2010年冬季五輪に向けてシステムのIP化と無人化を進めるバンクーバー国際空港Cisco Partner Summit 2005(1/2 ページ)

バンクーバー国際空港は2010年の冬季五輪に向け、Ciscoとカナダの通信事業者TELUSと協力し、急ピッチでIT環境の整備を進めている。

» 2005年04月07日 15時31分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

 Cisco Systemsのパートナーを対象にした同社主催のカンファレンス「Partner Summit」が、4月5〜6日(現地時間)にわたってカナダのバンクーバーで開催されている。年1回開催される同イベントは、パートナー関係者を世界中から集め、同社のメッセージやネットワーク業界の近年のトレンドを伝える情報共有の場である。

パートナー戦略を強化するCisco

 同社にとって、パートナー戦略は大きな成功の鍵だ。なぜなら、同社の製品販売の多くはリセラーと呼ばれる再販業者に依存しており、システムインテグレータ(SI)やソリューションを補完する製品を持つ企業などと戦略上の提携が欠かせない。特に日本市場においては直販ルートが存在せず、販売は100%パートナー経由となる。

 2004年12月に米カリフォルニア州サンノゼ開催されたアナリスト向けのカンファレンス「World Wide Analyst Conference(WWAC)」で米Cisco SystemsのCEOであるジョン・チェンバース氏は、「ビジネスで重要なのはスピードだ。必要に応じて判断してすぐに行動する。買収と提携に関する戦略ではどの会社にも負けない」と述べている(関連記事)

 同社は1990年代に買収を戦略の大きな柱とするようになり、2000年代にはパートナーシップもその範ちゅうに加えるようになった。現在では、アンチウイルスベンダーやネットワーク管理ツールを提供する各社と提携し、NAC(Network Admission Control)という共同セキュリティ戦略を打ち出している。

 これまで、具体的な数値目標を対外的に公表したり、パートナーに対してあまり強いメッセージを用意することのなかった同社だが、その状況も少しずつ変化しつつある。前述の2004年12月のWWACでは、今後5年の成長目標として10〜15%という数値を発表して、業界関係者を驚かせた。

 そして今回、パートナー向けのカンファレンスにプレス関係者用の発表会も設けるなど、パートナー戦略を対外的にもアピールする下地ができつつあるようだ。

最新のIPソリューションが集結するバンクーバー国際空港

 従来Partner Summitの開催地には、ラスベガスやハワイなど、気候が温暖なリゾートが選ばれる傾向があった。だが今回の開催地バンクーバーは、冬のスキーリゾートとして知られるほど寒い場所で、しかもシーズン的にもまだ冬の寒さが残る時期である。なぜ、バンクーバーなのか。その答えの一端はバンクーバー空港にあるようだ。

 Cisco Systemsでは、カナダ第二位の通信事業者であるTELUSと共同でバンクーバー国際空港(YVR)のIPネットワーク刷新事業に取り組んでいる。

 同社では、空港内への1100台のIP電話端末のほか、1000台の監視カメラ、1500台のTVスクリーンの導入を行っている。そのほか空港内へのWi-Fiホットスポットの整備に加え、キオスク端末によるセルフチェックインカウンターや無線による荷物識別システムの導入など、ネットワークのIP化だけでなく、空港利用者の利便性をアップする仕組みも整備している。つまり、バンクーバー空港自体が巨大なIPソリューションの導入事例なのである。

バンクーバー国際空港 バンクーバー国際空港の外観。全体がガラス張りの吹き抜けになっており、空港内を水が流れているなど、透明感あふれる空港だ

 バンクーバー国際空港当局のCIOで「Simplified Passenger Travel(旅行者の通行の簡素化)」部門のバイスプレジデントであるケヴィン・モロイ氏は、IP化によるコストメリットも然ることながら、旅行者が享受できるメリットの大きさを強調する。

 「バンクーバー空港にはカナダと米国の航空会社が就航しているが、キオスク端末経由でどこからでもチェックインできる。現在は空港内とレンタカービル、駐車場、市内および空港近隣の3カ所のホテルに端末を設置しており、長い行列を作らずしてスムーズにゲートを通過できるようになっている。現在、カナダ在住のバンクーバー空港利用者のうち、8割がこのセルフチェックインを活用している」(モロイ氏)

モロイ氏 バンクーバー国際空港当局CIOのケヴィン・モロイ氏

 e-Ticketによるセルフチェックイン方式自体は多くの航空会社が採用しており、あまり珍しいものではない。だが、1つの端末でどの航空会社の便にも対応できるのは大きなメリットだ。

チェックインカウンター CANADA AIRの航空カウンターの様子。奥に有人のカウンターがあるが、それを除けばほとんどがキオスク端末によるセルフチェックインカウンターとなっている
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