「The Netに新しいサービスレイヤを」Intel CTOが提案するネットの未来(3/4 ページ)

» 2004年09月13日 05時58分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 「IPv4はすでに広範囲に普及しているため、インターネットが突然変化することは不可能でしょう。IPv6への移行は、かなりの時間がかかります。現在のインターネットを半導体技術の進歩で加速したり、メモリを増強したり、通信速度を高速化したとしても限界があります。アーキテクチャによる限界があるからです。ところが、今からの入れ替えは不可能です。現在のTCP/IPの上に、新しいネットワークレイヤを載せていく事が解決策になるでしょう(サーフ氏)」

The New Netによる解決法

 話を少し整理しよう。

 サーフ氏自身が指摘しているように、現在のインターネット(TCP/IP)にはアーキテクチャ上の限界が訪れようとしている。しかし、普及しているが故に、その仕組みを再構築することは不可能だ。従って、TCP/IPレイヤではなく、別レイヤに新しい仕組みを構築する段階にやってきているということだ。

 TCP/IPは物理ネットワークの上に標準的な手順を載せることで、アプリケーションが何も知らなくてもネットワークを扱える使えるようにした。そこで、インターネットが生まれたときのように、TCP/IPの上に新しいオーバーレイを作ることで解決しよう。それがゲルシンガー氏の言う「The New Net」である。

新しいサービスレイヤを提案 インターネットの上にサービスレイヤを載せ、その上でサービスを提供することを提案

 「既存のネットの上にコンピューティングとストレージをネットの上に載せていくのです。性能や問題を解決するため、ネットワークの帯域を拡げるのではなく、サービスを拡大するという考え方ですとゲルシンガー氏は説明する。ネットワークの中に、強力な演算能力を持つサービスを配置し、そのコンピューティングパワーで問題を解決しようというのだ。

 「たとえば信頼性の問題は、ネットワーク内のサービスノードが自己診断し、自己治癒する。瞬間的なトラフィックがあった場合、自動的にネットワークの状況変化を検知し、トラフィックの分散を自動的に行う。セキュリティも自己判断し、ウイルスやワームの拡散を防止する。国によって異なる規制や法律がある場合は、サービスの中にそれらを組み込むことで吸収させる。他にもあらゆる場面に有効だ」とゲルシンガー氏。

ワールドワイドで展開しているPlanetLab ワールドワイドで展開しているPlanetLab。現在22カ国、194サイトが参加している

 実際にIntelはThe New Netを構築するためにPlanetLabという組織を立ち上げ、TCP/IPとアプリケーションの間に入るサービスレイヤの開発を行っている(http://www.planet-lab.org/)。PlanetLabはサービスノードを構成するため、最初の100台をIntelが提供することで2002年に始まった。今はそれが440ノードに増加し、現在も研究期間や大学の参加が続き、増加している。現在は日本を含め22カ国、194のサイトがPlanetLabに接続しているという。

 PlanetLabではノードを構成するサーバの上に仮想マシンマネージャを動かし、その上にサービスを実行する仮想マシンを複数、アタッチできるようになっている。標準で実装されているサービスはサービス仮想マシン自身のマネージャで、そのノードで動かすネットワークサービスを管理する機能を持つ。

PlanetLabのサービス構造 PlanetLabのサービス構造。サービスVMを動かすサーバ同士の分散処理がベースになっている

 ノードで動作させるサービスは、明示的に立ち上げることも可能なほか、ネットワークを通じて別ノードにサービスを依頼したり、別ノードとの間で同じサービスを手分けする仕組みなどが仮想マシンマネージャに実装されているようだ。他ノードで動作するサービス仮想マシンを間借りするなどして、動的にサービスの枠組みを組み替えることができる。

動的なサービス構成を行う例 動的なサービス構成を行う例。アクセスの集中に対してトラフィックを最適化するサービスを組み込める

 つまり、動的に状況に適応する機能を持つ分散サービスレイヤをTCP/IPネットワークの上に被せている、というわけだ。

動的サービスの例その2-1 PlanetLabにつながったストリームサーバに同じ地域から同時アクセスが多発すると……
動的サービスの例その2-2 自動的にネットの輻輳を検出し、PlanetLab上の別のサーバがキャッシュプロキシとして動的に構成される

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ