Linuxの普及に王道なし、米OSDLとOSDLジャパンの言葉(2/2 ページ)

» 2004年11月18日 09時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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 米Open Source Development Labs(OSDL)は2004年10月、日本におけるOSDLの活動を統括するディレクタに、菊地健太郎氏が就任したことを発表した(関連記事参照)。2004年6月には元レッドハットの平野氏が、アジア担当OSDLディレクタに就任している(関連記事参照)。平野氏がアジア全体におけるOSDLの活動に対して責任を持つのに対し、日本でのOSDLの活動に対して責任を持つのが菊池氏となる。

「OSDLは次のフェーズに入った」と菊池氏

OSDLは弱者連合?

 同氏は、日本アイ・ビー・エムに30年あまり勤務し、開発・製造系、本社系、営業系で分けるなら、開発・製造系の仕事に携わっていた。1993年からはOADG推進部長として、OADGの運営に携わり、1993年4月から事務局次長、2003年4月からは事務局長を務めている。OADGはPCオープンアーキテクチャー推進協議会の略称だ。

 OADGも活動の一部としてLinuxを扱っており、OSDLのことは知っていたと話す菊池氏は、OSDLへ入ったことを次のように振り返っている。

「OSDLのような企業コンソーシアム的な要素が強いものが結成されることは、誤解を恐れずに言えば、弱者連合であるといえる。Linuxはサーバ市場でシェアを伸ばしつつあるが、各社ともこれで満足しているわけではなく、これを広げていくために情熱を注いでいる。各社が会社の枠を越え、ある目標に向かって活動していく、そしてそれをサポートしながら運営していくことが魅力的」(菊池氏)

OSDLは日本をどう見ている?

 菊池氏は現在のOSDLを次のように評価している。

「OSDLは次のフェーズに入ったと思う。物事が立ち上げるときは非常に多くのエネルギーを必要とするもので、先進的な人たちが集まるもの。その人間たちがうまく行動することで、立ち上げのフェーズはうまくいった。これからはその路線の上で地に足をつけ、どうやって拡大していくかというフェーズとなる」(菊池氏)

 そして、拡大にあたって、自身の目標を大きく2点挙げている。まず一つは、OSDLを日本で普及させること。少なくともITに関わる人間の中で「Linux」という言葉は市民権を得たが、「OSDL」という言葉を知る人はまだまだ少ないのが現状だ。さまざまなオープンソース関連の団体が乱立する中、本流の団体であることを日本で普及させるのが狙いだという。

 そしてもう一つは、逆説的となるが、OSDLの中で日本を売り込んでいくことだという。米OSDLは、日本が重要だということは理解しているが、なぜ重要か、という点については分かっていない部分もあるという。日米で注目している分野も少し違うことなども関係しているのかもしれないが、日本の中で何が起こっているか、また、これから何をしようとしているかについて、よく分かっていない部分があると話す。

「OSDLの中にはNEC、富士通、日立など、有力な日本企業が多く存在し、OSDL全体からみてもかなりのボリュームとなっている。それぞれがかなり先進的なことを各セクターで行っている。また、OSS推進フォーラムに見られるように、やっていることはすばらしいものがあるが、OSDLの中でそれが認知されているかといえばそうでもないように思える。本家に対し、日本ではこれだけ盛り上がっているんだというのはきちんと伝えたい」(菊池氏)

今後はOSS推進フォーラムとの連携も

 そして、これら2つの目標を具体的なものに落とし込んだものとして、例えばOSS推進フォーラムに入り、外との連携をとりながら活動していくことを挙げる。

「政府の構想にしたがって、一定の役割を果たしていきたい。逆に、そういったことをしていかないと目標が達成できないフェーズに入ったといえる」(菊池氏)

 外との連携という意味では、さまざまな企業や団体とコミュニケーションを取る必要がある。特に、OSDLのような企業コンソーシアムでは、各企業は思惑が一致する部分はあるとはいえ、その目的は異なる。そのため、常にコミュニケーションを図っていくことは重要なことであるといえる。

 しかし、ご存じの方も多いだろうが、OSDLジャパンのオフィスは、都心からかなり離れた場所に存在しており、この部分が弱いと揶揄されることがあったのも事実だ。これについて菊池氏は、「機器の提供などを行うことが重要な意味を持っていたフェーズにおいては、今の場所は非常に意味あるものでした。しかし今後、外部と強力に連携するには、俗な言葉でいえば、山手線の中にいる必要を強く感じています。このため、近く都内にオフィスを移す予定」と述べ、オフィスの移転を示唆した。

 菊池氏は最後に、「最終的に何を狙うかというと、ユーザーの安心感を得ること、あるいは、ベンダーがLinux上のミドルウェアを安心して提供できる環境を作ること。そういった環境になったときに、Linuxの普及はさらに加速する。しかしそれをすぐに達成する王道はない。地道に進める必要がある」と話し、静かな闘志を見せた。

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