LinuxはWindowsの敵である

トム・イエーガー氏は、最近のコラムの中で「WindowsとLinuxは敵ではない」と言い放った。短期的には正しい部分もあるかもしれない。しかし絶対にそうならないというのは言いすぎだぜ、トム。(IDG)

» 2005年05月11日 00時27分 公開
[IDG Japan]
IDG

 トム・イエーガー氏は、最近のコラムの中で「WindowsとLinuxは敵ではない」と言い放った(関連記事参照)。同氏によると、Linuxは単なるOSであるのに対し、WindowsやMac OS Xなどの商用製品はアプリケーション構築の基盤となる包括的なプラットフォームを開発者に提供するものだという。同氏の結論は、Linuxは決して、巨大市場のシェアをめぐって真にWindowsと競争できるようになるまでには至らないというものだ。

 もちろん彼は間違っている。

 まず第一に、LinuxはOSですらない。Linuxは単なるカーネルなのだ。数え切れないほどのライブラリ、ツール、モジュール、アプリケーションと組み合わせたときに初めて使用可能なOSになるのである。確かに標準化という問題はある。しかしこの問題がなおざりにされているわけではない。オープンソースコミュニティーは長年にわたって、何層にも技術を重ねたこのレイヤーケーキの上に、洗練度を高めるための改良を積み重ねてきたのである。

 GNOMEおよびKDEデスクトップなどがその例だ。これらの環境のAPIとツールキットを利用すれば、プロプライエタリプラットフォーム上で利用できるどんなアプリケーションにも対抗できる製品を開発することができる。主要な例としては、KOfficeやOpenOffice.orgスイートなどがある。また舞台裏では、コミュニティーがさらに先進的なコンポーネントの開発を始めている。この取り組みは目立たないため、注意していないと見過ごしてしまうだろう。

 例えば、Linux開発者にとって最もエキサイティングな最近の取り組みの1つが「Mono」だ。これはMicrosoftの.NET開発環境のオープンソースインプリメンテーションである。Monoは、Windows .NETソフトウェアをLinux上で動作させるための技術ではない。WindowsおよびJavaプラットフォーム上で利用可能な今日の技術――仮想マシン、サンドボックス型セキュリティ、ジャストインタイムコンパイラなど――をLinux開発者も利用できるようにするのが目的なのである(Linux専用のソフトウェアを開発する場合も含む)。このプロジェクトが完了すれば、Monoは、これまで低レベルの言語を扱わざるを得なかったプログラマーの苦労を軽減するものとして歓迎されることだろう。Novellのミゲル・デ・イカザ氏(訳注:GNOMEプロジェクトを立ち上げた人物)が言うように、「Cでプログラミングするには人生は短すぎる」のである。

 同様に、「Linuxプログラマーはこれからも、原始的で複雑に入り組んだグラフィックアーキテクチャと格闘することを強いられるのだ」などと決めつけてはならない。標準化された高品質のベクター方式のグラフィックルーティンのライブラリの開発を目指した「Cairo」というプロジェクトは既に、GNOMEやMozilla、OpenOffice.orgなどの開発に携わっている開発者の注目を集めている。CairoはMicrosoftの「Avalon」やAppleの「Core Image」に似ているが、独自技術ではなくSVG(Scalable Vector Graphics)を採用するという点が異なる。

 デスクトップとサーバの両方を対象とした、こういった取り組みの例はもっとある。しかし最も驚嘆すべきことは、OSの下のレベルにある土台も進化を続けている中で、これらの技術が開発されているという事実だ。Linuxカーネルの新バージョンおよび関連するコアコードライブラリは定期的に登場している。GNOMEとKDEの新リリースも同様だ。オープンソースソフトウェアの開発に利用するコンパイラさえも、同じ所にとどまっていない。

 絶えず流動的に見えるこの状況に対する不満が、Linuxは決してWindowsやMac OS Xと競合するプラットフォームを提供できないとするトム・イエーガー氏の主張の根底にあるのではないかと筆者はにらんでいる。しかし彼が忘れてはならないのは、既に成熟期にさしかかっているとはいえ、今日のLinuxは基本的にまだ開発途上にあるということだ。

 DOSから.NETに至る道のりは長く、苦難に満ちたものであり、その過程には何十億ドルものMicrosoftの研究開発資金が投じられた。これに対して、オープンソースのボランティア軍団は、Windowsに対抗できる強力なコンピューティング環境をわずか数年で構築するよう求められているのだ。彼らがまだ作業中だとしても、それを責めることができるだろうか。

 Linuxは、イエーガー氏が今すぐ求めているような重量級の挑戦者ではないかもしれない。その点は認めよう。しかし絶対にそうならないというのは言いすぎだぜ、トム。

(By Neil McAllister, InfoWorld US)

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ