熊坂×井庭「0番目の対論」SFC Open Research Forum 2004特別対論(4/4 ページ)

» 2004年11月01日 16時42分 公開
[ITmedia]
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井庭 ピアツーピアではありませんが、だれが権威だとか、あの人が信頼できると言ったから、ではなく、お互いにあの人は信頼できるというネットワークがカギになってきます。

熊坂 これまでのシステムというのは、非常に階層的で、権威でもって信頼を裏付けていました。しかし、ネットワークにはそれがありません。ネットワーク社会は、そのシステムとしての信頼をどう築き上げるかが難しいのです。ソーシャル・ネットワーキング・サービスではありませんが、「友だちの友だちは友だち」かというと、ネットワークではもうわかりません。

 にもかかわらずそういうものだったら信頼できる、というところにもっていかない限り、ネットワーク社会は築けないと思います。

井庭 トレーサビリティにしても人に頼ると、監視社会みたいになってきてしまいます。

個人をもう一度考え直す

熊坂 そう、監視社会は絶対望まないわけで、難しいですね。でも、SFCのようなところでは、ICカードに個人の情報を入れて、新しいコミュニケーションや社会システムの実験をしようとしています。これまでのようにプライベートとパブリックな世界の明確な境界線を引かなくなったらどうなるのか。そういう状況を前提に、個人をもう一度考え直さなければいけないような気がします。

井庭 SFC Open Research Forum 2004は、メインのパネリストがSFCの第2世代で、コーディネーターが第3世代です。第1世代の人たちは、SFCをつくろうという問題意識がありました。第2世代は実際にいろいろな壁を壊してきた世代で、第3世代はその壁が壊れた中で育ってきた世代です。既存の学問というものがなく、方法論に対してオープンでいたい、いろんな分野のやり方を混ぜていきたいと考えたりします。1960年代、70年代に出てきたソフトウェア工学は、大規模で複雑なソフトウェアをたくさんの人たちでどうつくっていくかを考えます。僕は、これは情報システムだけでなく、社会システムなどにも応用できないかと考えたりします。そうすると意外と役に立つものがごろごろしています。しかも、ソフトウェアの場合は開発サイクルが短く、いろんな方法論が試されます。僕は、そこで成果を上げたものをほかの分野にも移転するということをやっています。これからは、いろんなやり方をミックスしながらやっていくということが重要になってくると思います。

 SFCの過去の10年は非常に分りやすい時代で、インターネットが始まり、大きなハッピー・クエスチョンがあってみんなで取り組んできました。このOpen Research Forumからまた新たに始まっていくのでしょう。

熊坂 本当にそう思います。どんな問題が浮き彫りになるか期待しましょう。

(編集部:この対論は「三田評論」2004年11月号を再編集し掲載したものです)

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