日中韓の連携は進んでいるか――OSS推進フォーラムの取り組みOpen Source Way 2004レポート

日本OSS推進フォーラムの取り組みを「比較的活発に活動している」と評するのは。日本OSS推進フォーラムSC座長を務める山田伸一氏。同氏は、日中韓の連携の現状についても語るとともに、そうした活動がもたらす効果について述べた。

» 2004年12月01日 14時41分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 2004年2月に設立された日本OSS推進フォーラム。当時、一部では日中韓でOSを作成するなどといったような報道もあったが、実際のところ、どのような活動を行っているかについては、なかなか目にする機会がなかった。そうした中、Open Source Way 2004のセッションで、NTTデータの取締役兼ビジネス開発事業本部長であり、日本OSS推進フォーラムステアリングコミッティ(SC)座長を務める山田伸一氏が、日本OSS推進フォーラムの活動概要と日中韓連携について紹介した。

山田氏 NTTデータの取締役兼ビジネス開発事業本部長の山田伸一氏

 日本OSS推進フォーラムが設立された経緯と日中韓の連携に関する主なイベントを時系列で並べてみると次のようになる。

日本OSS推進フォーラム設立までの主要なイベント
時期 イベント
2003年9月 日中韓経済貿易大臣会合
2003年9月 日中韓情報通信大臣会合
2003年11月   日中韓オープンソースビジネス懇親会
・3国の推進組織の設立を宣言
・日本OSS推進フォーラムの設立を発表
2004年2月  第1回 日本OSS推進フォーラム
・正式設立、WGの設立を宣言
2004年4月 日中韓IT担当局長会議にて政府間合意10項目に署名
2004年5月 

第3回 日本OSS推進フォーラム SC
・各WGの正式発足

2004年7月  第2回北東アジアOSS推進フォーラムおよび三国IT局長会議
・3つの共同WGの設立に合意

 日本OSS推進フォーラムは、政府、民間で協力することによる日本国内でのOSS普及拡大、そして、ユーザーが安心して使えるようにするための技術的・制度的課題の解決を図ること、さらには、日中韓、世界のコミュニティーとの協調によるOSS発展への貢献をビジョンに掲げている。組織形態としては、オブザーバーに経済産業省、総務省、JISAを、事務局にはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)を迎え、山田氏が座長を務めるSCの下に各ワーキンググループ(WG)が存在している形となっている。

 WGは現在、開発基盤、ビジネス推進、サポートインフラ、デスクトップ、人材育成、標準化・認証の6つが存在している。なお、韓国、中国はそれぞれ3つのWGが現時点で存在している。こうしたWGは、OSSを推進するための課題がそのままWGとして立ち上がっていると見ることができる。

 そうした各国ごとのWGとは別に、北東アジアOSS推進フォーラムが存在している。こちらでは、「技術開発・評価合同WG1」、「人材育成合同WG2」、「標準化・認証研究合同WG3」といった3国で進めるWGが設置され、具体的な協力項目について検討を進めている。各国のWGと、合同WGをマッピングしたものが次の図である。

各国のWGと、合同WGをマッピングしたもの(クリックで拡大)

 これを見ると、若干韓国のOSS推進が遅れているようにも見える。韓国のLinux市場動向について山田氏は「UNIXは公共分野、Windowsは民間分野で浸透している。Linuxサーバシェアも拡大してはいるが、セキュリティ面での懸念などからLinuxに対する取り組みが日本・中国とは少し異なる」としている。12月2日からは第3回北東アジアOSS推進フォーラムがソウルで開催される予定となっており、その場で韓国のOSS推進にも進展が見られると予想される。

 また、組み込み分野に関しては、中国や韓国に対し、CE Linux Forumへの参加するのがいいのではと提言した。

 同氏日本OSS推進フォーラムの活動状況について、「数を誇るわけではないが」と断りつつも、WGが毎週のように開かれていること、SC小委員会やSCなども7回程度開催するなど、「比較的活発に活動している」(山田氏)と話す。

 各WGの活動については、例えばデスクトップWGが経済産業省、IPAに対して学校での実証実験を提案した結果、IPAの公募事業「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」として実施されるなど(関連記事参照)、目に見える形での取り組みが進んでいる。

「日中韓でOSを作成」の真偽は?

 ところで、2004年4月に日中韓IT担当局長会議で政府間合意10項目に署名が行われたころ、「日中韓でLinux OSを開発」するかのような報道が一部取り上げられたことがある。もちろん、こうした内容は大きな誤解を含んでいる。山田氏のスライドを見ても、促進や環境整備という言葉はあるが、Linux OSの新規開発に関する文言は見あたらない。

政府間合意10項目 政府間合意10項目(1項から5項、クリックで拡大)
政府間合意10項目 政府間合意10項目(6項から10項、クリックで拡大)

 山田氏は、こうした官民協力による活動によって、OSSの認知度が向上し、実用的な選択肢になりつつあると語った。

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