日本IBM、開発研究所が顧客サポートに乗り出す

日本IBMは、開発研究所が直接顧客サポートに乗り出す事業強化策を発表した。システム導入の「前」と「後」の両面で品質向上や障害解決の迅速化を図るのが狙い。

» 2004年09月06日 20時05分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 日本アイ・ビー・エムは9月6日、都内のオフィスで記者発表会を行い、ソフトウェアの品質を高める取り組みを柱とした事業強化策を明らかにした。10月1日から神奈川県大和市のIBMソフトウェア開発研究所が同社ミドルウェア群を組み合わせたソリューションの検証や導入後のサポートに直接乗り出すもので、システム導入の「前」と「後」の両面で品質向上や障害解決の迅速化を図るのが狙い。

 日本IBMでソフトウェア事業を担当する三浦浩執行役員は、「企業は、顧客に対するサービス提供の迅速化を迫られている。そのためには最新ミドルウェアの組み合わせによるシステムの短期導入が不可欠となっている」と話す。

 北米や欧州の開発拠点では、既に「システムハウス」と呼ばれるミドルウェアのための検証センターが開設されている。アジアで初となる専門チームは、当初10〜15人の開発者で構成され、5ブランド(WebSphere、DB2、Lotus、Tivoli、Rational)製品群の統合テストや顧客の具体的な使われ方に即した品質検証を担当する。大和研究所の開発者はもちろん、海外開発研究所とも連携することで、これまで日本IBMが経験したことがない先進的なシステム案件でも迅速な品質向上が期待できるという。三浦氏によれば、官公庁と製造業の顧客に向けた支援が計画されているという。

重要な障害解決を迅速に

 システムハウスが導入前だとすれば、導入後の品質向上が期待されるのが、製品開発部門との協業による製品サポート体制の強化だ。

 IBMでは、製品サポートの体制をレベル1からレベル3まで整えている。レベル1はコールセンターが拠点となり、その場で解決を図ったり、ドキュメントを調べてあとから解決したりするもの。大半はこのレベル1で処理されるが、問題はさらに複雑で困難な障害のケースだ。そのため、海外では開発研究所で障害を再現することによって、その原因を突き止め、解決を図るレベル2の体制が整えられている。10月1日からは同様のサポート体制を敷き、国内にも「IBMミドルウェア・カスタマー・サポート・センター」を開設、現状約2割程度を占めるクリティカルな問題の解決に要する時間をこれまでの2/3程度に短縮化したいとしている。当初、20名強の開発者でスタートするが、2005年末までには70名まで引き上げる予定。ちなみにレベル3は、製品開発チームが直接問題解決にあたる体制。

アーキテクトも増員

 同社ソフトウェア製品を熟知する「ソフトウェアITアーキテクト」を増員し、システム導入につなげる提案活動の強化策も明らかにされた。

 多くの既存ITシステムは、アプリケーションアーキテクチャがばらばら、レガシーもあれば、Webアプリもある。統一的な考え方に欠け、採用されているテクノロジーもさまざまだ。顧客のニーズを把握し、外部環境の変化に即応できる「オンデマンド」な企業へのロードマップを提示しながら、ITシステムを再設計できるアーキテクトが求められている。ITシステムが広範囲かつ高度に企業を支えるようになる中、システム技術者の細分化が進んでいる結果でもある。

 「顧客が求めているビジネス上の価値を理解したうえで、テクノロジーを提供してくれるベンダーが理想だ」と三浦氏。今年初めに現職に就くまではトヨタ自動車を8年間担当した彼らしい言葉だ。現在35名という陣容だか、日本IBMの他部門からも募り、100人規模に引き上げたいとしている。

 なお、日本IBMのソフトウェア事業部は今年1月、ミドルウェアを組み合わせたソリューションの専門家集団へと再編されていたが、顧客への訴求、ISVの獲得などで一定の成果が得られたとして、この日、ブランドを再び活性化させる人事も明らかにされている。実際にはブランドを担当する事業部長の復活といえるが、日本IBMでは「ソリューションとブランド、両輪の強化」としている。

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