SGIのCEOが明かす「Opteronではない」理由

SGIのボブ・ビショップCEOは将来に向け、AltixサーバをOEM提供する考えだ。そして同氏が明らかにした「OpteronではなくItaniumを採用する理由」は……(IDG)

» 2004年11月09日 16時44分 公開
[IDG Japan]
IDG

 世界最強コンピュータのTop500リストが11月8日に発表され、米Silicon Graphics(SGI)が米航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究所向けに構築した、1万240プロセッサを搭載するスーパーコンピュータ「Columbia」は第2位にランクインした(関連記事参照)。1990年代後半にWindows市場への進出に失敗して以来、顧客の奪還に必死なSGIにとって、Columbiaは待望の成功作だ。同社CEO(最高経営責任者)のボブ・ビショップ氏は1999年に現職に就任以来、同社の従来からのコア市場である技術分野に事業のフォーカスを絞り直し、「Altix」サーバラインにおいて、Linux、IntelのItaniumプロセッサアーキテクチャー、およびSGI独自のNUMAflexシステム設計という3つのコア技術に同社の将来を賭けている。SGIはNUMAflexにより、Linuxをかつてないレベルまでスケールアップすることに成功している。

 こうした目覚ましい技術的功績にもかかわらず、SGIの将来は依然として不確かだ。業界によるItaniumプロセッサ採用の動きは鈍く、SGIは収益性の達成に苦戦している。同社は直近の四半期で2800万ドルの純損失を計上しており、ビショップ氏もこれについて「がっかりさせられる」結果だったと語っている。だが同氏はIDG News Serviceのインタビューに応じ、同社の今後や、新規市場にAltixを投入する計画のほか、AMDのOpteronプロセッサではなくItaniumのほうがAltix向けのプロセッサとして適していると考える理由などについて語ってくれた。以下はそのインタビューの内容を書き起こしたものだ。

―― SGIはAltixシステムにより、非常に大容量の共有メモリを備えるLinuxサーバの構築に成功しています。このような技術は、SGIが売り込んでいるテクニカル市場だけでなく、商用スペースにも使えるように思えます。なぜ一般的に人々は、Oracleデータベースのような商用アプリケーションにSGIマシンを使わないのでしょうか?

ビショップ氏 もちろん、商用アプリケーションも結局のところは似たような技術を必要としています。商用市場でのわれわれのアプローチは、パートナー企業が当社製品を自社ブランドとして提供する形になるでしょう。われわれは喜んで当社製品を商用スペースに投入するつもりですが、それはパートナーを介した形になります。おそらくパートナー各社が独自のアプリケーションソフトや独自のサポート、独自のブランドを追加することになるでしょう。

―― 現在提携中のパートナー企業を教えてもらえますか?

ビショップ氏 パートナー企業を発表できる段階ではありません。発表はパートナーの側で判断することです。

―― どのような企業との契約を考えていますか?

ビショップ氏 既にこの分野でデータベース管理に伴う問題の深刻化に直面している企業になるでしょう。われわれは先日、Transaction Processing Performance Council(TPC)のTPC-Hベンチマークの数値を発表したところですが、このベンチマークでは世界記録となる数字を達成しました。このベンチマークでは、今後の実例の1つとしてDB2を使いました。

―― エンタープライズアプリケーションのユーザーがAltixを利用できるようになるのはいつ頃でしょうか?

ビショップ氏 Altixは現在、6種類のデータベースを実行できます。Oracle、Informix、Sybase、Objectivity/DB、MySQL、DB2の6つです。われわれはまず第一に、これらのデータベースへの対応に取り組みました。そして今は、大容量メモリのマシン性能を求める商用コンピュータ企業にアプローチしています。チャネルパートナーの参加に伴い、新たなシステムが発表されることになるでしょう。

 当社がこうした方針を取っているのは、当社には商用アプリケーションを販売できるスタッフがいないからです。ですが、当社と提携しているチャネルパートナーにはそうしたノウハウがあります。彼らにはそうした分野の経験があります。

―― そうしたチャネルパートナーはItanium 2 Altixシステムのみを販売することになるのですか? それとも、MIPSベースのOriginシステムも販売するのでしょうか?

ビショップ氏 Itanium 2 Linuxプラットフォームのみです。

―― Hewlett-Packard(HP)は最近、Itanium 2ワークステーションの出荷を打ち切りました(9月25日の記事参照)。実際、同プロセッサはアナリストが当初予想していたほど売れていません。それについて懸念はありませんか?

ビショップ氏 いいえ、全くありません。実際のところ、われわれはHPがワークステーション事業から撤退するであろうことは予測していました。Itanium 2はワークステーション向けプロセッサではありません。Itanium 2はサーバプロセッサであり、それをワークステーションに配備しようという考え自体が間違っていたのだと思います。

 プロセッサとしては、Opteronがより一般的なワークステーション向けプロセッサとなりつつあります。Opteronはワークステーションプロセッサです。64ビット拡張Xeonもそうです。サーバでは、トータルな64ビット環境が必要です。64ビットのアドレス処理だけでなく、64ビットOSや64ビット開発ツールが必要です。だからこそ、われわれにとってItaniumが重要なのです。Itaniumには、ハイエンドの多次元パッケージがあります。

―― しかしOpteronには64ビットのLinuxのオプションがあり、開発ツールもどんどん登場しています。SGIのプラットフォームとなる可能性という意味では、Opteronについてどのようにお考えですか?

ビショップ氏 Opteronには関心がありません。当社はワークステーション市場にフォーカスしているわけではありません。当社のフォーカスはサーバ分野です。

―― ですが実際、人々はOpteronをサーバプラットフォームとして使っています。

ビショップ氏 そうしようとしているのでしょう。ですが、私はそれこそがOpteronの弱点だと考えています。Opteronは64ビット開発環境が丸ごと整っていないため、サーバ製品としてはそれほど強力ではありません。アドレス処理など、要素が1つ整っているだけでは、サーバ向けに十分とは言えません。

 確かに、市場にはIA-32(Intel Architecture 32)クラスタサーバがあり、Opteronでクラスタサーバを構築することもできます。ですが、それでは完全な64ビットではありません。

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