トヨタの成長を支えるITの革新手本はクルマの開発(2/3 ページ)

» 2005年05月17日 21時31分 公開
[谷川 耕一,ITmedia]

課題解決のためにEAを導入する

 トヨタ自動車が直面しているシステムの現在の課題は、システムの基盤技術が多様化しシステム仕様も多様化、複雑化していること。この状況は、今後さらに拡大すると予測される。そのために、かつてのトヨタ自動車では3つのリスクを抱えていた。すなわち、システム仕様の確定が遅れる、開発が進んでからの要件変更や拡大が起こる、その結果としてテスト工数と期間の拡大が起こるというリスクだ。当然の結果として、システムの生産性、品質が低下してしまう。

 生産性、品質の低下は製造業としては許しがたい現象だ。それを回避するために、システム作りの変革に何をすべきか、バラバラに部分最適していてはリスクは回避できない。システムの、全体最適をする必要がある。

 「システム全体を俯瞰して全体最適をすることを考えた。俯瞰というのは、ちょっと上から見てみること。その結果、EAを取り入れることにした。」(加藤氏)

 世間一般には、EAはなかなかうまくいかないというのが今のところの定説だ。トヨタでは、EAをインフラストラクチャのアーキテクチャと捉えることにした。これには、すぐ近くにクルマの開発といういい手本があったのだ。共通のプラットフォームの上にアプリケーションを載せていくのは、まさにクルマの開発に通じるものだ。EAをインフラの標準化と捉えれば、なにも新しいことではなく、従来からの延長線上にあるものとなる。

 加藤氏は、「大事なの監査やレビューを徹底すること。きちんとした標準だけを作っても、使われなければ意味がないのです」とEAを社内に浸透させるためのポイントとしてこのように指摘した。

 実際、EAの導入によりシステムの品質は向上しているという。バグ率の飛躍的な減少は、数字で証明されたとのこと。生産性に関して数字では表せないが、インフラを共通化したことでシステムの集約が起こり、ここでも大きく改善がみられているという。

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