「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」――HP、改めてLinuxを語るInterview(1/2 ページ)

かつて「日本の市場はベンダードリブン」と話したHPのエフレイン氏。2年たってHPのLinux戦略は何が変わったのか? そもそもLinuxビジネスにおいてHPはほかのベンダーと何が違うのか? エフレイン氏に再度聞いた。

» 2005年06月16日 20時12分 公開
[西尾泰三ITmedia]

 6月始めに開催されたLinuxWorldExpo/Tokyo 2005。大手ハードベンダーが出展するなか、Hewlett-Packard(HP)からはオープンソース・ソフトウェア(OSS)とLinuxのマーケテイング部門でディレクターを務めるエフレイン・ロビラ氏が来日、基調講演を行った。

 同氏の講演では、TCOの削減、ビジネスニーズへの対応、ビジネスリスクへの対応といった観点から企業はLinuxというよりはむしろOSSに関心を抱いていることを紹介、Linux「オンリー」ではなく、オープンソースを「プラス」する時代であると話す。

 そうした状況下で、HPの戦略は一貫性があるものだと主張、かつ、過去5年間、サーバおよびストレージでLinuxが重要な分野においてはマーケットリーダーであり続けた実績や、SCO関連の訴訟に対抗するプログラムを併せ持つことなどを強調し、自信を持って製品やソリューションを提供することができると述べた。

 ITmediaでは2年前にインタビューを行った同氏に再び接触し、2年たった今、同社のLinux戦略はどう変化したのかを聞いた。

エフレイン氏 寿司ネタはハマチが大好きなエフレイン氏

ITmedia 2年ほど前のインタビューで、「日本の市場はベンダードリブン」と指摘されましたが(関連記事参照)、その状況に変化はありますか?

エフレイン 現在、市場は間違いなくカスタマードリブンであると言ってよいでしょうね。今までは金融やテレコムといった分野でOSSの採用がありましたが、製造業のミッションクリティカルなシステムがOSSに移行するという例はそれほど見られませんでした。しかし現在、それが見られるようになったのは印象深いです。

 LinuxWorldExpoの講演ではわたしのお気に入りでもあるコンチネンタル航空の事例をお見せしました。現在、航空業界は原油価格の高騰により、(利益を維持するために)コスト削減の圧力がすごいのです。同社は新しいチケット発券システムを、典型的なわれわれの製品・サービス、マネジメントツール、Linux、OSS、業界標準の技術という組み合わせで構築しました。

事例 コンチネンタル航空のビジネスニーズとそれに対するソリューション

ITmedia OSDLなどの動きを見ると、OSSに関して、地域的にはアジアが熱いように思われますが、ベンダーの目から見た場合、今注目している地域はどこですか?

エフレイン 今のところ、一番急成長している地域はアジアです。特に日本においては、OSSの採用率が諸外国と比べても高いと感じています。日本には業界をリードするような企業も多いですが、そうした企業が今後OSSを採用することで、諸外国の競合企業がそれに追従する動きを見せてもおかしくありません。もっとも、OSSの採用はベンダードリブンではなく市場が求めなければ意味がありませんが。

ITmedia HPが掲げる「Linux Reference Architecture」(LRA)はどう進化しましたか?

エフレイン LRAに関しては、昨年はOSSのスタックと商用ソフトウェアのスタックを発表していますが、今年はそれらをハイブリッドにしたものを発表しています。大企業でここまでコミットしている企業はないでしょう。また、HPはパートナーシップのアプローチを取っていますが、こちらも強化しています。例えばJBOSSに関しては、HPでファーストレベル、セカンドレベルのサービスを提供することができるようになりました。

ITmedia Novellも似たようなスタックを発表しましたが(関連記事参照)、あれについてはどう思いますか? また、LRAのスタックを拡大させる予定は?

エフレイン Novellが発表した「Validated Configuration Program」(VCP)については、HPも協力しています。あのスタックでのハードウェアの部分はHPのブレードサーバ「BL20p」です。Novell、Red Hatについては3カ月に一度、どのような分野において協力していくか話し合う機会を設けています。

 LRAの拡大については、大半の市場は現状のスタックでカバーできますので、今のところ拡大の具体的な予定はありません。しかし、今後ニーズがあるのなら新たなOSのコンポーネントを追加します。日本風に言えば「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」ですよ。

 なお、Linux、OSSについては将来的に3つの重要なポイントがあると考えています。スケーラビリティ、ブレード(サーバ)、仮想化技術です。これらすべてに積極的に取り組んでいくつもりです。

ITmedia 一度原点に戻らせてください。OSSにおけるHPがほかのベンダーより優れている点というのはどこなのでしょう?

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