第4回:間隙を突いたWeb型グループウェア連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?(2/4 ページ)

» 2005年01月18日 01時26分 公開
[吉川幸比古,ITmedia]

Web型グループウェアの革新性

 サイボウズが初期に実装した4つの機能のうち3つまでがその当時の代表的なグループウェアであるNotesが苦手とする機能だったのは注目に値する。Notesはそもそも文書共有を目的として開発されたツールだったために、スケジュール管理やその表示機能は、あまり洗練されたものではなかった。さらには、分散型アーキテクチャーを採用しているために同僚の「スケジュール」や「行き先案内」を簡単に一覧照会することは苦手だったのだ。

 特にスケジュールの照会画面については、サイボウズは非常に特徴的なインタフェースを実装した。本物の手帳に似せたその直感的で使いやすい画面はその後のスケジュール管理の標準的レイアウトやインタフェースとなった。それは、ほかのWeb型グループウェアベンダーがそのインタフェースを模倣したということで訴訟に発展するほどに先進的なものだった。Webアプリケーションの初期の時代に、サイボウズのイノベーションは業界に大きなインパクトをもたらし、ホームページだけでなく、業務アプリケーションについてもWebブラウザ上の表現方法やデザイン、ユーザビリティーを開発者側が意識するようになったという。

 さらにNotesのような複数サーバ間でレプリケーションを行うアーキテクチャーでは、「スケジュール管理」「施設予約」、あるいは伝票処理などにおける「自動採番」といった排他的処理が必要となる同期性の高いアプリケーションは苦手だった。これに対して、Web型グループウェアはもともとがサーバ集中処理であるため、制約が少なく、こういった処理も比較的簡単に実現できたのがWeb型グループウェアがターゲットとした小規模ユーザーには支持された。

 初めのうちはNotesに対して機能的に劣るとされていたWeb型グループウェアも多くのユーザーからの改善要望に耳を傾けたバージョンアップによって、最近では機能的にもかなり充実したものとなってきている。前述したようにこのマーケットには多くのベンダーが参入したため、ベンダーは過当ともいえる競争にさらされている。これが各ベンダーの積極的な機能アップを後押しする背景となっているのだ。逆にIBMはこの間、Notes/Dominoのバージョンアップを信頼性の向上とサーバ集約によるTCO削減にかなりの資源を投入したようで、単に機能的な差は縮小傾向にある。

 例えば、スケジュール予約の画面であるが、クライアントモジュールを持つ製品ではスケジュールの幅をドラッグによって広げたり縮めたりして登録をすること可能だった。こういった処理をWebブラウザで実装することは技術的に難しく、そのためにWeb型グループウェアを「使いづらい」と評する人も多かった。しかし、最近ではこの操作支援部分にJavaScriptなどの技術を使い、さながらクライアントソフト並みにリッチな操作ができるようにバージョンアップしたベンダーも出てきている。

 さらにNotes/Dominoを情報系アプリケーションの構築基盤とするIBMのアプローチに対しても、最近では多くのWeb型グループウェアがワークフロー機能を実装し始め、中にはこのワークフロー機能を実際に使って勤怠管理や経費清算といった簡単な業務系アプリケーションテンプレートを作成して製品と一緒に提供しているものも登場している。

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