新たな革新へ向けてNotes/Dominoの原点に立ち返るIBM Lotus(1/2 ページ)

Lotusphere 2005でIBMのゴヤールGMは、Notes/Dominoの顧客が抱いている不安の払拭に努めた。オープンな標準による統合がEclipseベースのリッチクライアント環境で可能になるからだ。

» 2005年01月26日 15時09分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「2車線のハイウェーを用意すると言ったが、その行き先は同じだ」──米国時間1月24日、フロリダ州オーランドで開幕したLotusphere 2005でIBMのアンブッシュ・ゴヤール氏は、Notes/Dominoの将来に不安を抱く顧客らにこう話し、その払拭に努めた。

 2003年1月、IBMソフトウェアグループLotus部門(当時)のGMを前任者から引き継いだばかりのゴヤール氏は、その月のLotusphereカンファレンスで「Next Gen Mail」を披露し、「Lotusの技術をJ2EEのオープンな標準ベースで提供していく」と宣言した。前年のLotusphere 2002では前任者のアル・ゾラー氏がJ2EEによるコンポーネント化をぶち上げていたが、ゴヤール氏も「Next Gen」環境を予定よりも前倒しで提供していくとし、この計画を推進することを約束した。

 Next Gen Mailは、WebSphere Application Server上でコンポーネントを走らせ、メッセージはDB2に格納するもので、Tivoliのシングルサインオン機能も利用する。優れたスケーラビリティーを提供するとともに、ミドルウェア4ブランド(当時)のインテグレーションを推進するIBMソフトウェアグループにとっては「ショーケース」となるものだった。

 文字通り「新しい世代」を切り開くと期待されたNext Genだったが、Notesを信奉する既存の顧客やデベロッパーらは少なからず動揺した。そればかりかNotes/Dominoの牙城を切り崩したいMicrosoftらに付け入る隙を与え、彼らが展開する移行キャンペーンによって顧客らをさらに戸惑わせてしまったのだ。

 IBMはNotes/Dominoの継続的なサポートを強調したが、メディアの関心も「いつになったらNotes/Dominoと同機能のJ2EEコンポーネント版が登場するのか?」に向かう。そのせいもあってか、昨年のLotusphereでオープンソースの開発環境として人気が出始めたEclipseベースの新しいリッチクライアント環境「IBM Workplace Client Technology」を披露したが、不透明感は一層増したという。「2車線のハイウェー」という比喩(ゆ)は「いつでも乗り換えられるが、いつかは乗り換えなければならない」という悲観的な捉え方しかされなかった。

フルJ2EE化のメリットは?

 しかし、IBM Workplace Client Technologyの全貌とそれへの対応を図るNotes/Dominoのロードマップを見ると、新たな疑問も沸いてくる。

 ご存じのとおり、IBM Workplace Client Technologyは、Eclipseをベースとしており、プラグインされたモジュール間の連携は得意だ。かつてのNext Gen Mail(現在のLotus Workplace Messaging)も、WebSphere Portalによってポートレット化されてIBM Workplace Client Technology上のWebブラウザで動作する。一方のNotesクライアントも今回発表された7.0でEclipse向けのプラグインが用意されれば、立場はそれほど変わらない。さらに8.0でNotesクライアントはJava化とモジュール化が進むという。こうなると、オープンな標準による統合を旗印に掲げたNext Gen構想だが、当時は「Now Gen」と呼ばれたNotes/Dominoこそ、今すぐにでもIBM Workplace Client Technologyの新しいリッチクライアント環境に対応できるファーストクラスメンバーではないのだろうか。

 このことはDominoサーバにも当てはまる。Domino 7.0ではWebサービスをサポートし、そのアプリケーションを標準的なインタフェースでエクスポーズできるほか、IBM Workplace Client Technologyによってクライアントにもオープンな標準による統合機能が備わった今、熟成が進み、性能も飛躍的に改善されているDominoサーバをわざわざJ2EEコンポーネント化するメリットはどれほどあるのだろうか。

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