Sunの新しいライセンスは「クローズド・オープンソース」

SunはJavaの新たなライセンス方式を発表したが、簡素化されたライセンスを新たに3種作っただけで完全なオープンソース化とはならず、画期的というには少々物足りない内容だった。

» 2005年03月22日 17時54分 公開
[Chris-Preimesberger,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 Sun Microsystems(本社カリフォルニア州サンタクララ)は、3月16日、Javaコードの完全オープンソース化に一歩近づいた。しかし、誰もが予想していたように、画期的というには少々物足りない内容だった。最終的に明らかになったのは――電話会議でメディアやアナリストに説明したように――Javaライセンスの考え方をわずかに変更し、エンタープライズ・アプリケーションを簡易な手続きで合法的に開発できるようにするという姿勢の証として、簡素化されたライセンスを新たに3種作っただけだったのだ。

 その1つ、学術機関および研究者向けのJRL(Java Research License)は、Java 2 Standard Edition (J2SE) 5.0を改変して実験したい人を対象としており、すでに利用可能だ(現在は5.0だが、6.0になる予定。J2SE 6.0は2006年の出荷予定)。

 あとの2つ、JIUL(Java Internal Use License、「ジュエル」と読む)とJDL(Java Distribution License)は一般向けのJavaライセンスで、現在最終段階にあるという。どちらも、Javaソースコードの使用に関するライセンスだ。これら3つの新ライセンスがあれば、難攻不落のSCSL(Sun Community Source License)はお蔵入りになるだろう。複雑極まるSCSLは、長年にわたってIT管理者と開発者の不満の種だった。

 JRLはすでに発効しており、JIULとJDLは4月末までに準備が完了すると見込まれている。

 SunのJava担当副社長グラハム・ハミルトン氏はSCSLについて次のように説明している。「(SCSLは)完璧なライセンスを目指したもので、あらゆるケースが想定されている。問題は、1つの巨大なライセンスですべてに対応しようとした点にある。大勢の弁護士を雇えばこのライセンスの完成度が分かるはずだが、ほとんどの人は大勢の弁護士を雇って複雑なSCSLを読み解こうとは思わなかった。そのため、あまり採用されなかったのだ」

 同氏によれば、Javaプラットフォームの商用利用のすべてを対象とするライセンスであるJDLも理解するには弁護士が必要だ。しかし、「SCSLよりも遙かに理解しやすい」と言う。JDLにはJava互換性テストが含まれており、他のJava実装との適合性を保証している。

 「J2SEコードはオープンになり、誰でも見たり変更したりできるようになる。だが、当社としては(このプラットフォームの継続的な発展に)人々が貢献してくれることを期待している」

 JIULのライセンスがあればJavaソースコードを無償で変更できる。ただし、その利用は社内に限られる。JIULは自主管理となる予定だ。つまり、JIULにおいても開発されたアプリケーションはSunの標準仕様であるJ2SEとの互換性を維持しなければならない点に変わりはないが、その互換性の維持についてはユーザーを信頼し、Sunが査閲することはないとハミルトン氏は言う。

 「この新しい方式によって、Javaに派生が発生する危険がある」。しかし、その危険性にどう向き合うかはユーザーに任せるとハミルトン氏は言う。

 SunフェローでJavaの創始者であるジェームズ・ゴスリング博士は、電話会議で、オープンソース・ライセンス一般について、短くはあるが言葉を選んで次のように述べた。

 「ほとんどのオープンソース・ラインセンスは本当に複雑で、驚くほどだ。しかも、その数は増えており、どれも難解だ。わたしは結果を見てからものを言う野球評論家のようなものだろうが、複雑と思われるライセンスに伴う問題にSunが足を踏み入れるのを不思議に思う。こうしたオープンソース・ライセンスの中には本当にひどいものがあることを考えてもみてほしい。最初は単純だったのだ。BSDライセンスのようにね。次にストールマンライセンスが出てきて――やがてゴチャゴチャになった。今では、『汚染』条項を持つものさえある。GPLはその代表的存在だ」

 「これらのライセンスは企業に大きな混乱を巻き起こしている。そうした企業からは次のような嘆きの声が聞こえてくる。『(オープンソース・ライセンスは)曖昧すぎる。私にはライセンスの意味が分からない。法廷だって解明できないだろう』。まるで迷路だ。これから何年にもわたって苦悩することになるだろう」

 そして、再度、Sunの立場を説明した。

 「完全なオープンソースにしないのには複雑な理由がある。これまでも、Sunにとっては困難な道だった。我々は(オープンソース)コミュニティやJCPや顧客と協力したいのだ。しかし、その立場は一様ではない。(例えば、企業に)出向いて巨大なエンタープライズ・アプリケーションを説明する人たちの場合、それが本当に仕様通りに動くことを確かめたいだろう。(開発部門で)進行中のことを知りたいし、テストした内容も知りたい。オープンソース・アプリケーションでは、ほとんどの場合、こうしたことを知る術はないのだ」

 「今では、LinuxカーネルとApacheは信頼されているが、それは長年にわたって獲得してきたものであり、例外的存在だ。その他のほとんどのオープンソース・プロジェクトは、そうした信頼をまだ得ていない。『テストしたみたら、うまく動きましたよ』あるいは『ええ、友達が何人かテストしてくれて、うまく動いたと言ってました』。驚異的に巨大かつ複雑なシステムを抱える大企業としては、こういった言葉は聞きたくないのだ」

 同氏はSunのアプローチを「クローズド・オープンソース」と表現する。

 「毎日数十億ドルのトランザクションを処理する企業、例えばAmazonやクレジット会社などでは、ソフトウェアは初めから正しく動作しなければならない。こうした状況下では、小さな問題が極めて大きな問題を引き起こすことがある。だから、テストは極めて重要なのだ」

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