矛盾を受け入れて、新しい知を生み出す企業経営EMC Forum 2004 AUTUNMレポート

EMCジャパンの年次プライベートカンファレンス「EMC Forum 2004 AUTUNM」では、「企業経営と情報マネジメント」という視点から、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科研究科長の竹内弘高氏が基調講演を行った。

» 2004年11月03日 03時17分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 EMCジャパンの年次プライベートカンファレンス「EMC Forum 2004 AUTUNM」では、「企業経営と情報マネジメント」というタイトルで学者の視点から、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科研究科長の竹内弘高氏が基調講演を行った。

竹内弘高氏 「今日はケリーとブッシュを選ぶ重要な一日、日本では楽天とライブドアを選択する日でもある。しかし、二者択一(either-or)というのは、私の世界にはない。アンドという考え方が大切だ」と話を切り出した竹内氏

 現在は、生産効率を上げるオートメーションがものを言った産業社会から、知識社会へのパラダイムシフトが起こっているといわれる。経済学者ピーター・ドラッガーの言う知識社会では、分析力と経験がソリューションを生み出すとされる。

 竹内氏は、それらを形式知と暗黙知と分類して説明していった。また、新しい知識を想像するには、矛盾を受け入れることが大切だという。

 同氏によると、形式知はデータベース化できるものであり、暗黙知は気持ちなどデータベース化しにくいものと捉えることができる。例えば、前者は言葉であり、後者は気持ちといった感じだ。

 日本人はというと、暗黙知が多くを占める傾向にある。暗黙知を形式知に変換して、言葉にしたり、データベース化していう作業は苦手とするところ。これを克服することは一つの課題に挙げられる。

 「例えば、長嶋茂雄の語録には形式知がほとんどない。『ボールがそこにきたときだけ打つ』『来た球をパッと打つ』というのは、まったく論理的でない。たぶん本人しか理解できない」と、日本人の性質を説明して会場に笑いを誘った。また、「風が吹けば桶屋が儲かる」という理論や、阿吽の呼吸でお互いが通じてしまうのも、暗黙知の比重が高いことの表れだという。

 「ただグローバルになると、これでは難しい」。そこで、具体的なもので抽象概念を連想させるメタファーが重要になってくる。具体的なもので例えることで、形式的に理解できるようになるからだ、という。

新しい知の想像は、矛盾を受け入れる

 知識社会で差別化の要素となるだろう「新しい知」をどのように生み出すか? 竹内氏はこの答えを「矛盾を受け入れること」と説明する。

 ヘーゲルの弁証法では、テーゼ(正)に対しアンチテーゼ(反)を唱え、シンセシス(合)が生まれ、それにさらにアンチテーゼという反復を行う。これを繰り返すことで、新しい知が生まれるというわけだ。このように対立概念(矛盾)を受け入れることが必要だ。

 「この二面性をいかにコンバインするか、合わせるという意味の『綜合力』が大切。暗黙知も形式知も合わせることで、新しい知が生まれる」

 例えば、米海兵隊にも二律背反な規則がある。これが海兵隊組織の極意となっているという。「失敗覚悟でやる/成功を第一に考える」「権限を与えるべき/階級組織を守るべき」という矛盾を含む規則が多く存在するのだ。

 また、成功している日本企業にも二面性が見えるという。キヤノンのキャッシュフロー経営/終身雇用維持、ホンダのアコードワゴンの走る/つめるの相反するコンセプトなどがその例となる。

 一橋大学が戦略を重視して与えるポーター賞を受賞した企業の1社、セブン-イレブンにおいては、システムによる情報の管理に長けているにも関わらず、2000人の幹部を本社に呼んで会議したりしていると話し、これも矛盾を受け入れている、と紹介した。

 ではEMCはどうだろう? 「この理論からすると、ソフトとハードの売り上げが半々ぐらいが良いと思う」とアドバイスもした。

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