10年後に向けマルチコアの先“Many Core”へと向かうIntel(1/3 ページ)

今回のIDF Springで、これからリリースする数多くのデュアルコアプロセッサについて説明したIntelだが、2015年にはマルチコアを超えて、“メニーコア”を目指すという。

» 2005年03月04日 22時03分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 最初のデュアルコアプロセッサのリリースが近いIntelだが、10年後のビジョンでは多数のコアを1つのプロセッサに統合したメニーコアへと向かう。Intelのシニアフェローのジャスティン・ラトナー氏が、Intel Developers Forumの基調講演で明らかにした。

Intelの2015年

 ラトナー氏は「プロセッサの開発は通常、4〜5年のサイクルで行う。このため、次のビジョンを示し、リーダシップを取って業界をリードするには、10年後のビジョンを示さなければならないだろう。10年後の未来、2015年のコンピューティングビジョンを考えてみよう」と話し始めた。

Intelのシニアフェロー、ラトナー氏 10年後のビジョンを語るIntelのシニアフェロー、ラトナー氏

 ラトナー氏が次世代のコンピュータで最も進化可能と考えている部分は、ユーザーインタフェースにあると考えているようだ。自動化、データマイニング、適応型アルゴリズムへの対応などで、それらが可能になる。

 「音声認識やビジュアル化技術などを使いこなし、誰もが簡単にコンピュータを使いこなす。また人間は間違いを犯しやすいものだ。ユーザーの行動が正しいかどうかを常に推測しながら動く事も大切。たとえば自然な言語で話しかけると、意に沿うような動作をしてくれるといった機能も考えられる」とラトナー氏。

 このほか、仮定の中にある照明、エアコンや庭のスプリンクラー、警備システムなどをグラフィカルなユーザーインターフェイスにより統合的にコントロール、あるいはセンサーを組み合わせた自動的な管理を行う。ヘルスケアの面では、体調管理や老人がきちんと薬を飲んだかどうかなどをセンサーで管理し、本人に注意を促したり医者に異常を通知するといった使われ方もするだろう。

 ある旅行での夕陽の写真、あるいは誰かと一緒に撮影した写真などを見ようと思ったとき、大量のデジタル写真の中からデータマイニングで写真を探し当ててくれるなど、よりユーザフレンドリーなデータベースの使い方が一般的になっているかもしれない。

 また、非常にリアルなバーチャルリアリティーの世界を構築することが可能になり、オンラインの中で人が生活するようなリアリティーをコンピュータ世界に作り出したり、同様の技術を用い、持っている服のコーディネートを実際に着ることなく目の前のスクリーンに、鏡に映すように自分の姿を表示させたり。

 ビジネスの世界では、さまざまな事象をモデリング、あらゆる可能性をシミュレートし、結果の予測を行ってから意思決定を下せるようになるだろう。もし、このタイミングで投資を行ったら、どのような結果になるのか? 現在の体調で、ある薬とある薬を組み合わせて飲むと、どのような反応が体の中で起こるのか。少し先を予測するための手助けをコンピュータが行えるようになるだろう。

コンピューティングの可能性と限界

 これらのビジョンは、Intelが以前から将来のビジョンとして示してきたものだ。しかし、解決策が今すぐにあったわけではない。しかし10年後、Intelはそれらのアプリケーションを現実のものにするため、自らの提供するPCプラットフォームを前進させる。

 直近の話題で言えば、それは「Zephirosプラットフォーム」やそこに使われている「Yonah」、以前よりも進化したコンセプトモバイル端末のモバイルコミュニケータ(Intelが以前に基調講演で披露した、あらゆるワイヤレスネットワークとの接続性を持つ高機能スマートフォン)などがある。Zephirosとは聞き慣れない名前だが、これは昨日明らかになったMac miniライクなコンセプトPC全体のプロジェクト名、あるいはコンセプト名のようだ。

 いずれにせよ、クロック周波数こそがすべてだったIntelが、省電力かつハイパフォーマンスという方向に目を向けたことで、Zephirosや高機能携帯電話での可能性もPCと同様に語られるようになった。

低解像度の画像を高解像度に 低解像度の画像(左)から、高解像度の画像(右)を生成する技術のデモ

 ラトナー氏は一例として、携帯電話で撮影した低解像度の動画から、高解像の映像を作り出す技術を紹介している。これは複数フレームに含まれる情報を分析し、より多くのディテールを再現する技術だ。現在は1フレームの処理に1分程度の時間がかかっているが、処理能力が1000倍になれば、美しい解像度補完をリアルタイムで行えるようになり、SD素材でもHD映像のように映し出す事ができる。

 また、映画で使われているような最新の3Dグラフィック製作も、レンダリングの高速化やモデリングツールの進化でカバーできると話した。たとえば、フォトレタッチツールはかつてプロフェッショナル向けのツールだったが、現在では家庭でも普通に使われるようになった。

 ただし、コンピューティングの可能性はあっても、今のまま高速化されるだけで、果たしてそれらが実現できるのか? アーキテクチャーは変化する必要があるのではないか?

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ