米Cisco Sysmtesは先日開催したパートナー向けの年次カンファレンス「Partner Summit 2005」の中で、新たなインセンティブプログラムを明らかにした。
米Cisco Sysmtesは4月4日〜6日の3日間にわたり、カナダのバンクーバーで同社のビジネス・パートナー向けの年次カンファレンス「Partner Summit 2005」を開催した(関連記事)。中日にあたる5日には、同社CEOのジョン・チェンバース氏を中心に、同社ボードメンバーらによるジェネラルセッションが催された。
今後数年のビジネスを乗り切るための、昨今のネットワーク業界の情勢や最新技術・製品などに関する話題を提供し、情報交換を行うのが同カンファレンスの主目的だ。内容的には2004年末に米カリフォルニア州サンタクララで開催されたアナリスト向けカンファレンス「World Wide Analyst Conference(WWAC)」から大きく変わらないものの、それはすべてパートナー向けのメッセージとなっている。
Ciscoのビジネスにとって、パートナーとの関係は切っても切り離せない。ジョン・チェンバース氏によれば、同社の世界での売上の実に88%が、リセラーと呼ばれる再販業者を含むパートナー経由の販売に依存しているからだ。
日本の例でいえば、IBMや富士通、NECなどの業界大手もパートナーの枠に入っており、Ciscoとの関係が深い。同社にとって、パートナーとのよい関係を維持しつつ、ともに売上向上を目指していくことが最大のミッションだ。
同社では、パートナーとの良好な関係を維持し、さらなる発展を目指すために「Opportunity Incentive Program(OIP)」と「Value Incentive Program(VIP)」という2種類の報奨金プログラムを用意している。OIPは新規ユーザー開拓、VIPではアドバンスト・テクノロジ(AT)と呼ばれる分野での販売向上の実現に対して、それぞれリベートが提供される。
同社ではこれら2つの報奨金プログラムに対してさらに「Solution Incentive Program(SIP)」という新しい制度の追加を発表した。SIPとは、Cisco製品とアプリケーションを組み合わせ、再販可能なソリューションを開発したパートナーに対してリベートが支払われるシステムである。
SIPの下で開発されたソリューション・パッケージは、他のパートナーも再販売することが可能だ。SIPにより用途別のソリューション展開が迅速になり、結果としてコスト削減も可能となる。こうした循環を作り出すのがSIPの狙いだ。
5月より、世界に先駆けて日本でSIPの試験プログラムの導入が開始され、8月からは全世界を対象にスタートする見込みとなっている。
そしてSIP導入でパートナーとの関係をより強固にするとともに、Ciscoでは新しい市場開拓も視野に入れている。それが中小企業向け市場(Small-Middle Market)だ。
地域により定義は異なるが、Ciscoでは日本のケースで従業員1000人未満の企業をこのSMBの範ちゅうにあると定義し、こうした企業への売り込みを強化していこうとしている(同社では従業員数1000人以上の企業を「Enterprise」、それ未満の企業を「Commercial」という名称を使って区分けしている)。ここに向けて同社がリリースするのが「Cisco Network Assistant 2.0」「SMB Support Assistant」の2製品だ。
Cisco Network Assistantは最大250ユーザーの企業ネットワークを対象に、ルータ、スイッチ、無線LANなどの機器管理機能を提供するソフトウェアである。新バージョンの2.0での特徴は、サポート可能な機器の種類が増えたほか、Smartports Advisorにより特にファイアウォールなどの機器の基本設定が簡単に行えるようになった点である。4月下旬より無料でダウンロードが可能になっている。
一方のSMB Support Assistantは、単一の管理ポータルを提供することでシステム管理にかかる手間を低減するほか、リモート管理による定期レポートといったサービスも提供される。現時点で8言語に対応していると同社では説明するが、残念ながら日本での提供予定はないとのことだ。
Ciscoにとってのチャレンジは、パートナーとの関係を強化しつつ、同社が常々強調している「Productivity(生産性)」向上実現を、いかにパートナーのビジネスにも広めていくかだ。SIPによるソリューションのパートナー間での共有化は、その端的な例だろう。
もう1つが、SMBへの進出である。SMBはCiscoにとって比較的手薄な領域であり、Microsoftとの提携や中小向け無線LANメーカーの米Airespace買収などに見られるように、いままさに攻勢をかけている分野でもある。SMBでうまく立ち回るには効率性が重視されるため、パートナーに対していかに効率的なソリューションが提供できるかが鍵となる。
米Cisco Systemsのワールドワイドチャネル担当シニアバイスプレジデントのポール・マウントフォード氏は、こうしたパートナーとの関係を「Rattle & Hum」というフレーズに置き換えて説明している。
これは、アイルランド出身のアーティストU2のアルバム「Rattle & Hum(邦題:魂の叫び)」の名称をモチーフにしたものだが、同氏によれば「Rattle」は成長を促し、「Hum」はCiscoとのビジネスをより容易にしていくものだという。
例えば前述のSIPは、この例でいえばRattleということになる。一方でHumは、CTMPと呼ばれるシスコ製品間での乗り換えに対するリベートや、製品導入に際してCisco Capitalからの資金援助など、パートナーが販売施策進めるうえでの一助となるサポート・プログラムである。こうした2つの手段をうまく使い分け、Ciscoは今後数年間で20億ドル規模にもなると予想されるネットワーク市場で、さらなるシェア拡大を狙う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.