マイクロソフト、Exchange Serverの「ロードマップはちゃんとあります」

「kodiak」という名称がそのロードマップ上から消えてしまった次世代Exchange Serverだが、その現在進行形を語るマイクロソフトには、微塵の不安をも感じさせない自信を見た。

» 2004年11月08日 09時00分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 つい先日、マイクロソフトのメールアプリケーションサーバソフトであるExchange Serverの先行きについての記事「ますます先行き不透明なExchange Server」が掲載された。Exchange Serverのリリースデートについて触れたもので、Exchangeユーザーや導入を検討している人々にとって、Microsoftから明確な製品ロードマップの提示がないという点では気になる内容であっただろう。

 2002-2003年期の全世界におけるコラボレーションツールのマーケットシェアでは、Microsoftは46.4%と、二位のIBMにわずか4ポイントの差ながら首位に立った(IDC調べ)。同期の成長率が+6.2%となり、IBMのそれは−3.5%となったため順位が逆転した。一方、国内に目を向けて見ると、成長率は+13.4%、また特に7-9月期における売上高の成長は目ざましく、昨年同期比で+43.9%を達成している。

 マイクロソフトのサーバープラットフォームビジネス本部 ITインフラストラクチャ製品グループ マネージャの中川哲氏によると、この好調の背景にはいくつかの要因があるという。

 同社は昨年より、統合コラボレーションプラットフォームという考え方を訴求してきた。各種プロモーションやセミナーといった活動を通して、ユーザーにコラボレーションソリューションとしてのExchange Server、SharePoint Portal Server、そしてOffice Editionsという製品群を提案してきた。

 「セミナーは日本全国をまわって、3,000名以上の方々に参加していただきました。また、理解を容易にしていただけるさまざまな小冊子を作成し、配布したことも製品の認知度アップにつながっていると考えています」(中川氏)

発売から一年経ち、ようやく努力の成果が

 Exchange Server 2003がリリースされてほぼ一年が経過するいま、ようやくこうした取り組みの成果が現れてきた。

 「実施から半年ほどを経て、ようやく目に見える結果として出てくる。それがサーバ製品のマーケティング活動の特徴です」と中川氏はこの一年の施策を振り返る。

 今年前半に力を入れたもう一つの施策、それが、Notesからのマイグレーション促進だ。移行を促す各種の無償ツールを配布し、さらにセミナーやトレーニングの実施などで施策を強化、中堅・中小規模事業所にまで拡大して展開した。

「ワールドワイドではシェアの逆転を果たしましたが、国内ではまだまだ追う立場です」と中川氏は言うが、ここには売り上げ拡大に貢献した大きな意味を持つデータがある。7-9月期のライセンス売り上げを含めたExchangeに関するビジネスの43.7%が、Notesからの移行による案件だった。独自アーキテクチャの限界感やIBMのサポートに対する不安感をうまく移行の動機に導いた結果と言える。

ロードマップは「あります」

 だが、こうした国内の好調ぶりを示せば示すほど、本社幹部の切れの悪いコメントが気になってくる。

 「Kodiak」というコードネームはロードマップ上から削除されたが、「ロードマップ自体は(社内的に)もちろんあります。現在は、お客様に確実に提供できるものとその時期をもう一度明確にしているところです」(中川氏)

 Exchange Serverはコラボレーションやメッセージングの基盤として他のさまざまなサーバ製品と綿密に結びつき、多くの先進的な技術を共有する。次世代Exchangeではデータストアの仕組みにWinFSを採用するとの見方もあり、これがLonghornやYukonとリリースの同期を取らなければならない一因になる可能性もある。これらの製品はリリース時期のアナウンスが二転三転している。

 Exchangeに関してはこうした不確定要素を排除し、より正確な製品像をユーザーに伝えたいというのがマイクロソフトの考えのようだ。製品自体はもちろん存続しており、次の製品の開発も売り上げの好調を受けてより力が入っているという。

 では、今のところは何一つ確実な情報はないのだろうか。

 「明るい話題はあります。その一つが10月25日にIETFに提出した(改訂版)Sender IDです。このスパム防止のための認証技術は、ほぼ確実に次世代のExchange Serverに実装されます」(中川氏)

今後に向けて

 こうした展望をもとに、いま日本のExchange担当グループが取り組んでいることはどのようなことだろうか。

 「現在のExchangeユーザーは、Exchange 5.5、2000、2003という三つのバージョンのユーザーが混在しています。2003ではパフォーマンスの向上によって、サーバ統合によるTCO削減などの投資効果が得られます。弊社の最近のライセンス売り上げの推移を見ると、CALライセンスは増加しているのに、サーバライセンスは減少しています。これは、サーバハードウェアが集約してかつユーザーは増えていることをあらわしています」

「そこでまず、バージョン5.5のユーザーさんに最新バージョンへのアップグレードをしていただくことを第一に考えています。それからもう一つ、近年台頭してきた安価なWebベースのグループウェアとの競合に勝つことです。これが次の半年に取り組むべき課題です」(中川氏)

 ロードマップの問題さながらに、旧製品ユーザーのマイグレーションも同社にとっては切実な問題だといえる。

 Exchange ServerのWebページでは、ステップバイステップの解説展開検証ツールなどを用意して、次の顧客開拓に当たっている。

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