3Dを扱う仕事に最適なユーザーインタフェースとは(1/2 ページ)

3D系の仕事に従事する人が本当に求めているのは高速なサーバではなく、より手になじむインプットデバイスかもしれない。デジハリ大学院のホープが3D系の作業に求められるユーザーインタフェースを語る。

» 2005年06月19日 03時39分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 コンピュータの登場以来、その性能はすばらしい進化を遂げ、企業のITマネージャーも積極的に新しいハードウェアを導入することで業務効率を改善しようとしているが、こと3Dを扱うような現場、CAD/CAM/CAE、インダストリアルデザイン、ゲーム開発、ビジュアライゼーション、フィルム/ビデオ/アニメーションといった分野では、高速なマシンと同じくらい望まれているものがある。デザイナーやオペレータの作業効率を上げるインプットデバイスだ。

 1964年にエンゲルバート博士がマウスを発明して半世紀が過ぎた。その後、解像度の向上、ホイールやオプティカルといった技術が採用されたものの、基本的な形状は変化していない。インプットデバイスとしてのマウスは、進化から取り残されたように、かたくなにその姿を保っている。

 一般的なオフィス用途だけを考えれば、マウスとキーボードがあれば、それで事足りてしまうかもしれない。しかし、例えば3Dを扱う分野では、従来のインプットデバイスに対し、不満もあるのではないだろうか。CADや3D系のソフトウェアで行う作業では、パン、ズーム、ローテーションといったナビゲーション処理は作業の相当な割合を占めるが、3Dを無理矢理に2次元の操作で処理しようとするのは、そもそも無理がある。つまり、ユーザーに不自然な操作を強いているという意味では、マウスは3Dアプリケーションの操作を効率良く操作するインタフェースとしては充分な性能を持っているとはいえない。

 こうしたマウスの弱い部分を補うデバイスとして、モーションコントローラが挙げられる。しかし、従来のモーションコントローラは3Dをイメージどおりに動かすことを可能にしたが、スケッチ作成工程から、パートモデリング、アセンブリ、図面作成など、アプリケーション内の各モードやタスクで使用される多種多様なメニューやコマンドを操作するにはキーボードへと戻る必要があった。

ユーザーインタフェースの極みへ

 マウスやキーボードなど、インプットデバイスのリーディングカンパニーといえば、多くの人がLogitech(日本ではロジクール)を挙げることだろう。同社もモーションコントローラの分野には力を入れている。

 同社は2001年、LogiCad3DとLabtec 3D周辺機器部門を統合、3次元コントロールデバイスビジネスの専門子会社となる3Dconnexionを設立。これまでにCadMan、SpaceTraveler、SpaceBallやSpaceMouseといったモーションコントローラ製品を世に送り出してきた。これらのデバイスは自動車産業などの世界で重宝されてきたが、前述のように改善が望まれる部分もあった。

 そうした声を受け、3Dconnexionが発表したのがSpacePilotだ。同社は同製品をアプリケーションとワークフローに基づくオペレーション、「アプリケーション・ワークフロー・インテリジェンス」を実現するものと位置づけている。

SpacePilot SpacePilot。外観はLogitechの「diNovo Cordless Desktop」に近いものがある

 中央には特許の固まりともいえるコントローラが配置され、オブジェクトの3次元の動きを6軸すべて同時にアプリケーションに伝えることができる。ただ、 エルゴノミクスパームレストを備えたとはいえ、コントローラ部分に関しては、従来の製品と大幅に変わるものではない。

 最大の特徴としては、従来のモーションコントローラで指摘されていたキーボードなどへの移動を極力少なくする仕組みだろう。左側にはEsc、Ctrl、Alt、Shiftの各キーが存在しているほか、上部には6つのカスタマイズ可能なキーが用意されている。

 この6つのキーは、主要な3Dアプリケーション向けには主要アプリケーション向けにはデフォルトのボタン割り当てが定義されおり、Configキーを押すことで、6つのキーに割り当てられたボタン割り当て内容を切り替えることができる。また、アプリケーションを切り替えると、切り替わったアプリケーションに応じた割り当て機能に自動的に切り替わる。もちろんカスタマイズも可能で、ユーザーが任意にボタン割り当て機能を変更・追加できる。必要な作業がコントローラから手を離すことなく使えることで、作業効率を上げているのである。

LCDにはボタンに割り当てられている内容が表示される。この割り当てはアプリケーションが切り替われば自動的に切り替わる(写真は3ds maxのアプリケーション起動時のデフォルト)

 同社のデータでは、この製品を使用することで、デザイン工程時間を約39%短縮、マウス操作や移動を約54%軽減し、生産性の向上と疲労軽減が図れるとしている。日本での価格は12万円前後と、一般的なマウスと比べると非常に高価だが、実際のところ、これは企業ユースを前提とした製品である。例えば、月間200時間稼動の3D業務で30%生産性が向上した場合、年間720時間分の時間コストの削減となる。費用対効果で考えればそれほど高い製品でもないだろう。

 同製品は、6月22日から24日にかけて開催される「設計・製造ソリューション展」で日本でも初披露される。自動車業界のみならず、3D系のソフトウェアを使う企業であればぜひ見ておきたい一品だ。

 ITmediaでは同製品をデジタルハリウッド大学院で若手のホープとして期待のかかる水野宏美さんに試用してもらい、3D系の作業に求められるユーザーインタフェースについて聞いた。

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