CPFRが追求する小売プロセスITが変革する小売の姿(1/2 ページ)

前回、Wal-MartとWarnerLambert間のCFARについて紹介した。Wal-MartはかつてのQRにおける取り組みと同様に、CFARというビジネスモデルを自社に止めることなく、実験結果を米国の流通業界の標準化機構であるVICSに提供した。

» 2004年10月25日 12時19分 公開
[舟本秀男,舟本流通研究室]

 前回、Wal-MartとWarnerLambert間のCFARについて紹介した。Wal-MartはかつてのQRにおける取り組みと同様に、CFARというビジネスモデルを自社に止めることなく、実験結果を米国の流通業界の標準化機構であるVICS(Voluntary Inter-industry Commerce Standard)に提供した。

 VICSは、Wal-MartのCFARを業界標準モデルにすべく、プロセスモデルを開発した。このとき、(需要などの)予測だけでなく、計画の要素を加える必要があるとの意見が多数を占め、CFARはCPFR(Collaborative Planning Forecasting and Replenishment)へと名称が変更された。

CFARから業界標準のCPFRへ

 CPFRは、製造と販売が協力しながら(Collaborative)、ビジネス/商品販売計画を立案し(Planning)、商品別販売予測を調整しあい(Forecasting)、商品の補充作業を行う(Replenishment)ための取り組みだ。Wal-Martとしては、CFARをCPFRへと進化させることにより、サプライチェーン全体で在庫水準を最適化できるという思惑があったと考えられる。

CPFRを推進するVICSは、CPFRは「インターネット技術とEDI技術を活用し、サプライチェーン間のコストを劇的に削減し、かつ消費者へのサービスレベルを大幅に向上させることを目的としたビジネスモデルである」 と規定している。

次世代SCMモデル

 今まで、「どの商品が幾らで、どの店で、どれだけ売れたのか」という過去の販売情報や、「現在どれだけの在庫が配送センターや店舗にあるのか」といった情報は、POSなどを通じて小売企業と取引先の間で共有されていた。

 しかし、「今後どれだけ販売しようとするのか」という未来の情報、すなわち販売/出荷の予測情報を共有することはなかった。なぜなら、販売を予測するということは、特売や店舗の統廃合、商品の切り替え計画など、企業戦略にかかわる重要な情報を相互共有することを意味するからだ。そのため、実際には、企業間で予測情報の共有体制を構築することは難しかった。

 CPFRはその壁を乗り越えようとする取り組みだ。企業間コラボレーションを高め、未来情報である需要/販売/発注予測をもオンライン上で共有し、消費者需要に適合した商品補充を、製造・物流・販売の各業者が協働で行おうとする次世代のビジネスプロセスと言っていい。

CPFRビジネスモデル

 CPFRはテクノロジーというよりは、むしろビジネスモデルと理解した方がよいだろう。1998年にVICS CPFR委員会が作成したボランタリー・ガイドラインでは、そのプロセスにほとんどのページを割いて詳細な説明がなされている。

 われわれはともすると、技術面、実務面に関心を寄せやすいが、プロセスを正確に理解し、原理・原則を遵守することによって、結果として導入と普及が推進されると考えるべきだ。

 CPFRを推進する基本指導原則を、CPFRガイドラインでは3点にまとめている。

 1つ目は、消費者に焦点を当てること。消費者利益を最大化するために、バリューチェーン全体で企業間の協働関係をいかに構築できるかがテーマだ。2つ目は、Single Shared Forecast(単一で共有した需要予測値)。消費者需要に関する予測値を、取引パートナー同士が協力して作成することを表している。3つ目は、サプライチェーン内で発生する各種制約条件を協力して取り除く努力をすることだ。その際に発生するリスクはお互いで共有し、かつ作成した予測値に対してその達成に責任を持つこと。当初のビジネスモデルは図のようにコラボレーション関係の構築から始まる9つのステップから構成されている。

CPFRの新たな展開

 VICS協会が1998年にCPFRガイドラインを発行して以来、300を超える企業間で同プロセスが採用された。結果として、店舗商品充足率は2〜8%の改善、サプライチェーン全体での在庫削減率は10〜40%という実績が報告されている。

 さらに、CPFRは小売業、家庭用品、アパレル、パッケージ消費財をはじめとしたリテイル・サプライチェーンを超えて、その影響範囲を広げている。ハイテク企業の標準化を推進しているロゼッタネットのコラボレーティブ・フォーキャスト・スタンダードや、化学業界のケミカル・インダストリー・データ・エクスチェンジ(CIDX)が推進するサプライチェーン・コラボレーション・プロセスはその代表例である。

 このように、CPFRは流通業サプライチェーンにおいて順調に拡大しており、採用企業は産業界全体へと広がりつつある。同プロセスは、部分的実施から全面的運用へと進化し、グローバルに拡張しており、これまでの6年間の変化に対応する改定モデルの開発も求められていた。

CPFR新ビジネスモデルの発表

 2004年5月、米シカゴで開催されたRS/VICS大会の場で新規モデルが発表された。

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