第3回 バックアップシステムを構築する●後編バックアップ、基礎の基礎を知る(2/2 ページ)

» 2004年08月25日 15時00分 公開
[伊勢雅英,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 この場合、フルバックアップ時の92.6MB/secを確保するには、LTO Ultrium Generation 1(以下、LTO-1)で7台、LTO Ultrium Generation 2(以下、LTO-2)で4台が必要になる。同様に増分バックアップ時の27.8MB/secを確保するには、LTO-1で2台、LTO-2で1台が最低ラインとなる。

 次に、バックアップに必要なテープカートリッジの本数を算出する。世代ごとの本数は、ドライブ数の整数倍で、かつバックアップ容量を満たすものになる。つまり、フルバックアップは2000GBなので、LTO-1(1本で100GB)ならば7の倍数となる21本、LTO-2(1本で200GB)ならば4の倍数となる12本である。同様に、増分バックアップは200GBなので、LTO-1ならば2本、LTO-2ならば1本となる。フルバックアップは2世代、増分バックアップは6世代(月曜〜土曜の6日分)とるので、バックアップに必要なテープカートリッジの総数はLTO-1で54本、LTO-2で30本と算出される(図2)。これが、テープライブラリに求められるカートリッジスロット数の最低ラインとなる。

フルバックアップ
  ドライブ数 各世代の必要本数 世代数 合計本数
LTO-1 7 21 2 42
LTO-2 4 12 2 24

増分バックアップ
  ドライブ数 各世代の必要本数 世代数 合計本数
LTO-1 2 2 6 12
LTO-2 1 1 6 6

テープライブラリの条件
  ドライブ数 スロット数
LTO-1 7 54
LTO-2 3 30

図2●バックアップに必要なドライブ数とテープカートリッジの本数

 ここで、テープライブラリの条件と日本ストレージ・テクノロジーの製品を照合してみると、L40テープ・ライブラリー(以下L40)とL80テープ・ライブラリー(以下L80)が該当する。L40は最大搭載可能ドライブ数が4台、カートリッジスロット数が40である。LTO-2であれば4ドライブ、30カートリッジでよいため、L40でも対応できる。一方のL80は、最大搭載可能ドライブ数が8台、カートリッジスロット数が80だ。LTO-1では7ドライブ、54カートリッジを必要とするが、L80ならばLTO-1、LTO-2ともに対応できる。

 新規でテープライブラリを導入する場合、いまさら旧世代のLTO-1を選択する理由はない。従って、LTO-2を搭載したL40が今回のバックアップ条件を最も満たしているように思われる。

 ただし、バックアップ環境への投資は決して安いものではないので、十分に将来を見越して機種を選定しなければならない。つまり、現時点で最低限バックアップをとれればよいのではなく、少なくとも2〜3年先のバックアップにも対応できるように機種を選定する必要があるわけだ。

 例えば、L40はLTO-2使用時に10カートリッジの余裕があるが、企業の扱うデータ量が6カ月あたり2倍のペースで増えている現状(IDC Japan調べ)を考えれば、カートリッジ数があっという間に上限に達することは想像に難くない。したがって、今回のケースでは、30カートリッジからさらに50カートリッジの余裕を持つL80(LTO-2ドライブ搭載)を導入するのが得策といえる。一見すると過剰にも思える仕様だが、少々控えめに見積もってデータ量が年間50%増大したとしても2年半で最大数に達するので、決して無駄な投資にはならない。

L80テープ・ライブラリー 最大8台のLTO-1、LTO-2、SDLT 320ドライブ(これらの組み合わせも可能)を搭載可能なL80テープ・ライブラリー。カートリッジスロット数は最大80本である

市販の高機能バックアップソフトウェアを選択

 次に、バックアップソフトウェアの選定を行う。単にテープドライブにデータを書き込むだけならば、OSに付属のバックアップソフトウェアや標準コマンドでも対応できる。ただし、これらは原則としてテープライブラリをサポートしていないため、複数ドライブによる並列アクセスやテープカートリッジの自動交換を行えない。また、スケジュール設定や世代管理などの機能がきわめて貧弱である。したがって、テープライブラリを利用したバックアップ環境では、市販の高機能バックアップソフトウェアの利用が前提となる。

 主要なバックアップソフトウェアには、VERITAS Softwareの「NetBackup」、LEGATO Softwareの「NetWorker」、BakBone Softwareの「NetVault」、Computer Associatesの「BrightStor ARCserve Backup」などがある。ここでは、OSやデータベースアプリケーションなどがこれらのバックアップソフトに対応しているかどうかを調査する。また、必要に応じてLANフリーバックアップのデバイス共有を行うか、NAS/NDMPデバイスから直接バックアップを行うかなども調べる必要がある。

 「StoregeTekは、バックアップソフトウェアを開発、販売する主要なベンダーと密接な協力関係にあります。このため、弊社のテープライブラリ製品は、主要なバックアップソフトウェアで標準的にサポートされています」(小田切氏)。

事前のリストア検証も不可欠

 最後に、バックアップデータのリストア(復旧作業)について注意点を述べておく。本来、復旧作業はやらなければそれに越したことはないのだが、不慮の事故などでデータが破損したときに備え、速やかに対応できる体制を常日頃から整えておかなければならない。

 リストア時には、システムを完全な状態に復旧できないという問題がしばしば発生する。例えば、データベースなどのアプリケーションでは、データ領域、ログ領域、管理情報、アプリケーションのモジュール自体がそれぞれ別のパーティションで管理されていることが多い。このため、バックアップデータの欠損やファイルの整合性の欠如などにより、リストアしたファイルから正常にシステムを復旧できない可能性がある。

 次に、予想していたよりも多くのリストア時間を必要とする問題も発生しやすい。ファイルシステムに対するリストアは、ファイルインデックス情報(UNIX系OSならばiノード)の更新がファイルの書き込みごとに入るため、バックアップ時よりも時間がかかってしまう。特に細かいファイルが点在している条件下で発生しやすく、「バックアップ時の3倍くらいの時間を要するケースもある」(小田切氏)という。

 こうした問題に対処するには、事前のリストア検証が不可欠だ。リストアに時間的な制限があるなど、とりわけ厳しい条件が課せられている場合には、実際にリストアを行い、所望の時間内に確実にデータを復旧できるかどうかをきっちりと検証しておかなければならない。

 多くのユーザーにとってリストアの機会はきわめて少なく、データのバックアップを行っただけでついつい安心してしまいがちだが、リストア時にデータを完全に復旧できてこそのバックアップであることを肝に銘じていただきたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ