、初めに目論見書に記した公募価格「108〜135ドル」を「85〜95ドル」に引き下げたとの通知を掲載した(8月18日の記事参照)。
同社は19日、売り出し株価を1株85ドルとすることを認めた。
Google株はNasdaq市場で、「GOOG」のティッカーシンボルで取引される。同社は、約1410万株を売り出し、13億ドル程度を調達したいと話していた。
公募価格の引き下げとともに、同社は期待の高い、そして異例の入札方式において多数の障害にぶつかっている。
同社は、過去に登録されていない株式を従業員とコンサルタントに発行したことで米証券法に違反した可能性があることを明らかにし、SECとカリフォルニア州当局の注目を引いた(8月6日の記事参照。同社は問題となる株式を買い戻す(その費用は2590万ドルに上る可能性がある)ことでこの問題を解決すると提案しているが、8月5日にこの件に関する非公式の調査が開始されたことを発表している。
非公式の調査は今も続いているとSECのベスト氏は語る。
もう1つ議論の中心となっているのが、IPO申請前の4月にPlayboy誌が行ったGoogle創設者のインタビューだ。今月発売された9月号に掲載されたインタビュー記事は、IPOが近い企業の幹部が会社の見通しを語ることを禁じる1933年証券法に違反した可能性があるとの懸念を読んでいる。同社は、このインタビューは同法に反するものではないとの考えを表明している。
こうしたIPOプロセスのミスにより、Googleのイメージがどれだけ損なわれたかについて、世間の見方はさまざまだ。
一般の消費者はこうしたミスをあまり心配しないはずだ。最悪の場合でも、検索などのインターネットサービスを競合他社のものに切り替えればいいのだから――とEnderle Groupの主席アナリスト、ロブ・エンダール氏は指摘する。だがGoogleの「Search Appliance」購入者など、企業顧客にとっては心配の種になるはずだという。この製品はハードとソフトを組み合わせて、Googleの検索機能を企業に提供するというもので、価格は3万2000ドルから数十万ドル。
「IPOのやり方はひどいものだ。これにはGoogleの経営手法が反映されている。企業顧客は製品を買ったら、サポートとある程度のサービスを受けられるものと期待する。Googleがそれを提供できなかったら、企業が購入の際に考慮しなくてはならないリスクのレベルが上がる。これまでのミスは、Googleのような企業においては前例のないものだ。これは、企業顧客が注意して観察すべき点だ」(エンダール氏)
IPOプロセスのミスは、それほど深刻でないと考える向きもある。「異例のIPO方式はかなり話題になっており、これはGoogleの開拓者としてのブランドイメージにプラスになる」と話すのはJupiter Researchのアナリスト、デビッド・シャッツキー氏。「こうしたミスについてはいろいろ書かれているが、結局(IPOは)消費者とほかのGoogle顧客のためになるばかりだろう」
「Playboyのインタビューを受けたことがミスなら、過去3年間に企業幹部が起こしたミスの中では最も害のないものだ」と同氏は付け加えた。
もちろん、株式公開の最終的な目的は資金を調達することだ。GoogleはIPOによる調達資金の使い道については固く口を閉ざし、IPO目論見書では販売・マーケティング、研究開発、一般管理費、設備投資、買収など一般的な用途を上げている。
「Googleは戦略的計画と調達資金の使い道については非常に口が堅いため、IPO後すぐに企業顧客や消費者に目に見える影響は出ないと考えていい。同社がどんな変更を計画していようと、それはおそらく既に計画済みのことであり、あらかじめ定められた予定に従って進められるだろう。だが製品自体に目立った変更はないと思う」とシャッツキー氏は語り、あとは市場からGoogleの戦略展開が見えるように、IPOプロセスが完了するだけだ
Googleは自社の技術プラットフォーム、インフラ、ブランド名、知的財産、莫大なトラフィックといった資産を活用することに注力すべきだと同氏は指摘する。「同社は賢明に取り組みを選ぶだろう。同社が独自の検索力を大いに活かせるやり方で検索機能を提供できなければ、世界に新しいポータルは不要だ。同社は本当に優れた少数のアイデアという強みを土台にしている」
GoogleがIPO調達資金をどう使うかが、同社がライバルのYahoo!のように成功するか、あるいはインターネットの超新星だったNetscapeのように崩壊するかを決めることになるとエンダール氏。「成熟した企業の場合、製品を構築するための研究開発にかなりの力を注ぐことが予測される。そうでない企業の場合は、買収に向かう可能性がある。Netscapeがそうだった」
GoogleのIPOのやり方から、エンダール氏は同社の今後に懐疑的な見方をしている。「同社はNetscapeのように行動しているため、もっと確実な投資ではなく、臨時収入や企業の買収に多くの資金を費やすのではと懸念している。IPOプロセスは成熟とはほど遠いGoogleの姿を見せてくれた」
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