熊坂×井庭「0番目の対論」SFC Open Research Forum 2004特別対論(2/4 ページ)

» 2004年11月01日 16時42分 公開
[ITmedia]

井庭 今回の対論では、分野が全く違う人がひとつのテーマで話すというのがおもしろいですね。例えば、村井純さんと坂茂さんの話は、「アーキテクチャ」という言葉でいきなりぶつかります。坂さんが「アーキテクチャを建築以外の人が使ってもらうのは非常に迷惑している」と言い、村井さんは「アーキテクチャというのは象徴的な構造、仕組みをつくっていくというところで、僕らは僕らなりに何かの社会の基盤をつくっているんだ」という自負があるようです。とにかく全く聞いたことがないような話が出てきて、非常におもしろそうです。

 SFC発足時にはテクノロジーの話がこんなふうに絡んでくるとは思っていなかったですね。やはり1993、4年ぐらいからWorld-Wide Webが登場し、そして今やユビキタスが話題となっています。社会の仕組みを考えるうえで、ネットワークは欠かせなくなってきました。

総合政策学部専任講師の井庭崇氏

テクノロジーで総合政策が生きてくる

熊坂 総合政策は環境情報とセットになって、また現場での看護医療もあって初めて生きてきます。他大学にも総合政策学部がたくさんつくられたけど、ほかは双子、あるいは三つ子の学部にはなっていません。単純な総合政策学部だと、既存の経済学や政治学などが寄り集まったものでしかありません。そうではなくSFCのようにテクノロジー(環境情報)が一本横に入ってくると生きてくるわけです。今や、遺伝子分野で冨田勝さんが活躍し、デジタルによって地球環境を把握しようという福井弘道さんのデジタルアースプロジェクトもあります。本当に遺伝子から地球環境まで情報のテクノロジーで全部見てしまおうという挑戦が始まっています。

井庭 社会科学とか政策科学にしても、社会に技術が影響を及ぼすことを考えると、その技術をどうつくるかを考えている人たちが、一緒にその政策とか社会について考えるというのが重要です。そこがポイントだと思うのです。

熊坂 絶対にそうです。さっきの村井さんと坂さんのアーキテクチャをめぐる戦いのようなことから新しい何かを生み出すことが重要です。政策はこっちにいて、環境、医学テクノロジー系はあっちというのでは全然だめ。まさに同じ場で、というのがSFCの良さだと思います。まだまだ不満ですけど(笑)。

井庭 SFC Open Research Forum 2004の対論でそこが大きく進歩するのかなと思います。

熊坂 その意味では遅すぎました。しかし、このくらいの時期がたたないと、融合というのは起こらないという気もします。僕はもう完全にテクノロジー音痴の社会学者のパターンです。でも自分自身はわからないけど、自分でやりたい思いを突き通すためにはテクノロジーが不可欠だと信じ、学生にサポートしてもらいながら全く違う新しいものをつくってきたという実感があります。だから総合政策の人も、当然新しいテクノロジーを前提として社会をどう見るかということをしなくてはなりません。SFCならそれができます。

井庭 今の話の逆で、僕は環境情報学部出身でテクノロジー系ですが、現在は総合政策学部に所属しています。コンピュータシミュレーションで社会の仕組みをどう変えられるか、理解するかをやっています。こういうことがどんどん起きてくるとおもしろいと思います。

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