富士通のPRIMEQUESTは「世界最強のオープンサーバ」となるか?

富士通はメインフレームクラスの信頼性を備えた基幹業務向けIA64サーバシリーズ「PRIMEQUEST」を発表した。独自開発の機能を盛り込み、3年間で1万台の販売を狙う。

» 2005年04月06日 12時35分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 富士通は4月6日、メインフレームクラスの信頼性を備えた基幹業務向けIA64サーバシリーズ「PRIMEQUEST」を発表、2モデルを6月から全世界に向けて出荷開始することを発表した。同社代表取締役社長の黒川博明氏が「(この種のサーバがターゲットとする)大規模なデータベースシステムやオンライントランザクションだけでなく、オープンの名の下に分散してしまったサーバの集約・統合もターゲット市場。オープンサーバの進化形」と自信をのぞかせる同製品は、オープンサーバに対する富士通なりの回答であると言えよう。

PRIMEQUEST PRIMEQUESTをバックに、Red Hatのアレックス・ピンチェフ氏、Intelのアビ・タルウォーカー氏、黒川氏、山中氏、マイクロソフトのマイケル・ローディング氏がそろい踏み

 今回発表された2モデルはCPUの最大搭載数が主な違い。Itanium 2 1.5/1.6GHzを最大16個搭載可能な「PRIMEQUEST 440」と、同CPUを最大32個搭載可能な「同480」が用意されている。

システムと半導体に込められた技術力の結晶

 「オープンサーバの進化形」と黒川氏自らが自信をのぞかせるように、今回のPRIMEQUESTには同社の技術力がシステムと半導体の両面に結集されている。

 まず、システム的には「システムミラー機能」を実装したことが大きな特徴となる。この機能の中核技術となるのが、今回メインフレームで培った技術を生かす形で新開発した「Dual Sync. System Architecture」(DSSA)である。同技術は、システム全体のハードウェア(メモリ、バス、チップセット)を徹底的に2重化し、それらに完全に同期した処理を行わせることで可用性を高めるもの。故障時には故障部位のみ切り離すことで継続動作が可能となる。加えて、CPUとメモリを搭載するシステムボードと、ディスクやPCIカードを搭載するI/Oユニットを業務に合わせて自律的に割り当てる「フレキシブルI/O機能」も備え、障害回復までの時間を大幅に短縮している。なお、パーティション構成については、「PRIMEQUEST 480」で最大8パーティションを切ることができる。話を聞く限りでは、フレキシブルI/O機能はこの物理パーティション内でのみ有効で、パーティションを越えたリソースの配分はできないようだ。

 半導体では、90nm CMOSテクノロジーを採用した独自開発の500万ゲートチップセット5種がCPU制御、メモリ制御などに利用されている(130nmのチップセットも1種搭載)。これにより、チップ間同期型伝送は1秒あたり最大1.3ギガビット(パラレルバス伝送で1秒あたり最大170Gバイト)を実現している。こうした技術は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成を受けて実施している「半導体アプリケーションチッププロジェクトの」成果が利用されているという。

 「2003年1月に開発に着手して、この時期に発表できた。通常この種の開発は3年から4年かかることを考えると、この短期間で提供の運びとなったのは誇りに思うし、16ウェイ構成では他社には負けるわけがないと自負している」と富士通経営執行役サーバシステム事業本部長の山中明氏は喜びを隠さない。

 そのほか、設置面積も0.81平方メートル(32CPU構成時)とかなりの省スペースとなっているほか、消費電力もカタログスペックでは10.7kVA(32CPU構成時)と抑えられており、付加価値の高い製品となっている。すでにトヨタにβ版のシステムも導入、試験稼働しているという。

 いずれも対応OSには、Red Hat Enterprise Linux AS 4、Windows Server 2003、Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9が挙げられているが、このうちSUSE LINUXについては、主に海外市場向けにサポートしたのだという。発表会にはRed Hatとマイクロソフトからそれぞれ出席者があったことからも、強固なサポート体制が敷かれていると考えて間違いない。

 3年間で1万台を販売目標とする同製品は、その7割近くが海外市場をターゲットとしているという。「大規模なシステム案件は少しずつ減ってきている」と黒川氏は話す。そうした市場に対し、メインフレーム並みの信頼性を提供することで、競合製品となるIBMのzSeriesやHPのIntegrity Superdomeを打ち負かしていけるだろうか。なお、価格はPRIMEQUEST 440が2180万円から、同480が4180万円からとなっている。

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