Sun CEOが語る「Javaをオープンソース化しない理由」Interview

Solarisはオープンソース化するのに、なぜJavaはそうしないのか? Sunのスコット・マクニーリーCEOがその理由を語る。(IDG)

» 2005年01月12日 11時13分 公開
[IDG Japan]
IDG

 以下はSun Microsystemsの会長兼CEO(最高経営責任者)スコット・マクニーリー氏の編集済みインタビュー記録だ。

――Sunでは昨年、興味深い変化がたくさんありましたが、その中で実際に成功したのは?

マクニーリー氏 われわれが実施したことを説明しましょう。社内のコストモデルを大きく引き下げ、営業利益を大幅に改善しました。われわれはユーティリティコンピューティングとコミュニティー開発戦略により、正しい軌道に載っていると思います。Opteronのニュースは非常にエキサイティングです。当社のマルチスレッディングに関する記事ももうすぐ出てくるでしょうし、それはエキサイティングなものになるでしょう。Solarisのオープンソース化は重大な出来事です。Javaの勢いは今や当然と思われていますが、目を見張る偉業なのです。

――ですが、2005年はSunにとって何がビッグヒットになると思いますか?

マクニーリー氏 想像してみてください。10年前にJavaを発明していなかったら、今、Sunはどこにいると思いますか? 何もかもがWindowsになって、われわれは終わっているでしょう。開発者がJava Webサービスを書いていないのなら、.NET向けにサービスを書いていることになります。.NET向けに書く場合は、Windows向けに書くことになります。Windows向けに書くのであれば、Sunの機器向けには書かないということです。

 ですから「どうしてJavaに課金にしなかったのか」とよく言われます。ですがちょっと待ってください。われわれはJavaを立ち上げて以来、銀行に74億ドルの現金を保有しています。Javaに課金しなかったからと言って……そうですね、HP(Hewlett-Packard )がプリンタでは大してもうかっておらず、プリンタカートリッジでもうけを出していると言うようなものです。市場を創出し、そこから収益を上げる方法はさまざまにあります。

 そこで将来市場からどうやって収益を上げるかという疑問が出てきます。時にはそれを分け合わないこともあります。

――開発者の一部はSunに対し、Java仮想マシンの実装をオープンソース化するよう求めてきました。そうしなかった理由は? Solarisをオープンソース化する理由は、Javaにも等しく当てはまるように思えるのですが。

マクニーリー氏 最初からJavaコミュニティープロセスが存在したから、というのが主な理由です。Java Community Process(JCP)には900を超える企業と組織が参加しています。そこにあるのはコミュニティー開発の問題だけではありません。オープンソース化がどんな問題を解決するのか、私には確信が持てないのです。オープンソース化により、どんな問題が解決されるのでしょうか? われわれは実際にそれを見出そうとしています。われわれはJPCを調整、修正することに満足しています。今でも独力であらゆるJava技術をオープンソースあるいはプロプライエタリで実装することは可能です。認証プロセスもあります。オープンソース化で何が解決されるか、われわれは本当に確信がないのです。現時点で壊れていないものを修正するようなことはしたくありません。

――それなら、Solarisのオープンソース化はどんな問題を解決するのですか?

マクニーリー氏 Solarisを進化させるために設けられたJavaのようなコミュニティープロセスはありません。それにわれわれは開発者がSolarisを利用するためのソースコードへのアクセスを持たないのです。それは、われわれが権利付きのソースコードを公開するからです。これは大きな違いです。Javaには権利付きコードはありません。

――Sunは時にソフト・サービス企業になろうとしているように見えます。次世代プロセッサ「Niagara」のようなマルチコアUltraSPARC設計への投資を続けるべきだと考える理由は?

マクニーリー氏 マイクロプロセッサとコアシステムを開発していない企業は、Dellを除いてすべて損失を出しています。そうした企業はすべて他社のマイクロプロセッサの再販で損を出してきました。DellとIntel以外に利益を出している会社を挙げてみてください。

――それはなぜでしょうか?

マクニーリー氏 お金はシステムにあるからです。Fordがシェビーの動力系をOEM調達したら、苦労するでしょう。結局はそれと同じようなことです。あなたがFord MotorとしてFisher Bodyに行き、内装を売ってお金を稼ごうとしたって無理なんです。

 あなたは50のサプライヤーのパーツから車を組み立てることも、Fordの車を買うこともできます。Ford車を買う方がコストパフォーマンスがいいのは確実です。それが、われわれがそうして(プロセッサを手がけて)いる理由です。実際、当社は密に統合された非常に小規模な専任設計チームでそれができます。われわれにとっては、プロセッサアーキテクチャをシリコンプロセスに合わせるよりも、コンピュータとOS、Webサービスとネットワークスタックに統合させる方が重要なのです。

――Lenovo GroupによるIBMのPC事業の買収は、2通りの見方ができると思います。1つは、オフショアリングの進行で、シリコンバレーもとうとうデトロイトと同じ道を歩むことになるかもしれないという考え方です。

マクニーリー氏 IBMのPC事業で行われていた研究開発はどんなものだったのでしょうか? 彼らが取り組んでいたのはソフトウェアでも、ディスクドライブでも、電力供給でも、シートメタルでもありませんでした――私が最後に見たときには、IBMにスチールプラントはありませんでした。プラスチックの型打ちも、マザーボードの製造も自分でやっていませんでした。これらはすべてIntel製でした――マイクロプロセッサも(IBMの)自前のものではなかったのです。彼らがやっていたのは、幾らかの受注と最終的な物流だけだったのです。IntelでもMicrosoftでもない会社にとって、それが現在のPC事業なのです。

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