「中傷ではなく、真実を」マイクロソフトはLinuxを駆逐するか

「Get The Fact」などのキャンペーンで客観的な判断を呼びかけてきたマイクロソフト。本社からビル・ヒフ氏を招き、イデオロギーの違いではなく、データに基づいた客観的な判断をユーザーに求めた。

» 2005年02月09日 19時33分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 マイクロソフトは2月9日、都内でプレスセミナーを開催した。本社からプラットフォーム戦略主幹プログラムマネージャーのビル・ヒフ氏が来日、「イデオロギーの違いで判断するのではなく、データに基づいた客観的な判断をしてほしい」とマイクロソフトのLinuxおよびオープンソース関連テクノロジーに関する取り組みを語った。

ヒフ氏 前職はIBMでLinuxテクニカル戦略を展開していたヒフ氏

 同氏は現在のLinuxディストリビューション全般に該当することとして、コミュニティーを基盤に持つが故に、バグに対する責任能力が低いことを指摘する。「Linuxディストリビューターはソフトウェアを開発しているのではない。サポートを提供しているのだ。しかし、(コミュニティーを基盤としているため)開発者が興味を持たないため認識されていながら改善されていないバグも存在しているのも事実。中には8年もそのままで残っているものすら存在する」と話す。

 通常、Linuxディストリビューターがディストリビューションを提供する際は、ある時点でのパッケージ群をスナップショット的にまとめたものを提供している。しかし、バージョンアップが頻繁に行われるオープンソースソフトウェアは、Linuxディストリビューションがリリースされるころにはバージョンが上がっていることも珍しくない。これはLinuxカーネルについても同様だ。

 このため、ユーザーが最新のパッケージで提供されている新機能をいち早く使いたいと願うなら、場合によってはディストリビューターのサポートを犠牲にしなければならなくなることもある。つまり、自分たちでサポートしなければばらない部分が生じてくるわけだ。「これではオープンソースソフトウェアのメリットを最大限に享受できているとは言えないのでは?」とヒフ氏は話す。

「顧客に問いたいのは、『あなたのビジネスは何ですか?』ということ。OSのメンテナンスにリソースを割くことではないはずです。柔軟だが人件費がかかってしまうリスクも理解すべき」(ヒフ氏)

 次に同氏は、セキュリティ問題の対応に要した日数や、全体としての対応率などをデータとして示した。このデータは、Forresterが2004年3月に発表したレポートからのもの。このデータでは、マイクロソフトが平均25日でパッチをリリースしており、Linux勢の中では対応が早いRed HatやDebianの平均57日を大きく上回っている。

 加えて、客観的なデータを集計した結果として、Linuxカーネル2.6のリリースからこれまでに加えられた変更は、1時間あたり2.4個にもなるという。また、Red Hat Enterprise Linux 3(RHEL3)のセキュリティパッチの月次発行数をRed HatのWebサイトに掲載された情報からカウントし、Windows Server 2003のほうが脆弱性もセキュリティパッチの発行も少ないというデータを掲示、「これほど頻繁に変更が加えられているものが果たして安定していると言えるのだろうか」と指摘する。

 これらのデータから、本当に問題にすべきは、カーネルを超えたプラットフォームレベルでの安定性を保証しているかどうかであると同氏は話す。マイクロソフトは、数千台にもおよぶプリンタとの互換性の検証や、5年前のUSBデバイスの動作検証などに見られるように、オープンソースコミュニティーの開発者があまり目を向けない部分にもしっかりとリソースを割いており、顧客の問題を確実に解決していくという点でアプローチが異なると強調した。

「(Linuxを)中傷したいのではない。真実を知ってほしいのです」(ヒフ氏)

 なお、ITmediaではプレスセミナー終了後、ヒフ氏にインタビューを行った。OSSでよく言われる「ゆるやかな統治」をどのように考えるか、また、知的財産権に関連したライセンスの問題点など、より具体的な内容を紹介する予定だ。

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