IBMのスパコン、地球シミュレータ超え最速に

IBMの1万6000プロセッサ版BlueGene/Lは、地球シミュレータを上回る36.01テラFLOPSの性能を達成を達成した。だが、次のスパコンTop500で1位になるかどうかはまだ分からない。(IDG)

» 2004年09月29日 16時44分 公開
[IDG Japan]
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 2002年以来初めて、日本の地球シミュレータが世界最速のスーパーコンピュータの座を奪われた。

 IBMが実施したベンチマークによると、同社が構築したBlueGene/Lの1万6000プロセッサ版が9月16日、ライバルのNECが構築した地球シミュレータに勝利した。

 「これはわれわれにとって、大きな影響のある発表だ」とIBMのディープコンピューティング担当責任者デイブ・トゥレック氏。「最速スーパーコンピュータとしての彼ら(NEC)の天下は終わった」

 半年ごとに発表されるスーパーコンピュータTop 500リストで処理能力測定に使われるLinpackベンチマークで、BlueGeneは持続的に36.01テラFLOPSの性能を達成した。6月のTop 500リストで、地球シミュレータのベンチマーク結果は35.86テラFLOPSだった。

 このBlueGeneシステムはミネソタ州ロチェスターにあるIBMの施設で構築された。同社が2005年初めに米ローレンス・リバモア国立研究所に納入する1億ドルのシステムのプロトタイプで、8ラックで構成される。ただし、同研究所に納入されるスーパーコンピュータは64ラック構成で13万個のプロセッサを搭載し、ピーク時の性能は推定360テラFLOPSと、ロチェスターのシステムよりかなり大きくなるとトゥレック氏は語る。

 世界最速スーパーコンピュータの座を長きにわたり確保してきたことは、NECにとって誇りだった。同社はひところ、454%の関税により米国市場から実質的に締め出されていた。

 地球シミュレータは2002年、気象の変化をシミュレートするため、海洋科学技術センター向けに5年の歳月と500億円をかけて構築された。64個のキャビネットに5120個のプロセッサが搭載され、50×64メートルの部屋に置かれている。

 8ラックのBlueGeneは大きさわずか30平方メートル、消費電力は216キロワットで、地球シミュレータ(6000キロワット)と比べると非常に小さいとトゥレック氏は説明する。

 IBMのベンチマーク結果は、同社ばかりでなく米国にとってもビッグニュースだとローレンス・バークレー国立研究所のコンピューティング科学担当アソシエイトディレクター、ホースト・サイモン氏。同氏はTop500リストの管理担当者でもある。「米企業が米国の技術で米国のサイトのためにナンバーワンの地位を奪還したことは、重要な政治的変化だ」と同氏はメールによる取材の中で述べている。

 トゥレック氏によると、IBMはBlueGeneのコンポーネントを使って多数のシステムを構築するつもりだ。これらのシステムは、米アルゴンヌ国立研究所オランダの天文学組織ASTRON、日本の独立行政法人・産業技術総合研究所の生命科学情報研究センターなどに提供される。

 ただし、BlueGeneが11月に発表される次のTop500リストで1位を取るかどうかはまだ分からない。

 IBMは、40テラFLOPS級を達成できるかもしれない多くのシステムに関して顧客と協力しているとトゥレック氏は語る。「当社はこのレベルに到達するための取り組みを進めている。ライバルも同じことをやっているとしか思えない」

 米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究所の、1万240個のプロセッサを搭載したSGI製スーパーコンピュータ「Project Columbia」もそうしたライバルの1つになるだろうとサイモン氏は語っている。

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