製品とサービスのシナジーで売り込むOracle On Demand

Oracle On Demandは、オラクルの技術者が遠隔地からインターネットを介してOracle製品を管理するサービス。「より簡単に、そしてより長く使ってもらうのが狙い」と桑原執行役員は話す。

» 2004年11月16日 11時23分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「Oracleの管理はオラクルに任せろ」── 日本オラクルはユーティリティーコンピューティングへの過渡期にあたり、ITサービスをオンデマンド化する「Oracle On Demand」に力を注いでいる。

 かつてOracle Outsourcingと呼ばれていたOracle On Demandは、日本オラクルの技術者が遠隔地からインターネットを介してOracleデータベースやE-Business Suiteを管理する、いわゆる「アプリケーションマネジメントサービス」。日々の運用管理、障害監視/復旧にとどまらず、障害を未然に防ぐための予防保守やアップグレードも含まれている。同社のサポート事業は、今年5月末に締めた2004会計年度では約320億円規模まで成長、比率も40%近くにまで達しており(全体の売上高は約830億円)、Oracle On Demandは、こうしたサポート事業の頂点に位置づけられる。

 企業の情報システム部門は、大半のIT予算を運用保守に費やしており、ビジネス環境の変化に適応していく余力がないのが実情だ。

 日本オラクルでビジネスオンデマンド開発室を統括する執行役員の桑原宏昭氏は、「Oracle On Demandは、Oracle製品をより簡単に、そしてより長く使ってもらうのが狙い」と話す。

桑原氏は金融営業本部長などを務めた社歴14年のベテラン。Oracle Directの立ち上げも

 Oracle On DemandはCPU数やユーザー数に応じて月額が設定されており、自社で運用管理者を確保したり、工数を積み上げて金額を請求してくる従来型のアウトソーシングよりも遥かにコストを削減できる。データベースだけを管理してもらう「Oracle Technology On Demand」が1CPU当たり15万円、アプリケーションも含めて管理してもらう場合は1ユーザー単位となり、「Oracle E-Business Suite On Demand」が1万1250円、「Oracle Collaboration Suite On Demand」は750円で済む(もちろんソフトウェアライセンスは別途必要)。

 また、1社が情報システム部門ごと丸抱えするアウトソーシングモデルとも異なるため、データセンター事業者や特定市場のアプリケーションに強みを持つシステムインテグレーターらと協業することによって、より質の高い、専門性の高いサービスが提供できるという。

 9月、オンデマンド事業の本格展開を開始した新日鉄ソリューションズがその好例となるだろう。同社の「Oracle On Demand@NSSOL(エヌエスソル)」は、彼らのデータセンターで稼動するOracle E-Business Suiteを24時間365日止まらないサービスとして提供するもの。1ユーザー当たり3万円の月額には、サーバ、OSの使用料も含まれている。

 「基本となる部分が定額化されることで、カスタマイズのコストや、その部分に将来かかるコストが明確になる」と桑原氏。引き続きIT支出の節約を迫られている企業は、ITのサービス化に移行していくに違いない。

 Oracle On Demandで可視化されるのは、何もコストばかりではない。顧客はManagement Portalから常にサービスの状態を把握できるほか、月次稼動報告書を基に定期的なミーティングを行い、運用スキルの移転も図っている。

 「新しいE-Business Suiteの商談には、先ずOracle On Demandを採用してもらえるように話をしている。競合にない強みとして手ごたえもいい」と桑原氏。

 グローバルでは既に400社以上を獲得しているOracle On Demandも日本市場では東京スター銀行やビー・ビー・ケーブルなど10社弱にとどまるが、Oracle製品とサービスのシナジー効果をテコに浸透を図りたいところだ。

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