Keynote:軌道に乗る「Beyond BI」SAS Forum International Lisbon 2005

SAS Instituteは6月21日から3日間、ポルトガルのリスボンにおいて、ユーザーカンファレンス「SAS Forum Internatonal Lisbon」を開催している。

» 2005年06月23日 21時49分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 分析系ソフトウェアを提供するSAS Instituteは6月21日から3日間、ポルトガルのリスボンにおいて、ユーザーカンファレンス「SAS Forum Internatonal Lisbon」を開催した。40カ国から2000人以上の企業幹部が参加、200以上のプレゼンテーションが行われ、ソフトウェア導入における成功体験などの共有を図る一方、「Beyond BI」を掲げ、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールのさらなる向上を図るSASの取り組みが紹介されている。

 SASのCEO兼共同創設者、ジム・グッドナイト氏は基調講演に登壇し、「変化の激しい時代に成功するか失敗するかは、いかにすばやく情報を知識に変え、知識が決断を助けられるようにするかにかかっている」と切り出した。BIおよびビジネス分析ツールの利用がこうした要件を満たすことを強調している。

技術者出身のCEOらしい余裕のある雰囲気を持つグッドナイト氏。

 未公開企業として最大のソフトウェアベンダーである同社は、「業績下方修正による株価暴落」などのリスクにもさらされないため、リストラのない安定的な会社経営を続けているという。グッドナイト氏は、CEOとして、顧客企業を含めた「ファミリー」をつくる感覚で企業を運営していると言われている。日本からは今回、製薬の三共が参加し、同社の研究開発の分野において、SASのソフトウェアを利用していることを紹介した。

 SASが提供する中心的な製品は、BIプラットフォームの最新版となる「SAS 9」。過去のデータを効率的に閲覧するレポーティング機能をBIと呼ぶ「かつての状況」を打破し、SAS 9を軸にしてさまざまなソースからデータを集め、質の高い分析技術によってビジネスの予測を可能にすることが、同社が「Beyond BI」に込めたアピールポイントとなっている。

 具体的には、さまざまなソースからデータを抽出してくるETL機能、それを保管するストレージ、分析エンジンを併せた一連のBIプロセスを統合的に提供し、さらに、ポータルによるインタフェースを含め、すべての機能全体をEIP(エンタープライズインテリジェンスプラットフォーム)として展開している。

 今回、製品面での動きとしては、「ETL Studio」「Web Reporting Studio」「Forecast Studio」がリリースされた。だが、いずれも、かつてからあった機能をユーザーの利便性の観点からパッケージ化したものという位置づけとなる。

 28年間という同社の分析系エンジンでの長年の実績と、巨額の研究開発費をベースに、データの正確性、可視性をより高い品質で提供することが、同社の基本的な戦略として強調されている。

アジアの成長を語る元欧州中央銀行総裁

 基調講演で進行役を務めた米Accentureのグローバルマネジングパートナー、ポール・カートライト氏は、今日のビジネスのグローバル化による環境変化について、取引の国際化の進展、低コストな技術が普及していきていること、そして、知識や情報資産が新たな役割を担うようになっていることなどを指摘、「成功のためには新たなフレームワークが必要である」と述べる。「Beyond BI」を掲げ、企業に蓄積するデータを予測を含めたより戦略的な用途に活用することを促すSASの戦略とリンクさせる形になった。

 次に、SASには金融業界のユーザー企業が多いこともあってか、メインのゲストスピーカーとして元欧州中央銀行(ECB)総裁のウィム・ドゥインセンバーグ氏が講演した。同氏は、ECBの初代総裁に選出され、1998年から2003年までの任期を終えた。最大の功績は、欧州単一通貨であるユーロのローンチを成功させたことだ。ユーロは欧州で初の包括的通貨として、3億人以上の人々に活用されている。

元欧州中央銀行(ECB)総裁のウィム・ドゥインセンバーグ氏

 同氏は、欧州が通貨統合するべき理由として、米国との経済的な競争などを挙げる。また、「米ドルばかり溜め込んでいる」という中国や日本を含めたアジア諸国との円滑な経済交流にも、ユーロの価値向上が一役を担うと話している。中国については、今後も高い成長を続けると話している。

 「欧州は、米国ほど経済に柔軟性を持っていない現状は認識しておくべきだ」(同氏)

大西洋に面し「西の果て」とも呼ばれるポルトガルのリスボンは大航海時代に繁栄を謳歌した。1755年11月1日の大地震により壊滅状態になり、パリをモデルにした町の整備を行う。それが今日のリスボンの基礎になっている。ゆったりした時の流れの中で、人々がのんびり暮らしていることがわかる。

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