ベンチャーキャピタルがIT企業への投資に慎重になっている理由Trend Insight(2/2 ページ)

» 2005年04月25日 16時08分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine
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盛り上がりを作り出す

 オレゴン州ビーバートンにあるOpen Technology Business Centerの事務局長ラボンヌ・ライマー氏は、さまざまなオープンソースビジネスの計画を目にする立場にある。ライマー氏によると、そうしたビジネスプランの中には、最初はオープンソース版のSock Puppet(靴下で作った、中身のない人形)のように見えても、実際に検討してみると中身がしっかりしている、というものがいくつかあった。

 ライマー氏はインタビューに対してこう語った。「私が見た中には、Sock Puppetのように宣伝が派手なだけで実がないように見えるものもいくつかあったが、中身を見てみると、非常にきちんとしたビジネスプランが立てられていた」

 しかし依然として、エンジェルと接触するために「オープンソース」という言葉が使われたり、オープンソースモデルと言えばそれがベンチャーの売りとして見られたりする現状もある、とライマー氏は語っている。

 ライマー氏は、市場、流通/販売、価格、競争、提携などの基本について述べる中で、こう付け加えた。「盛り上がりが自然に生まれないなら自ら作り出せばいいというような風潮も、投資家とベンチャーの両方の側に見られる。『プレゼンのスライドにオープンソースと書きさえすれば、それで資金を獲得できる』というような嘆かわしい意見を目にしたこともある。確かにそうすればVCに接触することはできるかもしれないが、そのような資金供与の決定方法は古いのではないだろうか」

 投資家たちがとにかく自分のポートフォリオの中にオープンソース企業を入れることが必要だと考え、単純に資金をつぎ込むようになると、またバブルが起きる可能性があるとライマー氏は指摘している。

 「そうなると、異常な投資熱が盛り上がるおそれがある」とライマー氏は語っている。

オープンソースは必要だが、最重要ではない

 オープンソースを取り巻く期待と興奮は、技術産業の過去の歴史におけるさまざまな流行と何ら変わりはない――というのがミッチェル・ カーツマン氏の見解である。ミッチェル・カーツマン氏はHummer Winblad Venture Partnersのパートナーであり、Powersoftの設立、さらにはSybaseおよびLiberateの経営に携わったプログラマーでもある。

 彼はメールで次のように語った。「起業家の中には、ビジネスモデルとビジネスプランをしっかり検討し、その中の欠かせない部分として、オープンソースを使用した、独創的で、付加価値があり、他に類がなく、長く利用できる技術的ビジネスを提案する人々もいる。しかしその一方で、『何かオープンソースソフトウェアのビジネスを始めたいんですが、どう思います?』と言って近づいてくる起業家もいる。わたしの考えでは、起業家たるものはまず革新的なビジネス、技術、またはソリューションを頭の中に持っていて、その上でライセンスモデルを決定するべきであり、それ以外の道筋はありえない」

 薄っぺらなビジネスプランをカバーするためにオープンソースが利用されるかもしれないという懸念はあるが、カーツマン氏は、オープンソースでバブルが起きる心配はないと考えている。

 「バブルになるのは、投資家があまりに多くの類似企業に多額の投資をしすぎた場合だけだろう。われわれはそれを回避するための策を考えている」とカーツマン氏は語った。

 カーツマン氏によれば、彼のVC企業がオープンソースベンチャーに接触するときは、ほかのベンチャーのビジネスプランを検討するときと同じ方法を用いているそうだ。

 「われわれは、難しい問題を独自の技術で解決しているチームを探す。さらに、そのビジネスモデルがビジネスを拡大し、利益と価値を生み出すための信頼できる方法論を少なくとも表しているかどうかに注目する。われわれのActiveGridに対する投資のように、そのビジネスプランの中にオープンソースが含まれていれば、それに越したことはない」

 彼はさらにこう述べた。「われわれは、さまざまな形でオープンソースに取り組んでいる企業には非常に興味を持っている。われわれは投資先のプロジェクトを探しているのではなく、企業に投資しようと考えているのだ。したがって、製品だけでなく、チーム、ビジネスプラン、製品をひっくるめて考えることになる」

エンジェルはオープンソースかどうかだけを見ているのではない

 オープンソースベンチャーStunt ComputingのCEOであるライアン・ルーカス氏は、オープンソースとオープンテクノロジーについての会話が非常に少ないことが、関心を集めるための壁になっていると見ている。

 ルーカス氏はNewsForgeにメールで次のように語った。「わたしの経験では、たいていのエンジェルやVCは、オープンソースソフトウェアは開発手法であり、ビジネスモデルではないということを理解している。OSSを使用する革新的で魅力的な――ひいては投資家の注目と興奮を呼ぶ――ビジネスケースも確かに存在する。しかし現在では、プライベート株式投資を求めているベンチャーは、これまでにも増して、安定した高成長のビジネスを構築でき、実際に構築を進めているということを証明しなければならなくなっている。つまり、オープンソースかどうかという点は二の次なのだ」

 オープンソースでは、ドットコム・バブルのときのような危なっかしいビジネスプランが出てくる可能性は少ないだろうとルーカス氏は述べている。オープンソースは実績のある大企業の支援を受けていることが多いからだ。

 「オープンソースを扱っている資金潤沢な有名企業のほとんどは、実際には、実績のある大企業(HP、IBM、Intelなど)か、ユーザーが自分で利用していることも知らないような若い企業(Google、TiVo、Amazonなど)である。『オープンソース』のステッカーを製品とプレスリリースに貼り付ければそれだけで資金が転がり込んでくる、と考えるような企業は思い浮かばない」とルーカス氏は語っている。

 ルーカス氏によれば、オープンソースがどのくらいホットなものかが判明するまでには、しばらく時間がかかるだろうということだ。そのためには、目下進行中のビジネスプラン(Stuntのマルチデバイスソリューションなど)が真価を問われることになる。

 ルーカス氏はこう述べている。「今の段階では、最近のオープンソース投資がどのような成果を収めるかを占うのは時期尚早だ。VCの投資に対する見返りが明らかになるまでには、通常は5年から7年の年月がかかる。目下進行中の投資ラウンドの中から、卓抜したオープンソースベンチャーが生まれる可能性もあるだろう。われわれはその行く末を見守りたいと思う」

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