CeBITでグリッド構想を掲げるSun

ベンダー各社は真のユーティリティコンピューティングを提供できなかったが、SunはITコストを10から1に減らすことで、顧客を説得する上で有利になるというのがSun幹部の主張だ。(IDG)

» 2005年03月11日 19時20分 公開
[IDG Japan]
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 ベンダー各社は顧客にグリッドを説明する段階でつまづいている。米Sun Microsystemsの上級幹部は3月10日、自社のグリッド構想のプレゼンを開始する直前にこう語った。

 しかしSunの戦略開発・財務担当執行副社長ロバート・ヤングジョンズ氏は、同社のグリッドに関する見解は、一部のグリッド支持企業が提供する特定用途のホステッドサービスではなく、真のユーティリティコンピューティングに関連しているという点で独特だと主張する。

 「ここ数年間、どのベンダーが表明したユーティリティコンピューティングも実のところ失敗している。このため当社は新たな方向から着手している」とヤングジョンズ氏は独ハノーバーで開かれたCeBITでのプレゼンの中で語った。

 ベンダー各社が真のユーティリティコンピューティングを提供できなかった理由は、IT環境が非常に複雑でカスタマイズされていることからデータが特定のアプリケーションと結びつけられており、顧客に全く新しいモデルを売り込むのが難しかったからだと同氏は指摘した。

 同氏はコンピューティングリソースを電気に例え、Sunのモデルは「生のユーティリティ(公共設備)に対する業界の縮図」だと語った。

 グリッドコンピューティングは、現行のITインフラから劇的な方向転換を図っている。グリッドモデルでは、コンピューティング、デスクトップ機能、その他のアプリケーションが、ネットワーク化されたコンピュータ網で構成された巨大なデータセンターからのユーティリティリソースとして利用される。しかしヤングジョンズ氏は、SunにはITコストを10から1に減らすことにより、コンピュータ機器を入れ替えるよう顧客を説得することに関してアドバンテージがあると主張した。

 ヤングジョンズ氏によると、同社のモデルの価格体系は、1時間当たりCPU 1個に付き数ドル、あるいは1カ月当たり1Gバイトにつき数ドルとなる。同社の最大のグリッドは、現在3000個のCPUで構成されているが、2〜3年のうちにCPU 5万〜10万個のグリッドに拡大する可能性をヤングジョンズ氏は見込んでいる。

 Sunは既に、スコットランドにそれだけのキャパシティを備えたグリッドセンターを構築する財務計画を草案しているという。

 同社のグリッド構想を機能させる上では、共有(ライセンス)規定を持つSolaris 10がカギになると同氏。

 「CPUが3000個以上になると、Linuxでスケーリングの問題が起きることに気づいた」と同氏は語り、LinuxからSolarisへと勢いが戻っていると思うと付け加えた。

 「Solaris向けのオープンソースライセンスを提供することで、この最後の感情的な障壁をクリアした」(同氏)

 このライセンスは、Sunがユーティリティコンピューティング・ストレージ製品を投入する直前に発表された。ヤングジョンズ氏は取材の中で、グリッド開発者、デスクトップ向け製品、アプリケーション、パートナーによる製品は2〜3カ月のうちに登場すると語った。

 ユーティリティコンピューティングの技術は用意できているが、マーケティングと補足的な資料の準備が必要だと同氏。デスクトップユーティリティの料金プランはまだ決まっていないが、「1台、1ユーザー、1カ月当たり1ドル」程度になる見通しという。

 Sunはまた、メディアストリーミングと映画制作を基本的なユーティリティとして検討しているとヤングジョンズ氏。

 ドイツは従来、SunのStarOffice、OpenOfficeなど、デスクトップ向けオープンソースソフトの利用に関する議論が盛んだ。そうした状況でSunがCeBITでグリッドについて説明する理由を聞かれたヤングジョンズ氏は、オープンソースの採用は「通常の仕事」と考えていると答えた。

 「グリッドは今流行している」と同氏。そこで同氏はある時点で、Sunのユーティリティコンピューティング構想の下ではグリッドという言葉は望ましくないと思ったという。「グリッドという言葉はあまりに多用され、やがて何の意味も持たなくなった」

 CeBITは3月16日まで開催される。

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