e-文書法に耐えうる「証明力」の高いPDF文書を――アドビとPFUが提携

アドビシステムズとPFUは、4月1日より施行となる「e-文書法」をにらみ、PDF形式の電子文書へのタイムスタンプ(時刻証明)付与に関して協業する。

» 2005年03月22日 23時51分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 アドビシステムズとPFUは3月22日、PDF形式の電子文書へのタイムスタンプ(時刻証明)付与に関して協力することを発表した。背景には、4月1日より施行となる「e-文書法」への対応がある。

 4月1日施行の法律というと個人情報保護法に脚光が集まりがちだが、e-文書法も同じく業務に与える影響は大きい。これまで「紙」の形式で保存、提出する必要のあった財務諸表などの書類だが、電子データの形でも保存が許されるようになるからだ。この結果、紙で保存する場合に比べて管理コストの削減が見込まれるほか、ITシステムとの連携による業務の効率化といったメリットが生まれると期待される。

 しかし電子データには、紙に比べ複製や改ざんが容易だという特徴もある。いつ作成されたのか、改ざんが加えられた可能性はないのかを合理的に説明できなければ、裁判などの場で「言った、言わない」を争う上で、証拠能力を疑われることになりかねない。そこで電子データの「真正性」を確保するために、PKIに基づく電子署名や時刻認証といった技術が生まれてきた。

 電子データにはもう1つ課題がある。中長期にわたる可読性/見読性の確保だ。たとえば、十数年前に普及していたワープロ専用機のデータが取り出せずに困る、というケースが実際に起きている。同じ悩みを繰り返さないよう、今後数十年間に渡って読み出しが確保された形式で保存しなくてはならない。

 アドビとPFUの提携は、こうした課題を踏まえ、電子署名やタイムスタンプといった技術を、事実上の業界標準であるPDF形式の文書の上で容易に利用できるようにすることを目的にしたものだ。

 PFUでは、同社のタイムスタンプサービスと連携してPDF文書にタイムスタンプを付与する無償のプラグインソフトウェア「PFU タイムスタンプ for Adobe Acrobat」をWeb上で提供。これを利用すれば、「Adobe Acrobat 7.0 Standard/Professional 日本語版」上で容易に電子署名とタイムスタンプの付与が行えるようになる。プラグインツール自体は無償だが、タイムスタンプ発行に当たってはライセンス料金が必要だ。価格は、1000スタンプ発行ライセンスパックで1万円からとなっている。

 このときバックエンドでは、PFUのタイムスタンプ局との間で、RFC3161という標準にのっとりインターネット経由で要求/応答処理が行われている。PFUタイムスタンプ局自身の「信頼性」は、セイコーインスツルによる時刻認証と日本認証サービスが発行する証明書によって確保する仕組みだ。

 こうして作成されたタイムスタンプ付きPDF文書は、Adobe AcrobatおよびAdobe Reader 7.0上で検証可能だ。タイムスタンプ情報は文書本体と一体化しており、見た目上も、一目で分かる「印」が付けられる。

タイムスタンプ タイムスタンプを付与したPDF文書には、一目で分かるアイコンが付けられる
検証 PDF文書に改ざんが加えられていないかどうか、また作成時刻はいつで作成者は誰かといった情報をAdobe Acrobat/Reader上で確認できる

 両社はこの組み合わせを、金融、医療や製造業などe-文書法の対象となる業界を中心に、幅広く提案、販売していく。今回は特にe-文書法対応が強調された形だが、米企業改革法(SOX法)などを踏まえたコンプライアンスの観点からも、完全性を確保した形での文書管理/保存に対するニーズは高まるだろうと予測している。

 PFUはこれまでも、スキャナをはじめ、文書の電子化および管理に関する製品群を展開してきたが、それらとの連携も視野に入れ、2005年度はタイムスタンプ関連で10億円、電子文書関連全体では70億円の売り上げを見込む。

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