「一つの真実」を追い求めて信念を貫くOracleのエリソンCEOOracle OpenWorld 2004(1/2 ページ)

サンフランシスコで開催中のOracle OpenWorld 2004はラリー・エリソンCEOが登場し、最大のヤマ場を迎えた。シリコンバレーのカリスマは、「一つの真実」を追い求める。

» 2004年12月09日 18時06分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 シリコンバレーのカリスマ、Oracleのラリー・エリソンCEOがインフォメーション時代にふさわしいアプリケーションの理想像を語った。

 米国時間12月8日午後、カリフォルニア州サンフランシスコで開催中の「Oracle OpenWorld 2004 San Francisco」は最大のヤマ場を迎えた。Oracle OpenWorldは欧州、アジア、東京と世界各地で開催されているものの、エリソンCEOが登場するのはサンフランシスコだけ。

モスコーニーセンターの7000人は入ろうかという会場の前には、彼の独演会をできるだけ良い席で楽しもうと多くの来場者が長蛇の列をつくった。

 「5年前、E-Business Suiteの理想を考えたとき、企業のすべてのデータは1カ所のデータベースに格納され、必要なときに一貫した整合性のある情報が得られ、正しい意思決定が迅速に行えるべきだと思った」(エリソン氏)

 振り返れば、彼はこの5年、一貫して「一つの真実」を訴えてきた。「ハンバーガーチェーンの経営者は、きのう幾つ売れたかも分らない」と公式の場で発言して当のCEOから謝罪を要求されたこともあったが、「多くの経営者は従業員が何人いるか、という単純な質問にも答えられない」というメッセージには辛らつだが説得力もあった。同社は今回のOracle OpenWorldで「The Information Company」のスローガンを掲げたが、何も突然降って沸いたような話ではない。

 エリソン氏が話すとおり、現実のITシステムは分散化によってアプリケーションごとにデータベースがあり、意思決定に必要な情報は断片化されてしまっている。

 「顧客の360度の情報が把握できるとCRMベンダーは喧伝したが、その顧客宛ての出荷が遅延していることは配送システムでなければ分らないし、顧客からの支払いが滞っていることは会計システムでなければ分らない」(エリソン氏)

 これでは360度の顧客情報とは言えまい。

 ビジネスインテリジェンスによる解決にも限界がある。データを抽出・移動させるため、詳細なデータを含まないし、タイムラグの発生が避けられない。

 エリソン氏は、「ツール以前にデータの在り方が間違っている」と問題の根深さを指摘する。

 Oracleはこうした根源的な問題を克服すべく5年の歳月をかけ、E-Business Suiteの開発を進め、自社システムをグローバルシングルインスタンスで運用までに至っている。

 しかし、自らの経験から学んだエリソン氏は、グローバルシングルインスタンスへの道のりが険しいことも十分承知している。

 「われわれでさえ5年を要した。一般の企業顧客であれば、“涅槃の境地”“理想に過ぎない”と言うかもしれない」(エリソン氏)

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