ユビキタスID vs EPCグローバル月刊コンピュートピア(1/4 ページ)

ICタグの普及を考える上で、ICタグのID情報、さらにID情報に関連付けられる履歴情報や顧客情報などをいかに管理するかが問題になる。「ユビキタスIDセンター」と「EPCグローバル」の2つ標準化団体の取り組みを追う。

» 2004年11月24日 10時57分 公開
[岡崎勝巳,月刊コンピュートピア]

この記事は月刊コンピュートピアから許可を得て転載しています。

 ICタグの普及を考える上で、ICタグのID情報、さらにID情報に関連付けられる履歴情報や顧客情報などをいかに管理するのかを避けて通ることはできない。ネットワークを介してICタグのID情報にアクセスし、ID情報を基に必要な情報を入手できる環境が必要だ。このような仕組みの実現に向け、「ユビキタスIDセンター」と「EPCグローバル」の2つの団体が標準化を進めている。ただ、両団体の標準化は、利用するICタグ、さらにID情報に紐付く情報の扱い方に差がある。そこで両団体の標準化に向けた取り組みを追うと共に、その違いを比較してみよう。

それぞれの標準が目指すもの

 ユビキタスIDセンターは2003年3月、TRONの開発者である東京大学の坂村健教授が主催するT-Engineフォーラム内に設立された組織である。TEngineフォーラムは組み込み型リアルタイムシステムのプラットフォームの研究や標準化を進めている団体であり、ユビキタスコンピューティング環境の実現を目指している。このことを反映し、ユビキタスIDセンターでは、ユビキタスコンピューティングの実現を後押しするための、あらゆる「モノ」を自動認識するための仕組みの構築を目指しているのが特徴だ。

 これに対して、EPCグローバルはその前身であるオートIDセンターが研究開発を進めていた「オートID」と呼ばれる技術を用い、製品の製造、流通、販売、そしてリサイクルまでの過程を効率的に管理することを目的に標準化を進めている。ちなみにオートIDセンターは、それまで提唱していた技術が実現可能なレベルに到達したことから、2003年10月に閉鎖され、EPCグローバルとオートIDラボという2つの組織に活動が引き継がれたものだ。EPCグローバルはオートIDセンターが提唱してきた技術のID体系の普及啓蒙、オートIDラボは技術開発という役割を担っている。

 このように、ユビキタスIDセンター、EPCグローバルの目指すものはそれぞれ大きく異なるが、それぞれの標準化が進むことで、果たしてどのような効果が期待できるのか。ユビキタスIDセンターを取り上げ、洋服にICタグを取り付けた場合を例に見てみることにしよう。

 洋服にICタグをつければ、それを着用している人の位置を把握することが可能になる。これを活用し、たとえば自動車にリーダー/ライターを取り付けることで、交通事故を未然に防ぐ機能を実現できる可能性がある。また、ICタグに温度計の機能を持たせておけば、室内のエアコンと通信することで、室内を適正な温度に保つことが可能だ。さらに、医療機関と連携し、日々の体温を記録しておくことで、体調管理にも役立てられるようになる。このように、ユビキタスIDセンターの取り組みは、ICタグを社会全般なさまざまなシーンで活用することに役立つものだ。

 対してEPCグローバルの目的はモノの管理、いわばSCMの実現にある。EPCグローバルにとって、ICタグはいわば高機能なバーコードと言っても過言ではないだろう。バーコードは汚れに弱く、光学的に情報を読み取る必要がある。これをICタグに置き換えれば汚れにも強く電波で情報をやり取りできるため、たとえばカミソリなどにICタグを取り付けておくことで、生産工場の出荷時には自動的にどれほどの商品が出荷されたのかを確認できることに加え、販売店に到着時には、いつ、どれだけの商品が納入されたのかを容易に確認することが可能。検品などの作業効率が大幅に効率化することが見込まれるわけだ。

 加えて、リーダー/ライターを組み込んだ棚に商品を陳列しておけば、商品の補充、さらに製造元への発注まで行えるようになる。反面、流通分野以外では活用するのは難しいと言えるだろう。それでは果たして、それぞれのシステムはどのようなものなのであろうか。その概要をユビキタスIDセンターの方から見ることにしよう。

両システムの概要

 ユビキタスIDセンターはモノを自動認識し、ユビキタスコンピューティングを実現するために、1.モノに情報を関連付けるID体系である「ucode」の確立、2.ucodeを利用するための通信基盤の確立、3.ucodeを使って情報を広くやり取りするための広域型分散技術の確立、という3つを主目的としている。そして、情報のやり取りにあたって鍵となるのがID情報であるucodeだ。

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