もう1つは、IP化を全社的に進め、オフィス改革まで行った場合のコスト効果だ。ティージー情報ネットワークは、通信手段をIP化し、メール、FAX、音声などのメッセージングを統合することで、ノートPCがあればどこでも同じように働ける環境を整備した。さらに、1人に1台の机を割り当てることをやめ、席を固定しないフリーアドレス制のオフィスを整備した。社員は、社内の空いている席に座り、それぞれノートPCを利用して作業を行う。固定座席をなくしたことにより、1人あたりのオフィス占有面積が縮小、それに伴って削減できたのがオフィス賃料だった。
IP環境整備の投資金額を、「1年分の賃料の節減分だけでまかなえる」(同社担当者)というほど合理的だ。ちなみに、同社では、従来は330名いた新宿オフィスに、フリーアドレス制導入により450名を収容できることが判明。これを踏まえて、新宿の第2ビルと幕張オフィスの統合へと踏み切った。全体として、フロア面積を36%、賃料は30%の削減を達成した。
コスト削減はもちろんだが、IP化の第一の目的は、従業員の働く環境の改善による業務効率の改善と言える。たとえば、CiscoのMeetingPlaceがドラスティックに改善するのは、Webカメラやブラウザ、インターネットメッセージングを活用して、場所にとらわれずに、複数の人が参加できるビデオ会議の実施環境だ。
MeetingPlaceの特徴は、音声、ビデオ、ビデオ会議機能が、デスクトップアプリケーションと緊密に統合されていること。ユーザーは、電子メールやカレンダーから会議の招集通知を自動的に受け取り、IP電話、インスタントメッセージクライアント、Webブラウザ、Microsoft Outolook、Lotus Notesのカレンダーなどから、ワンクリックでビデオ会議に参加することができる。従来のビデオ会議よりも、準備の手間を大幅に省くことができるわけだ。
このように、電話を含めた社内インフラのIP化に成功すると、コスト削減と業務効率の向上という2つの効果を得ることができる。
では、企業が導入する上でのポイントは何か。それは、社長やCIOのトップダウンによる一括導入の一言に尽きる。既存の電話インフラとの併用ではコストという意味では逆効果になる可能性があり、また、部門間でビデオ会議に対応していたり、していなかったりという状況では、ノートPC1台で仕事ができるというコンセンサスを社員が確信できず、結局は使わなくなり、システム投資の失敗事例になり下がる可能性すらあるからだ。
シスコによれば、導入の成功に向けて突っ張る1人のリーダーが、企業内の各部門からサポートしてくれる社員を導入プロジェクトに引き込み、強力に社員を引っ張るような体制を築ければ、その時点で成功が半ば約束されると言っても過言ではないようだ。
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