「電話」を突破口にコスト削減と業務改善に挑むオフィスIP化は安全なシステム投資?(1/2 ページ)

オフィスのIP化は電話の置き換え、コスト削減を超え、業務プロセス向上の手段としても注目が集まる。

» 2005年01月31日 20時58分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 あらゆる企業に導入されているインフラといえば電話だ。NTTを中心にして、1980年代には、新電々各社が通話料の安さを武器に市場に参入したが、現在では、各社の価格差はほとんどなくなっている。ソフトバンクによる日本テレコム買収なども引き金になり、NTTですら基本料金の引き下げに踏み切らざるを得ない状況だ。従来、企業の電話への取り組み方はコスト削減のアプローチがほとんどだったが、もはや回線コストの削減だけでは大きな効果は望めなくなってきている。

 一方で、「電話」をコスト削減だけでなく、従業員の働き方や情報システムの改善、オフィス改革、顧客対応やサービスの質の向上など、業務プロセスの最適化を目指すための突破口にしようという動きが出てきている。キーワードはIP(Internet Protocol)化だ。IP化により、電話をインターネットと同じプラットフォームに載せることができるため、さまざまな可能性が拓けてくる。

IP環境の導入で、ビデオ会議を本格的に活用できる。(画像提供:シスコシステムズ)

 以前に、東京ガスの100%子会社であるティージー情報ネットワークや、グローバルナレッジのオフィス改革事例を紹介した。一方、企業における電話のIP化を手がける側であるシスコシステムズは1月27日に、音声、ビデオ会議機能などのシームレスな統合を可能にする製品「Cisco Meeting Place 5.3」を発表した。同社は、こうした機能を「リッチメディアコミュニケーション」として、企業向けソリューションとして展開していく考えだ。

企業の問題をどう解決する?

 電話をIP化することで、具体的には何ができるようになるか。1つには、電話と情報システムとの連携が挙げられる。たとえば、IP化することにより、着信履歴をはじめとしたさまざまな情報を蓄積、表示できることにより、電話番号をキーにして、顧客データベースを検索することも容易だ。瞬時に発信者の情報を把握し、表示するコールセンター機能も難なく作り込むことができる。ただし、これは、従来もCTIの導入により実現している企業は多い。

 コミュニケーションインフラのIP化のメリットはもっと先にある。たとえば、社内コミュニケーションの変化だ。シスコシステムズのプロダクトマネジャー、渡邊靖博氏は、「リッチメディアコミュニケーションにより、社員はノートPC1台であらゆる仕事ができるようになる」と話す。電話のIP化、ノートPCとヘッドセットの組み合わせが導くワークスタイルが、導入企業によっては革命的なものになる可能性がある。

 たとえば、IP電話や、ノートPCからソフトウェアとして電話を利用するソフトフォン、電話会議、ビデオ会議、ボイスメール、電子メール、ポータル、インスタントメッセージ、データ共有など、IPという共通のプラットフォーム上で、さまざまな形のコミュニケーションを統合して利用することによって、多方面のメリット得ることが可能になる。

コスト削減の追求

 コミュニケーションのIP化で得られる効果を、まずコスト削減から考えてみる。

 第一に、通話料の削減だ。IP環境における通話は、基本的にはインターネットのブラウジングと同じ考え方であるため、海外を含め、社外から社内にかける通話にはインターネット接続以外のコストはかからなくなる。一方で、取引先など社外の一般電話に発信する場合も、IP電話が規定する安い通話料を適用できる。また、企業のプライベートネットワークを活用すれば、さらなるコスト削減を図れるだけでなく、ビデオ会議などでやり取りする機密情報に関してもセキュリティーを強化できる。

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