スーパーマーケット発展の歴史から考える今後の小売ビジネス特集:ITが変革する小売の姿(1/2 ページ)

これまで日本の小売ビジネスを支えてきた仕組みをスーパーマーケットの観点から振り返り、将来の在り方を展望する。

» 2004年10月07日 09時12分 公開
[松吉章,アール・エス・アイ]

 日本の小売業者はITを活用して、どこまで業務を革新できるのか。商品計画から仕入れ、物流、販売データの収集、新たな需要予測と商品計画の立案という小売業における業務の流れは、ITを活用したサプライチェーンとして高度化が求められるようになっている。今回は、スーパーマーケットを中心に、これまで日本の小売ビジネスを支えてきた仕組みを振り返り、将来の在り方を展望したい。

昭和30年代、米国スーパーの手法を輸入

 昭和30年代、米国からセルフサービスという合理的な販売手法が導入され、その後、全国各地にスーパーマーケットが展開されるようになった。スーパーマーケットは、1つの店舗であらゆる商品を購入できるいわゆるワン・ストップ・ショッピングの原型。生活商品の品ぞろえの充実や、棚ラベルに商品名や価格、容量などを明記して商品を並べることが主な特徴となる。

 また、店舗では、客が一定のルートを歩いて買い物をするよう誘導する「ワン・ウェイ・コントロール」と呼ばれるレイアウトが施された。一方、経営者は、部門別に利益を管理したり、多店舗展開によるチェーン・オペレーションや集中仕入といった手法を用いながら、効率的なマネジメントを図る。さらに、品ぞろえやサービスの拡大に伴い、量販店(GMS)と呼ばれる形態の店舗も出現した。

 スーパーマーケットの経営手法は、小売業界全体に影響を与え、競争を激化させた。伝統的な商店は衰退し、他分野からの小売業への進出を促した。小売業界での「第一次ベンチャー時代」到来の引きがねとなった。

 こうしたチェーン小売業者は、米国の手法を取り入れながら、高度成長という時代背景にも助けられてさらに拡大していった。生活レベルの向上により、需要が膨らみ、供給がこれを追いかける供給サイド優位の経済環境がベースとなっていた。結果として、多様な商品が安く大量に出回り、消費生活も豊かになっていった。

 そして、昭和50年代から60年代にかけて、日本の小売業界では、好景気を背景に出店、価格、市場シェアで息をつく暇もない競争が繰り広げられた。だが、ここで突然にもバブル崩壊の幕が引かれる。後に、「失われた10年」とも呼ばれる不況に、小売業界全体は苦しめられることになっていった。

過去から学んだ現在の問題点

 日本のスーパーマーケット発展の経緯について概観したところで、今度は、同じテーマについて小売業界の内側からの視点で考えてみたい。

 昭和の高度成長期からバブル崩壊までの間、小売業が成長できた要因は2つ。まず、需要が供給を上回っていたこと。経済大国化への過程で、消費者も旺盛な購買活動を行った。

 もう1つは、小売業のオペレーション技術の向上が挙げられる。スーパーマーケットやコンビニエンスストアをはじめとした貪欲な業態開発だけでなく、商品や物流の緻密なコントロールなど、日本的なキメの細かい管理手法により、生産性が飛躍的に向上した。

 特に、商品のバラ単位のオペレーションなど、日本で高度に発展した技術が成長を支えた。管理の質の高さは世界的にも例がないほどだ。消費財メーカーの欠品率の世界比較でも、日本企業は圧倒的に優位に立っている。

小売業の打つ手は?

 だが、バブル崩壊以降、日本の小売業者はそれまでのように成長できなくなった。背景としては、需要が供給を上回る時代が終わり、逆に、供給過剰の経済環境へと変化していったことが挙げられる。デフレ経済の中、リストラや所得の減少など、消費者の心理的なプレッシャーは大きく、本当に欲しいものだけをさまざまな情報ソースを使って選び出し、購入するといった考え方が基本になった。

 消費者の変化に今後の小売業者はどのように取り組むべきか。

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