社員メールの「のぞき見」は賢い戦略である

企業による社員のメールやインスタントメッセージの監視は、会社のリソースを守るための義務といっていい。だが重要なのは、社員にポリシーを周知徹底することだ。(IDG)

» 2005年05月10日 15時52分 公開
[IDG Japan]
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 先日、たまたまどちらも小企業のオーナーという2人の女性の会話に引き込まれた。一方の女性が、夫が時折どのように従業員の電子メールをチェックするかを告げたのだが、彼女の話しぶりは、まるでざんげのようだった――自分の配偶者でビジネスパートナーでもある人が、まるで許されない罪でも犯しているかのような。

 私は2人に対し、経営者はメールを検閲する権利があるだけでなく、時折検閲するのが賢明なのだと伝えた。会社の電子メールシステムを通るメッセージを調べることは、会社のリソースの悪用や知的財産の盗用などの発見に役立つ。さらに、電子メールメッセージの内容は、訴訟の際、証拠として提出される可能性があるので、会社のオーナーや経営陣は、どんなメッセージが会社のシステムを流れているかを知っておくべきだ。このため今日では、会社の規模の大小を問わず、多くの雇用主が従業員のメッセージをチェックしている。

 ハリー・ストーンサイファー氏に話を聞くといい。会社のメールシステムの嘆かわしい悪用が取締役会にばれてBoeingのCEO職を追われた人物だ。愚かにも、社内の不倫相手にあからさまに性的なメッセージを送ったようだ。ストーンサイファー氏は、より「倫理的な」会社を目指す先頭に立つべき人物と見なされていたので、取締役会は全社員に示しをつけるため、同氏を解雇するしかなかった。

 メールの内容はプライベートだと思い込んでいるのは同氏だけではない。多くの社員がこの前提に立っているが、労働問題の専門家によれば、会社のシステムであるメールやインスタントメッセージ、電話、FAXなどを使った通信に関しては、社員にプライバシーの権利はないという。ただし、社員に対し、そうしたリソースの利用についての会社のポリシーを周知徹底することが重要となる。

 あなたの組織にはメールシステムの利用について活字にしたポリシーはあるだろうか。また、そのポリシーとメールの正しい使い方について、適切な社員教育を行っているだろうか。American Management AssociationとePolicy Instituteが2004年に実施した調査によると、回答企業840社のうち79%が、メール利用に関する書面のポリシーを保有していると答えた。だが、メール利用のポリシーについて社員教育を実施している会社は54%にとどまる。

 この調査ではまた、ほとんどの会社が外部とやりとりされるメールの内容を監視していることも判明。だが、社内のメールを監視している会社は27%にすぎない。社内メールの場合、内輪の気安さから不適切な内容が出回る恐れがある。

 ポリシー教育や社内メール監視を行っていない会社は自らを危険にさらす可能性がある。1995年、石油会社のChevron USAは、メールの内容をめぐるセクハラ訴訟で220万ドルの和解金を支払った。女性社員らの申し立てによると、Chevronの子会社は、社内メールシステムを使っての性的に不快なメッセージの送信を許していたという。

 電子メールポリシーについて教育を受け、また日常的に注意喚起されている従業員は、会社を防御する最前線となる。ログオン時の画面にポリシーがパッと現れて目に触れるようにすれば、社員がルールに従う可能性は高まるだろう。さらにいえば、訴訟や犯罪の際、ポリシーへの忠誠と教育を実証できる会社は、法廷で有利な扱いを受けるだろう。

 American Family Insuranceでは、ある社員が会社のPCに児童ポルノ画像を受信していたことが発覚したが、同社はPCのこうした使用を禁止する積極的なポリシーを設定していることを証明できたため、この社員の行為について法的責任を問われずに済んだ。社員が同社のネットワークにアクセスするには、ログオンの過程でポリシーに同意する必要があった。この社員にとっては残念なことに、ポリシーを無視して逮捕されてしまった。

 そういうわけで、会社の規模の大小にかかわらず、雇用主は自社のネットワークに何が流れているのかをのぞき見るのに罪悪感を持つことはない。それは雇用主の権利であり、責務なのだ。問題の可能性に目をつぶっていると、もっと大きな問題が起きるかもしれない。

(By Linda Musthaler, Network World US)

※本稿筆者リンダ・マスタラー氏は、米ヒューストンの技術評価会社Currid & Companyの副社長。

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