PlanetLabのサービス仮想マシン上ではあらゆるサービスを実行できるため、“これができる”という決まり文句は存在しない。言い換えれば、コンピューティングパワーとストレージの組み合わせで実現できることは、なんでもできるということだ。ゲルシンガー氏は二つの例を挙げた。
ひとつはPlanetLabのノード上で、インターネットを通じたサイバーアタックを監視するサービスを実行するというもの。アタックの種類や攻撃元、攻撃先の地域などの情報を、各ノードが少しづつ分担しながら収集する。こうしたサービスを世界中のノードで実行、結びつけておくことで、グローバルな視点でのサイバーアタックの傾向分析などを素早く行えるわけだ。もちろん、他の手法でも同様の機能を実現できるだろうが、PlanetLabならば分散サービスのレイヤが存在するため、容易に実現できる。
もうひとつの例は、適応型のトラフィック制御サービスを実行する例だ。たとえばメディアストリーム配信をインターネットで行うとき、先の例と同様にサービスノードのネットワークを利用し、輻輳の発生などの問題を分散収集。さらにトラフィックやパケットロスの状況を自動判別し、ノード自身がプロクシサーバのように動作するよう動的にネットワークを再構成。同一地域からの同じストリームへのアクセスを、自動的にまとめて最適化を図る。
これは言い換えると、Akamai Technologiesのサービスに似た分散型のコンテント配信ネットワークを、状況に応じて動的に構成するサービスとも言えよう。ゲルシンガー氏自身も「Adaptive(適応型)Akamai」と表現していた。
「この技術を用い、我々はHewlett-Packardやパブリック・ブロードキャスティング・サービスと共に、インターネットを用いたHD映像の配信サービスを実現させる準備を進めている」とゲルシンガー氏。
確かにパワフルな機能を比較的容易に実現できるPlanetLabの仕組みだが、果たしてこれがインターネットの上に被さるものなのか? 今ひとつシックリと来ないという読者も多いだろう。これは本当にインターネットが向かう方向なのか? 単なるパブリックな分散サービスプラットフォームというだけなのではないか?
しかしこう考えればいいかもしれない。
インターネット(The Net)はコンピュータの通信を物理ネットワークの上で可能にするオーバーレイであるTCP/IPで実現された。今やTCP/IPはコンピュータ通信の基盤である。今度は、その基盤の上に新たな誰もが参加できるネットワークをThe Netの時と同じようなプロセスで作ろうとしている。これがゲルシンガー氏の言うThe New Netだ。
「世界中どこででも均質なサービスを享受できる。そんなネットワークを作るため、インターネットの変革の一翼を担って欲しい。PlanetLabへの参加をお願いしたい」とゲルシンガー氏は呼びかけた。
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