Longhornの機能縮小でMicrosoft Business Frameworkも延期に

Microsoftは先日、Longhornのロードマップを変更し、新ストレージシステムの「WinFS」を切り離すという方針を明らかにした。これにともない「Microsoft Business Framework(MBF)」のリリースにも影響が生じている。

» 2004年09月02日 21時23分 公開
[IDG Japan]
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 新ストレージシステムの「WinFS」をLonghornから外し、これを無期限に延期したMicrosoftは、WinFSに密接にリンクした新しいプログラミングレイヤ「Microsoft Business Framework(MBF)」のリリースも再延期した。

 その結果、開発者はMBFの登場までさらに長く待たされることになる。MBFは基盤レベルのコードの一部をアプリケーションからOSに移すことにより、Windowsプラットフォーム向けのビジネスアプリケーションの開発を容易にする。MBFは.NETフレームワーク上に置かれ、受注処理や総勘定元帳といった基本的なビジネス機能を提供する。開発者はこれらの機能をベースとしてアプリケーションを構築できる。

 MBFのリリースが延期されたのは、今年に入ってこれで2回目となる。Microsoftは当初、このフレームワークを「Visual Studio 2005」と一緒に来年出荷する予定だった。その後この予定は変更され、Microsoftは5月に、MBFはLonghorn(特にWinFS)と共に提供すると説明していた。

 Microsoftのスポークスマンは、「現在の計画は従来と同様、WinFSと同時期にMBFを出荷するというもの。WinFSとLonghornを切り離すという決定の結果、MBFチームではMBFを早期にリリースすることが可能かどうか検討中だが、現時点では何も約束できない」と話している。

 今回の延期に加え、Microsoftが新しい出荷目標を示すことができないとう事実は、MBFを待っていた開発者にとって頭の痛い話だ。業界関係者の間では、これでライバルのJavaプラットフォームが優位になると指摘する声もある。というのも、MBFに近い技術がJava開発者には既に提供されているからだ。

 オランダのハーグにあるSolutions Designのシニアソフトウェアエンジニア、フランス・ボーマ氏は、「この技術は何年も前からJavaで利用可能だ。.NET開発者にとってはうらやましい限りだ」と話している。同氏は.NET開発者で、MicrosoftからMVP(Most Valuable Professional)の称号を与えられている。

 もちろん現在でも、.NET開発者がビジネスアプリケーションを作成することはできる。しかし時間とコストがかかり、開発でミスを犯すリスクも大きい、とボーマ氏は指摘する。「この状況は改められるべきだ。フレームワークが用意され、開発者が基礎部分ではなくアプリケーション本来のロジックに集中できるようにしてもらいたい」(同氏)

 マサチューセッツ州ケンブリッジのForrester Researchで副社長兼リサーチディレクターを務めるマイク・ギルピン氏は、Microsoftがビジネスアプリケーション向けに統一的な開発フレームワークを提供していないのは問題だとしている。しかしその意味では、Javaが.NETよりも優れているわけではないという。「Java開発者が低レベルのコーディングをしなければならないと愚痴をこぼしているのを聞いたことがある」とギルピン氏は話す。

 だが重要なのはツールだ。ギルピン氏によると、例えばBEA Systemsの「WebLogic Workshop」のユーザーは、低レベルのコーディングをあまり行わないという。「しかし基本的なJava IDE(統合開発環境)でEJB(Enterprise JavaBeans)だけを使って開発しようとした場合、多くの低レベルコーディングを行わなければならない」と同氏は語る。

 MicrosoftはMBFをあまり重視していないのではないか、とボーマ氏は疑っている。「十分な人員を投入しなければ開発は進まない」と同氏。

 ワシントン州カークランドにあるDirections on Microsoftの主席アナリスト、グレッグ・デミチリー氏によると、MBFの開発に障害が起きているという。「計画をどうするかでもめているようだ。Microsoft社内の混乱や計画の変更が、Javaをはじめとするライバルにチャンスを与えるのは間違いない」と同氏は話す。

 しかしMBFの遅れが続くことは、必ずしもすべての人にとって悪いことではない、とデミチリー氏は指摘する。「多くのサービスプロバイダーにとっては、Windowsプラットフォーム向けの基盤を提供することが主要な収益源であり、彼らはMBFのリリース延期で得をする立場にある。つまり、Microsoftには多くの方面から圧力がかかっているのだ」

 MBFは、Windowsプラットフォーム向けに開発を行うサードパーティーソフトウェアベンダーや企業内開発者にとって重要な技術であるだけではない。Microsoftによると、「Project Green」のコードネームで知られる同社のERP(Enterprise Resource Planning)およびCRM(カスタマーリレーションシップ管理)アプリケーションの新ファミリーも同フレームワークに依存することになるという。

 Microsoftは最近、Project Greenの開発作業をペースダウンし、既存製品に注力していることを明らかにした。同社のダグ・バーガム上級副社長は6月、Project Greenの開発要員を200名から70名に削減したと発表した。最初の製品が登場するのは早くても2008年の見込みだからという理由による。Microsoftは当初、Project Greenの最初の成果を今年末にも出荷する予定だとしていた。

 2006年に出荷される予定のLonghornには、グラフィックサブシステム「Avalon」をベースとした新しいユーザーインタフェースおよび「Indigo」と呼ばれる新しい通信サブシステムが搭載されるが、WinFSは組み込まれない。またMicrosoftは先週、AvalonとIndigoのサポートに加え、「Longhorn WinFX」アプリケーションプログラミングモデルのサポートをWindows XPおよびWindows Server 2003に追加すると発表した(8月31日の記事参照)。

 Microsoftのスポークスマンによると、同社ではMBFの早期採用パートナー向けに初期のMBFコード(いわゆるアルファコード)を年内に提供する予定だという。

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